第13話② 夏の釣り(えっちぃ雨宿りのお話)

 ちょうどその頃、菜桜は用事を済ませ帰宅中。

 只今バスの中。


 …そぉいや桃たち釣りしよったな。一個前のバス停で降りて見に行ってみよ。


 あと数分でそのバス停だ。アナウンスがあり、ピンポンを押し、料金表を見てお金を用意した。




 結構距離があり、草も深いので動きにくく、かなり濡れた。

 やっとのことで橋の下に到着。

 しばし雨宿り。

 腰を下ろして駄弁ることにした桃代とユキ。


 何気なく、橋が土手とつながる辺りに目をやる。

 ちょうど後頭部のトコらへん。

 棚みたいになっているところに数冊の本がある。

 引っ張り出してみると…エロ本だ。しかもかなりきわどいタイプの高いヤツ。


 除草作業のオイサンが置いて行ったものかな?


 釣り場にエロ本。まあまあよくあるシチュエーション。


「おっ!いーもんみっけ!。」


 ニヤけながらページを捲る。


「こらっ!なん嬉しそうにしよぉんか!」


 怒られる。


「なんかスゲぇ。」


 目がキラキラ輝いている。

 ページを捲り、桃代と見比べるフリをする。


「あっ!こら!今、何ち言おうとした?」


「いや。別に~。」


 わざとらしく意味ありげにはぐらかす。


「ゼッテー今、本の女の方がデカいっち思ったよね?」


 実際デカい。というか爆乳だ。

 そもそも桃代より小さい女の子は滅多にいない。

 幼馴染の中では一番小さいし、場合によっちゃ多分小学生にすら負ける。


「どーやか?」


 ニヤケると、


「あ~。ひでー。」


 プーッとほほを膨らませ、怒ったフリがとても可愛い。


 一緒にエロ本を見る。

 何気なく桃代の胸に目をやると…。

 通気性のいいダボダボの白いシャツなので、というか今日はタンクトップすら着ちゃいないのでモロ見え。

 雨で透け透けになっていた。

 身体にシャツがくっつくと微かに乳首の色が見えるので、とても目のやり場に困る。

 そして、ムラムラしてくるのはお約束。

 海綿体に血液が流入してきたので膝を抱える。

 すぐに気付かれた。


「ユキく~ん?勃起しちょろ?」


「それがなにか?」


 開き直る。


「エロ本やらマジマジと見るき、そげなことなるって!」


 ご立腹のご様子。

 エロ本を見て勃起したと勘違いしている。


 違うのに。


 もしかして透け透けに気付いてない?


 普通に身体をこっち向けているから、やはり気付いてはないようだ。

 おしえることにする。


「い~ことおしえちゃっか?」


「何?」


「あんね。」


「タンポン?」


「まぁ、そげな感じ。」


「な~ん?」


 わざとらしい膨れっ面。


「えっとね。」


 視線を胸へとずらすと…


「あ~っ!でったん透けちょーし!」


 一気に赤面。腕で隠した。


「知っちょって言わんやったね?」


「うん。結構な乳首っぷりでした。」


「も~!バカ!」


 顔を真っ赤にして、ブーたれたフリしてあっち向く。

 透けて見えないようにシャツを摘まんで隙間を空ける。

 こっち向いてないのをいいことに上から覗く。

 モロ見えだ。

 何回見ても飽きない。ホントに綺麗だと思う。

 気配に気付き振り向くと、


「こぉら!」


 甘ったるい声で怒る。


「いーね!」


 サムズアップ。


「そげ見たいん?」


「うん。」


「も~…しょーがないなぁ。」


 エロ本でテンション上がったのか、赤面しつつ捲り上げて見せてくれた!

 オニのよーに嬉しいサプライズだ。

 そっと触ると、


「んっ…」


 思わず声が出る。

 しかし外はゲリラ豪雨。

 かき消されてしまう。

 エスカレートし…舐める。


「ンあっ!」


 大きな声が出た。

 でったん興奮する。

 髪をかきあげ、キス。

 そこからエスカレート。

 短パンに目が行く。

 そして桃代の顔を見る。

 一旦目を合わせ、フッと俯いたのがOKの合図。


 内股から指を浸入させる。

 既にエライことになっていた。

 溢れ出している。

 身体がピクっと跳ね、切ない声が漏れる。

 穴に指を入れるとズ~ンと鈍い快感。

 どんどん溢れ出す。


 外は大雨。

 声を出しても外には聞こえない。


 二人だけの秘密の時間。

 雨は止まない。

 勢いも衰えない。


 まだまだ続く二人の甘い時間。

 


 だがしかし、調子に乗ったらお約束。

 イレギュラーなイベントが待っていた。


「お前ら…」


 ものすごく聞きなれた声がした。

 菜桜だ。

 ユキは指を入れたまんま。

 桃代は指を入れられたまんま固まった。

 二人しておもいっきし青ざめる。




 菜桜はひとつ前のバス停で降りて釣りに参加するつもりだった。

 バスを降り、歩いていると急に雨が降ってきた。周りには雨宿りする場所なんかない。とりあえず橋の下で雨宿りすることにして、一生懸命走り、土手を下り、橋の下に入ろうと視線を移すと…えっちぃことをしているユキと桃がいた。既に大事な部分に指が入っている体勢だ。声も聞こえる。


 気まずい!どうする?


 橋の下に入るのを躊躇した。

 終わるのを待とうとしたが、絶賛盛上り中でそんな気配が全くない。

 その間にも菜桜はどんどんずぶ濡れになっていく。

 服が張り付いて気色悪い。


 え~くそ!ヤケクソじゃ!


 お楽しみの最中、割って入る暴挙に出た。




「なんか、楽しそうなコトしよるね。」


 悪魔の微笑みだ。


「へ?何のこと?」


 桃代が顔を真っ赤にしてとぼけている。


「いつの間にそげなことまでするごとなちょったん?」


 最悪だ。

 幼馴染でもいちばん知られたくないヤツ。


「いや…何もしちょらんばい。」


 動揺がMax。

 目が泳ぎまくる。

 ウソが下手過ぎる。


「へ~、そーなん?明日、アイツらにゆっちゃろっかね~。」


 ここぞとばかりにいじり倒す。


「やっ!お願いやきゆわんで!」


 最大級の赤面。

 いじられているのは桃代なのだが、ユキもたいがい恥ずかしい。

 まるでセンズ●しているところを親に見られた心境だ。


 雨はまだ止まない。


 追及はまだまだ続く。


「どぉ!桃。マン●出してん。どんだけ濡れちょーか見ちゃーき。」


「もぉ!うるさい!お前も見よって濡れたんやないんか?」


「!」


 菜桜が一瞬固まる。どーやらマジっぽい。

 こいつも汁を大量に製造し、垂れ流す。

 この反応を桃代が見逃すはずがない。

 ジト目で見ながら、


「ウチらがしよーの見て濡れるのもどーかと思うよ?」


 ごもっともなことを言う。

 菜桜は思わぬ反撃に大きなダメージを食らった。

 そもそも幼馴染のえっちぃ行為を至近距離で見てしまって冷静でなんかいられるわけがない。


「うるせー。」


 とりあえず逆切れしてみるものの、それなりにウルッとしてしまっている。

 帰って自分でしたのは秘密だ。


「菜桜~、どっからみよったん?」


 泣きそうな顔で尋ねると、


「ゆっていい?」


 意地悪い笑顔で返す。


「やっぱやめちょく。」


「それはねぇ。」


 わざとここで切る。


「やっぱ言わんでいい!」


 拒絶したのにもかかわらず、


「ユキが」


 止めない。


「もぉ!ゆーな!」


「お前の」


「わ―――っ!」


「乳ねぶりよったとこ。」


「ほとんど全部やねぇか!」


「学校でクリ触られた時もそぉやったけど、お前アヘ声でったん可愛いよね!」


「も~!」


 赤面して涙が浮かんできたので勘弁してやることにした。

 これが菜桜のいじり終わるタイミング。

 もうホント、たいがいに意地が悪い。

 明日、学校に行くのが怖い。




 そして次の日。

 菜桜は面白いことを思いつく。

 桃代以外の幼馴染全員に、


「桃に『橋の下どーやった?』っち聞いてみてん?オモシレーき。」


 と指示をする。

 釣りのことじゃないなと全員確信する。



 昼休み。

 いつものたまり場。

 幼馴染女子+涼と舞が集まった時、


「桃、橋の下どーやった?」


 環が切り出す。

 劇的な変化だった。

 一気に赤面し、


「菜桜!きさん!」


 思わず叫んだ。


「自分、大したことゆっちょらんよ?」


 笑う菜桜。


「ウソゆーな!なら、なんで環が知っちょーんか!」


「ウチ、何も知らんばい?菜桜から聞いてん、っちゆわれたき聞きよぉだけやん。で、何があったん?」


 しまった!ヤバい!これは自分でバラしてしまう展開だぁ!


 気付いた時にはもう遅い。

 模範解答は「橋の下どーやった?」と聞かれた時点で、「釣れたよ」とか、「ダメやった」とかだったのに。

 動揺したら考えがそこまで回らなくなる自分に心底呆れる。


 菜桜の意地悪!そして、自分のバカ!


 追及が始まる。


「ねぇ。橋の下で何があったん?」


 言い寄る環。

 全員興味津々だ。

 目がキラキラしている。


「言わない!」


 黙秘の姿勢を貫くけど、この時点で何があったか8割がたバレている。


「例えば~…」


 エロ関連のことしか聞いてこないはず。


「ユキとヤラシイコトしたとか?」


 ほら!


 何と答える?

 正解を思いつかない。

 最初の段階で選択を誤ったコトが悔やまれる。


「言わない。」


 黙秘。

 全てを察した環。とゆーか、そこにいた全員。


「えっちした?チン●入れたとか。」


 あえて全く違うことを聞いてみる。

 すると、


「いや!そこまでは!」


 またまた正解にまた一歩近づくミラクルな回答をしてしまう。

 この一言でどこまでしていたのかがバレて、生温い空気に包まれる。

 思い当たる節があり過ぎる涼だけは無関心を装い、目を逸らす。

 ほぼ分かっているのに、


「んじゃ、どこまで?」


 あえて聞く。


「いや…何もしてねぇし!」


 否定したものの、


「お前、オモシレーね。ウソゆっても丸わかりやん。」


 ということなのだ。


「もぉ~!」


 発狂し、涙目になる。


「ほら!キリキリと吐く!」


 追及は止まない。


「イヤ!」


 まだ意地を張って言わないので、


「んじゃ~…例えば~…指、入れてもらった、とか?」


 例を出す。


「!!!!!」


 言い当てられてしまい、ドキッとして声も出ない


「うは~!丸わかり。」


 赤面し、うっすら涙が浮かぶ。


「も~っ!ばかっ!お前、もしかしてどっかで見よったんか?」


 全く隠せてない。

 めでたくみんなにバレました。





 次の日は堰での釣り。

 近所に上を水が越えていくタイプの取水堰がある。川の向こうからこっちまでコンクリートのせき止め。イメージ的にはダムの低いヤツ。右岸側には魚道。毎年上流でサケの稚魚を放流していて、戻ってきた時のための魚道だ。せき止めの下流側には魚道部分を除いた全てにテトラとゴロタが沈められ、魚達の格好の休息場兼エサ場となっている。


 夏場の水温が上昇する時期は特に流れを好む傾向がある。

 流れは人間でいうところの扇風機とかクーラーにあたる感じ、とテレビで言っていた。


 今日はココで釣り。

 メンバーはユキ、桃代、涼、海。両岸に別れて釣り始める。

 勿論イチャイチャペアに別れて。


 魚道側は海と涼。

 海はスピニングでジグヘッドワッキー。5インチスリムセンコーを使う。

 魚道から流れてくる水の反転流を狙う。

 涼はベイト。フットボールジグにツインテールグラブの組み合わせ。

 魚道の激流を直に狙う。


 海はピッチングで反転流の中心に投入。リールは巻かず、流れに任せアクションだけ入れて漂わせる。

 先ほどからしばらく流し続けているがアタらない。

 このような場所に着く魚はエサを食いに来ているため勝負が早い。

 アタらない場合、いないコトが多いので場を休ませた方が良い。

 一旦巻き取り、反転流と本流の境目にできた淀みを狙う。直径が1mほどのスポットだ。

 キャストが決まり沈ませる。

 動かしたときには不自然な重さがノッていた。


「食った。」


 アワセると一気に流れに乗って走る。

 ドラグを緩め、サオを立て耐える。

 ドラグ音が鳴り響く。かなり向こうまで走って行った。


 止まったか?


 ドラグを少し締め巻く。

 流れの中で抵抗しているためなかなか手強い。下流に向かって走り出す。

 糸はフロロ5ポンド。あまり無茶できる太さではない。

 海は流れの緩やかなところまで移動し、取り込みに備える。

 まだ魚は反転流の中。一気にリールを巻く。

 スプールが逆転しながらも徐々に寄ってくる。

 そのまま巻き続け、ようやく足元へ。

 しゃがんで口に手を入れキャッチ!


「ふぁ~…痺れた。」


 ホッとする海。


「おぉ~!いーねー。」


 涼は掛けてからのやり取りをずっと見ていた。

 只今スピニングの勉強中なのだ。

 魚は35cm。

 綺麗なオスの魚。

 写真を撮ってリリース。



 涼も頑張る。

 ピッチングで魚道にジグをぶち込む。

 サオを小さくあおりながら流していく。

 繰り返すこと数回。

 コツッ!と明確なアタリ。


「来た!」


 一瞬間を置き鋭くアワセる。

 サオが曲がる。


「よっしゃ!ノッた!」


 やはり流れに乗って逃げようとする。

 MHのサオに16ポンドフロロ。

 無理は相当効くため、タックルのパワーに任せ強引にリールを巻く。

 抵抗する魚。


「うぉ~!バレんな!」


 流れから離すことに成功。

 一気に抜き上げる。

 40cmのアフターの魚。

 既にエサをたくさん食って腹がだいぶ膨らんでいる。

 ハリを外し、涼に持たせ写真を撮る。


「よかったぁ…釣れた。」


 本気で喜ぶ涼。


「僕も嬉しい。」


 海も喜ぶ。

 釣りを始めてまだ3年経ってないのにこの上手さ。

 センスのいい涼を心底うらやましいと思った。




 桃たちはというと。


 場所の規模がそこそこデカいので、二人してテトラに寄りかかって釣っている。

 上流側がユキ、下流側が桃代。


 滝登りしているハヤがたくさんいる。

 桃代は堰の下の溜まりにスピナーベイトを打ち込んでいる。ユキの邪魔にならないように、自分の正面から下流にかけて90度程度の範囲を扇形に引いている。

 キャストして届く範囲に数本の流れがある。

 遠投し、最初の流れを横切るときサオに衝撃。

 絞り込まれる。


「来たよ!」


 と、不意に軽くなる。

 口が切れたみたいだ。


「あ~あバレた。流れの中やき食いが浅かったんかもね。」


 何やらごそごそタックルボックスを漁っている。


「あった。これ着けよ。そしたら確実に掛るはず。」


 スピナーベイトのフックにアシストフックを着けた。

 気を取り直してキャスト。

 大場所で一級ポイントなだけに魚が回ってくるサイクルが短い。

 数分後、再度サオに衝撃。


「食った!」


 さっきバラしたのと同じポイントで来た。

 流れに乗って下流に逃げようとする魚。

 リールを巻いて、流心から強引に引っ張り出す。

 エラ洗いし抵抗する。

 

 デカい!


 水の抵抗がキツイためなかなか寄ってこない。リールを巻いて、強引に引きずり出す。徐々に寄ってきた。水面から顔を出す。アシストフックもメインフックもガッチリ掛っている。手前まで寄せて一気に抜き上げる。

 太くて綺麗なコンディションの良い魚。

 測ってみると48cm!


「でけ~!」


 今日のボーズは免れた。

 写真を撮って、


「ありがと!ばいばい。」


 逃がしてあげた。

 それを見ていたユキも頑張る。

 リグはヘビーダウンショット。リーダーを20cm程とり、シンカーは7g。ワームはZBCのミートヘッド4インチ。

 激流の中にあるゴロタ。それに当ってできる流れの緩やかなスポット。そこにピッチングで直に打ち込み、沈めてシェイク。反応が無いなら流心に打ち込んで渓流釣りの要領で流す。魚に見破られないようこの二つの方法で攻め続ける。

 そして…


 コンッ!


「食った!」


 アワせ、ゴロタなどに絡まれないよう流れに乗せる。一気に下流に走っていく。

 サオを立て、勢いを殺し、こちらを向かせる。

 流れから出た魚。強いけど、重さはそれほどないみたい。

 強引に巻き取り抜き上げた。

 38cmの丸々肥えた綺麗なバス。


「オレも釣れた。」


 笑顔で桃代に見せる。


「やったやん!」


 笑顔で喜んでくれる。

 ハリを外し、写真を撮って逃がす。



 今日の釣果は海が3本。

 涼は2本。

 ついに複数引き釣れるようになった。

 ユキは5本。上手いことダウンショットがハマった。

 桃代は2本。巻きは流石に数が出ないが、それでも複数引き釣ったのは大したものだと思う。




 釣果のハナシで盛り上がっていると、視界をスッと何かが横切る。

 カワセミだ。

 太陽の光を受け、オレンジと青緑がキラッと光った、ような気がした。

 ありふれた表現だけど美しい。



 自然を肌で感じながらの楽しいひと時。

 受験勉強の合間のリフレッシュ。

 今日も癒された。

 これでまた頑張れる。

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