第2話③ 再会…桃代の場合(ちっぱい見られた!)
張り切って土手を歩いていくと、「通ってください!」と、言わんばかりに草が踏み倒されてできた道がある。
作った人には感謝!これなら下も短パンでよかったよ。失敗。
次来るときは短パンに決定やな。
水際に出ると、それはそれはおいしそうなポイントが!
林立した乱杭。
川底にはゴロタがうっすらと確認できる。
水深もそこそこある。
流れのヨレ。
シェード(影)もある。
これ、誰も撃ってなかったらゼッテー出るよね?
記念すべき帰郷してからの第一投目は、手堅いトコロでスピナーベイトをチョイス。
まずは、手前からアプローチ。
足元にいる場合も多いので最初にチェック。
ピッチングでフワリと投げ、極力音を立てずに着水。ゆっくり手前に引いてくる。
しばらく頑張ってみたけど反応なし。
ルアーをクランクベイトに替える。
モードの名作、ワイルドハンチの黒金。最も信頼しているルアーの一つ。
川の真ん中辺りへ軽~くキャスト。
しかし、反応なし。
う~ん。九州とは言え、そう簡単じゃないか。それより向こうの杭エリア。ここで出らんやったら、先行者おったっちゆーことやね。
大きめにバックスイングを取り、杭の向こうまでフルキャスト。
上手く決まった!
と、自己満足中、後ろで人の気配。
釣り人かな?草、深いき、ここまで来てみらんと誰かおるとか分からんもんね。
そんなことを考えつつチラ見した。
え?
もう一度気付かれないように、目は動かさずその人を視界に入れ、意識だけを集中し、確認する。
やっぱし!
正解だった。
そもそも見間違える訳がないもんね。
にしても、思ってもみない展開。心拍数が爆発的に跳ね上がる。
とてもじゃないけど、冷静ではいられなくなってしまっている。
モタモタしよったらルアー流れて杭に引っかかる。いいポイント通せそうやし、ここは我慢。
振り返りたい気持ちをねじ伏せ、巻いてくる。
杭の間を通った瞬間。
鈍い重みでサオ先をひったくられた。
「食った!」
思わず、口に出る。
アワセると同時に反転。反対岸の方に突っ込んでいく。
サオはMH、リールはリョウガ2020、糸はナイロン20ポンド。
タックルのパワーには余裕がある。
ここは強引に出るべき!
リールとサオのパワーに任せ、頭をこっちに向かす。
エラ洗い。
魚の姿があらわになる。
デカい!
さらに巻く。主導権を魚に与えないように。
今度は横に走り抵抗する。重量感がハンパない!
突進を躱し、巻き続ける。
次第に寄ってきて…。
手前まで寄せてフックの掛りを確認。
大丈夫。
前後のフックが上下のアゴにガッチリと掛っているので強引に抜き上げる。
暴れないように押さえつけ、素早くフックを外す。
下あごをしっかり持って、ロッドと並べ記念撮影。
指を広げざっと測定。
二回と半分+α。50㎝は余裕で超えている。
尾びれをグリップエンドに合わせ、サオの模様のどの辺にくるか見て覚える。
帰って測るの楽しみ!
持ち上げてもう一回パチリ。
この時もっかい、後ろにいる人をチラ見。最終確認だ。
間違いない!
感動の再会。しかもウチの勇姿を見せれた。早くしゃべりたい!
でもその前に。
魚を抱え、そっと水に浸けてあげる。
大丈夫かな?
手を離すと、一瞬ふわりと漂った後、ゆっくり深場に消えていった。
「ありがと!バイバイ。」
敬意をこめて手を振る。
手を洗って、できるだけ可愛く(もちろん計画的犯行)振り向き、
「久しぶり!ユキくん。」
その人の名前を口にする。
混乱している大好きな人。
そっか。逆光でウチの顔が見えんのか。
ユキくんが数歩近寄り、
「桃代ちゃん?」
名前を呼んでくれた!でったん嬉しい!
この瞬間をどれだけ待ち望んでいたことか。
改めて顔を見る。少し大人びてはいるものの5年前とあんまし変わってない。目線が同等より少し低い。背はまだ自分の方が高いようだ。
何から話そう?
色々テンパって、話題が見つからない。
思わず「じっと見よったき、惚れた?」的なことを言ってしまう。
もちろん自分の願望100%だ。
すると、図星だったのか、大好きな人は真っ赤になってグダグダに。喋るたび噛んだり声が裏返ったり。視線すらまともに合わせられていない。
このリアクションは!脈ありやったらいいのにな!
大いに期待してしまう。
不器用な感じがたまらなくいい。
お約束の「元気やった?」「そちらこそどうよ?」な、やり取りの後、こっちに帰ってこれたことと、二学期からはこっちの学校に通うことを伝え、釣りの話へ。
ユキくんのタックルに目をやるとワーム。
バックスライド系のノーシンカーやな。
ワームは、前々からやりたいと思っていた。でも、釣り方をおしえてくれる人がいなかったため、操作やアタリの取り方がイマイチ分からない。
すかさず、おしえてくれるようにお願いする。
すると、実践してみせつつ、ワームとフックをくれる。
あ!これ見たことある!
わたされたのはスティックベイト。
これ、ヤマセンコーっちゆーやつやな。
ほとんど初めて手にするワームは意外と重かった。これならオモリ無しで飛ばせそう。
テレビやDVDでフックをセットするシーンはよく見かけるが、自分でやるのは初めてに近い。
受け取って、思い出しながらセットする。
ワームは真っ直ぐにしないと水を受け、回って糸がよれる。
思ったより難しい。
目先のこと「だけ」に集中しまくり、ワームセット中。
真横で釣りしていたユキくんが、不自然にしゃがむ。
ん?もしかして体調悪い?
心配になって顔を見る。でも、多少紅潮はしているものの、気分悪いワケではなさそう。
地べたに座ったが、何故か運動会座り。
無性に気になって、少し強引に理由を聞き出す。…ものの、でったん言いにくそう。
しばらく黙っていたんだけど…申し訳なさそうに、恥ずかしそうに、丁寧におしえてくれました。
「乳がモロ見え」
と。
…え~~~っ?自慢のちっぱいを見られた、だと?
時が止まった…気がした。
理解が追付いていない、というよりも理解したくない。
が、理解してしまい、その瞬間、
チュド~ン!
脳内で爆発音。
一気に顔が熱くなる。
思わず胸を押さえてあっち向いた。
押さえた腕をそっと離し、見てみると。
言い訳のしようがないくらいガッツリと見えていた。
少しは暑いの我慢して、スポブラしてきとけばよかったよ。
とか思ったけど、もはや手遅れだ。
家出るときは、誰かおるとか考えもせんやったもんね。
しょーがない…わけがない。
気を取り直し…てないけど、一縷の望みを託し、どこまで見えたか念のため聞いてみる。
モロ見えとは言ったけど、まさか乳首までは、ねぇ?自分じゃモロ見えやったが、横からは見えてないはず。ユキくんがぎょーらし言いよぉだけっちゃ。
訳:大げさに言ってるだけだ
いいように解釈しようとする自分がいる。
見えてないよね?見えてないっちゆって!お願い!
いくらツルペタとはいえ、うっすら、ホントにうっすら、申し訳程度だが脂肪は付いていて、男の人の胸とは確実に違う。ちゃんと柔らかいし。乳首はもちろん女性のそれ。見られて恥ずかしいのは当然だけど、極端に小さいコトが恥ずかしさに拍車をかける。
で、結果は?
パーフェクト!
両方ともキッチリと。
ツルペタだと内側から布を押し上げられないので隙間空き放題。
5年ぶりに逢った大好きな人に、ラッキースケベをぶちかましてあげた、甘酸っぱくも切ない中二の夏。
でもまぁ、好きな人に見られたっちゆーことで、考え方をポジティブに…できるか!
赤面続行中で、大量に変な汗をかいている。
恥ずかしい気持ちをなんとか誤魔化そうと試みる。が、なかなかどうして空回り、痛々しい展開にしかならない。
ユキくんの目が点になっている。
最終的に観念し、「ちっぱいでごめん」と謝った。
そしたら、「ありがと」っち、お礼言われた。
よかった!身体張った甲斐あったよ!オニのように恥ずかしかったけど。
気を取り直して釣り再開。
っち、全然直せてないけどね。未だドキドキ継続中。
何回かキャストしてみてわかったこと。
サオが軟いと、できなくはないけど操作にダイレクト感がない。
そーだ!ユキくんの貸してもらお!
貸してもらい、投げてみた。
操作性も感度も桁違い。
やっぱ専用の道具はあからさまに違う。←後々ワームザオじゃないこと知りました。
使いやすい!次はこれに決まり。今度、ユキくん誘って釣具屋デート決行しよ!
それはいいとして実釣。
杭エリアのいちばん端。
流れが緩く、よく見ないと分からないが反転流ができている。
あっこに落としてみよ。
チョイ先までキャスト。すぐに巻いて目当てのポイントの真上で止める。
ルアーが自重でゆっくり沈みだす。
中層ぐらいを通過中か?
そんな想像をしながら着底の合図を待っていると、糸の生み出す波が急に早くなる。
…ん?これがアタリか!
一呼吸置いて、力いっぱい後ろに反り返りながら、左腕を引く感じでアワセる。
同時に魚の重みを感じ、突進が始まる。
強い!
杭エリアだから、からまれると厄介。
しかし、サオはH(ヘビー)。リールはジリオンだから相当無理がきく。リョウガがデビューするまでドラグ力はバス用(海でも使える)リールで最強クラスやもんね。
強引に巻き取り障害物から引き離す。
巻かれることは回避できた。
数度の突進やエラ洗いを躱し、寄せてくる。
姿が見える。
これもまたいい魚。
手前まで来たら、サオのパワーに任せて抜き上げる。
40㎝は楽勝で超える良く肥えた魚体。
本日2本目!
今日はいい日だ。
帰郷して初めてのバス釣りでユキくんに逢えた!
大きいのが2本も釣れた。
自慢のちっぱいも見せることができた。っち、これはイレギュラーのハプニング。ちょっとシャレにならんぐらい恥ずかしかったけどね。
そろそろ暗くなってきた。
帰ることにして、道具を片付けて立ち上がると…お股がヒヤッとした。
サーッと血の気が下がる。
さっきの大事件で反応したっちゃん!
猛烈にヌルヌルになっていた。
実は極端に濡れやすかったりするわけで…。ちょっとの刺激ですぐに反応してしまう。しかも汁の量が有り得ないほど多いから漏らしたみたいになる。
座っている間にお尻の割れ目まで垂れてきてしまっていた。パンツどころかジャージまでビショビショ。大洪水だ。
薄暗くて&透けない色でよかったよ。こんなことがバレたら、もぉ立ち直れないでしょ。う~…それにしても気色悪い。はよ帰って風呂入ろう。
土手を並んで歩く。
やっぱ、まだウチの背の方がちょっと高い
そのうち抜かれたりする日が来るんやろか?女の子は背の高い男が好きっちゆー人多いけど…ウチは全然そげなことないかな。
歩いていて思い出す。
そーいや、ユキくんのケータイ!番号も何も知らん。やっぱ聞いとかなきゃでしょ!
「おしえて!」と言ったら、「扱い方が分からんき、やって?」と言われた。
嬉しさのあまり、もぎ取るように奪って操作する。
電話番号とメアドGET!これで、いつでもやり取りできる!本日最大級の収穫かも。
いや~ドラマチックな一日でした。
そして、
ただいま!筑豊!
ただいま!ユキくん!
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