第67話① 千春が!(再会)
残るは一人。
千春。
勿論見た目が問題ではない。
参考までに現在の見た目はというと。
髪はロングで明るい茶色。
スリムな体型で背は157cm。
実年齢よりもだいぶ若く見え(二十歳と言っても十分通用する)、菜桜や渓のような華やかさはないが、可愛らしい顔立ちをしている。
学生時代はそれなりにモテていて、何度か告られもした。が、ユキのコトが好きでそういった気分にはなれなかったため、全て断った。
その思いは今も尚続行中であり、前へ進むことができない原因となっている。
社会人になると女性ばかりの職場で男性は既婚者しかいない。
出会う機会が無くなり完全に詰んでいた。
こげなんじゃマジでいかん!ホント、どげかせんと。
訳:どうにかしないと
焦る。
どうにかしたいとは常に考えている。
いるのだが、
余りもの。
負け組。
どーせウチなんか…。
ふとした拍子にネガティブさが顔を出してしまい、前向きの考えにブレーキをかける。
ここ数年、ずっとこんな調子で悪循環から抜け出せなくなってしまっていた。
どこかで断ち切るべく何か行動を起こさないと、真剣にマズイ状況だ。
金曜日の夜。
自分の部屋にて。
は~…今週もよぉ頑張った。夕飯も食べたし風呂にも入った。あとは寝るだけやな。明日は休みやし、思いっきしダラッとしよ。
テレビを見ながら夜更かしすることにした。
酒を飲みながらテレビをON。
明日は少し遅くまで寝ちょこ。ん~、いいね!頑張った自分にご褒美!っち…この程度で褒美とか思える自分。でたん安上がりやな。
思わず苦笑。
準備は整ったので、あとは酒。
確か冷蔵庫に酎ハイがいっぱい冷やしてあったはず。
夕飯時にバッチシ確認済みだ。
とりあえず2本くらい持ってきて、それでも足らんならまた取りに行けばいいや。
なんてことを考えつつ台所に向かう。
冷蔵庫を開けると、
あれ?なんで?
さっきまで結構な数あったはずの酎ハイが1本も無い。
と、妹の部屋から騒ぎ声。
いつの間にか友達を呼んで家飲みしていやがった。
アイツらか~…シクった!何本か残しちょくごとゆっちょかないかんやったなぁ~。
時すでに遅し、である。
完全に夜更かしモード。
酒が無いと口寂しい。
ビールは夕飯の時飲んだのが最後の一本。
日本酒はあるけど、疲れているから飲めば間違いなく瞬殺で寝てしまう。
焼酎やウイスキーという手もあるが、イチイチ氷や水や湯などを用意するのが面倒臭い。
缶を開けてすぐに飲めるのがいい。
この我が儘を満たすためには…今から買いに行くしかない。
夕飯の時、既に飲んでしまっているのでクルマは使えない。
時間を見ると22時前。
ということは。
ドラッグストア、まだ開いちょんな。
訳:開いているな
仕方なく歩いて買いに行くことにする。
早速準備。
すぐそこやし、この上に何か着て行けばいいやろ。
ベッドの上に放り投げていたパーカーをTシャツの上から着ると、準備OKだ。
と、ここで。
季節は夏。
当然、ノーブラである。
暑いのに&これから寝るというのにん~なモンしちゃいられない。
参考までに千春は割とちっぱいだ。
ノーブラでも密着しない服なら辛うじて誤魔化すことができる。
とはいえ、である。
桃代と比べると雲泥の差。ちゃんと盛り上がっているし、そしてなによりも形がよい。いわゆる美乳、というやつだ。
といったことを頭の中に置きつつ。
普段、最低限のことはちゃんとするくせに、たま~にやってしまう「まぁいっか」。
そんな時に限って事件とは起こるものである。
途中、ユキの家の前を通りかかると中から声。
何気なくそちらに目をやると、ユキが誰かと出てきた。
ユキか…せっかくやき一緒に買い行こ。
立ち止まって待っていると千春に気付き、
「こんばんは。」
「どこ行きよん?」
「ん?ドラッグストア。家飲みしよって酒が無くなったき買い行きよる。」
「ウチと同じやんか。ウチも今から飲むつもりで冷蔵庫開けたら何も無いでからくさ。妹が友達連れて来ちょって全部飲みやがった。一緒行こうぜ!」
「うん。っちゆーか、一人飲みするんならウチこん?食いもんもちょっとはあるよ?」
「行く!」
急きょ、ユキの家で飲むことが決定した。
歩きながら駄弁りつつ、
一緒におるヤツ…な~んか久しぶり~に見る顔ばってんが…えーっと…
記憶の中からほじくりだす千春。
しばらく考えて、
「自分、な~んか久しぶりに見る顔やな。中学、私立に行った…えーっと…内…内山?そうそう!内山内山!頭良かった。」
思い当たる。
見覚えのない可愛いらしい女性からいきなり名前を言い当てられてビックリしている弘明。
じっと千春の顔を見つめ、
「そぉやけど。えっと…。」
しばらく考えるが、どうにも思い当たらない。
ギブアップし、
「ごめん。誰かね?」
失礼を承知で、名前を聞いた。
千春は、
「うっわ~…寂し過ぎ!ウチ、覚えちょったんに、覚えてないとか。コイツ、あり得んくねぇ?もぉちょいよーと考えれっちゃ!」
意地悪く笑い困らせる。
「え~…誰?マジで。」
困り果てる弘明。
その様子を楽しみ、
「ほら!思い出せ!さぁ!早く!さぁ!さぁ!!」
あおりたてる千春。
必死こいて考えるものの、
「え~…マジでゴメン!勘弁して?」
どうしても分からない様子。
申し訳ない顔をしながら手を合わせ、謝る。
「イヤ!勘弁せん!」
わざとらしく怒ったフリ。
「え~…」
いよいよ困り果てていると、
「千春ちゃ~ん、そげ苛めんとやが。」
ユキが笑いながら正体を明かす。
瞬間、目を見開き、
「えっ?千春ちゃん…っち、北尾千春ちゃん?」
ソッコー名前が出てきた。
強烈にビックリしている。
「そーたい。なんでユキからゆわれるまで思い出さんかな~、このアンポンタンは。薄情すぎるやろ。」
「だってぇ~…マジで?背ぇ、こ~んなに小っちゃかったよね?でったん伸びちょーし、大人っぽくなっちょーし。分るワケないやん?こげなん反則ばい!」
千春の身長は、小学校六年時から比べると20cm近く伸びているため、私立中学に行った弘明はそのコトを知らないのだ。
「参ったか?」
勝ち誇る千春。
これをきっかけに会話が弾みだす。
「うん、参った。っちゆーか、でったん可愛いっちゃき!モテるやろ?彼氏は?」
「嫌味か?おらんわい!」
「マジで?そんなに可愛いのに?」
「はいはい。調子いーことばっかコキやがって!心にもねぇげなことゆーなっちゃ。褒めたっちゃな~んも出らんぞ。彼氏おったことやら一回もねぇわい!」
「またまた~。そげん可愛いのに男がほっとくわけないやろ?」
「ホントにおらんとっちゃ。でもまぁ可愛いっちゆってくれたき、ウチのコト思い出しきらんやったことはちょびっとだけ許しちゃー。」
訳:ホントにいないんだって
にしても。
「可愛い」の連続攻撃。
思わず嬉しくなってしまう。
千春と分かってからは、思い出話に花が咲きまくる。
ドラッグストアでさっさと買い物を済ませた。
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