第67話② 千春が!(乳首をコリッ!)

 家に到着。


「ただいま~。」

 

「よっ!桃。」

 

「おかえり。っち、あら?なんで千春おるん?」

 

「ウチも酒買い行きよったら家の前でちょうど会ってからくさ。んで、一緒に買い行ったっちゅーワケ。」

 

「そーなんて。はよ上がり?もぉうるさいの寝たし。」

 

「そーなん?ユーキ、会いたかったんに。」


 雑談しながら準備。

 買ってきた酒を並べたり冷蔵庫に入れたり。

 桃代は酒の肴を作り中。

 テーブルの上には既に何種類か置いてあり、いつでも飲めるようになっている。

 準備が終わり、みんなでテーブルを囲み、飲み再開。


「「「「かんぱ~い!」」」」


 一人加わり飲むペースが加速する。

 ハイペースでできあがっていき、全員かなりいー感じ。

 

 弘明はダラ~と座椅子の背もたれに身を預け、千春をじっと見つめ、しみじみと、

 

「北尾さん…なかなかいーよね~。」

 

 認識した直後から相当お気に入りのご様子なのだ。

 

「よぉゆーわ。ウチっち分からんやったくせに。で?何がいーんか?あー?具体的にゆーてみぃ!」

 

 四つん這いになり弘明の真ん前まで寄っていき、意地悪い笑みで顔を覗き込みながら絡む。


 パーカーは暑いので&食べこぼすので早い段階から脱ぎ捨てており、上はTシャツのみ。首回りが大きく開いているのでずれて右側の肩が出てしまっている。この時点でブラ紐は見えないからノーブラなのがモロ分かり。乳首も見えそうになっているのだが、全員かなり酔っていていー気分。なので、誰もそのことについてツッコまない。


「具体的に?可愛い!モロ好み!惚れたかも!」


 即答だった。


「はいはい。ホントコイツ調子いーっちゃき。」


 本気にはしていないものの、面と向かって「可愛い」と言われるのはなかなか気分がいい。


 ここでちょっと…いや、だいぶ問題なのが、酔っているせいもあってかなり顔が近い。


 それを見て桃代がいらんことを思いつく。


 押してやれ!

 

 と。 


 ホント、お約束である。


 ニコニコしながら気付かれないように千春の後ろへと回り込む。

 千春は酔っているためそのことに全く気付いていない。

 ユキは桃代が何をするのか分かってしまい、止めようとするも既に足にきていて動きが鈍く、座椅子からなかなか立ちあがれない。

 

「桃ちゃん!いかんちゃ!」

 

 叫ぶのと、

 

「せ~のっ!ど~ん!」

 

 ケツを押したのがほぼ同時。

 全く間に合わなかった。

 

「「ぅわッ!」」


 弘明を正面から押し倒す形で前のめりに崩れ落ちる。

 そのまま、


 チュッ。


 大事件発生だ!


 ファーストキス!しかも人前で!


 既視感。

 桃代のホールインワン事件になにか通じるものがある。


 かなり酔っているし、座椅子もろともひっくり返ったので、座面が垂直に天井を向いてしまっており、なかなか起きあがれずにいた。


 千春はというと、ちゅーした後さらにもう一段階崩れ、座面の端に太ももが乗り、ウルトラマンが飛んでいくポーズみたいになって、上半身で弘明の顔を圧し潰してしまっている。

 そして、あろうことかTシャツがずれ、右側の乳首をナマで咥えさせていた。


 二つ目の大事件発生だ!


 顔に当たる優しい柔らかさ。そして、風呂上りのいい匂い。唇に触れるコリッとした感触。

 弘明は、即座に自分の置かれた状況を理解してしまい、


「ぅわっ!北尾さん、ノーブラやん!」


 反射的に声を出す。

 押しつぶされたまま喋ったものだから、敏感な部分をモロに刺激され、


「ンあっ❤ちょ!バカ!そのまんまで喋るヤツがあるか!色々とマズイっちゃ!」


 不意の快感に思わず色っぽい声が出てしまうし、身体はピクンと跳ねるし。

 超絶恥ずかしい展開だ。

 そんな千春を目にした桃代。


「うはぁ!エロい声出た!」


 大喜びである。

 ユキは掌で目の辺りを覆い、「あちゃ~…」という顔をしている。

 千春は合体から解除されようとしてもがきまくっている。

 もがく度に乳首が擦れ、身体が跳ねて「んっ!」とか「くっ!」とかエロい声が漏れる。その間乳首は出っ放しの咥えられっ放し。

 そして、声が出る度に桃代から大笑いされる始末。


 脱出時にまたもやハプニング。

 弘明の股間に膝が割り込んでしまい、


 !!!


 固い棒状のモノに接触。

 直に触った経験なんかなくても興味はある。エロい動画でたいがい研究しているから、どういった状況なのかくらいすぐに分かる。


 初めて触る勃起したチ●ポ。


「ちょっ!お前っ!でったん勃起しちょーやねーかっちゃ!」


 理解してしまい、強烈に赤くなる頬。


「当たり前やん!そげないいモン咥えさせてもらったら、冷静でやらおれるわけないやん!」


 そりゃそーだ。

 否定なんかしない。恥かしがりもせず一切の躊躇なく言い放つトコロは流石ユキの友達である。


 やっとのことで横に転がって脱出。


「もーっ!バカ!」


 怒ったフリしてモロ出しになった右乳を急いで収納する。

 実際は怒ってないのだが、流石に今のは恥ずかしかった。

 とりあえず誤魔化すために演技した、といったトコロ。


 立ち上がるとすぐさま桃代に詰め寄り、

 

 ベシッ!

 

 思いっきり頭をはたく。

 こちらには


「きさん、桃っ!」

 

 烈火のごとく怒り散らす。

 普段割と落ち着いている千春の大声。

 かなりのレアケースだ。恐らくユキと桃代が別れた時以来かも。

 でもまぁ、こんなことされれば当然の結果である。


 唇を押さえ、涙目になっていた。


 桃代は悪びれもせず、

 

「あ痛っ!あはは、チューしたね!」

 

 大喜びで膝を叩いてはしゃいでいる。

 キスの方に話が向いたため、乳首モロ出しのコトはみんなの頭から消し飛んでいた。

 

 両手で胸倉を掴み、

 

「ウチ、初めてなんぞ!どげしてくれるんかっちゃ!」

 

 振り回しながら猛講義。


「知っちょーくさ!だき、手助けしてやったんやん。」


 大笑いしながらサムズアップする桃代。

 そんなところに、


「ウソ?マジで?」

 

 横からこのやり取りに加わる弘明。

 キッと睨み、

 

「なんでこげなことでウソ言わないかんのかっちゃ!」


 今度は弘明に食ってかかる。

 当然の顔して


「まあまあまあ。よかったやん。ファーストキス。ウチに感謝しなさい!」


 宥めに入る桃代。

 全く反省しちゃいない。

 そんな態度がものすごく腹立たしくて、

 

「うるせー!バカ桃!たいがいせぇよ!なぁし好きでもない人間とキスやらせないかんのか!」


 ますますヒートアップする千春。 

 この言葉を聞いた弘明は、

 

「うわ~!『好きでもない人間』とか言われたし!でったん哀しーき!」

 

「哀しい」とは言いつつも、素敵な笑顔。

 喜びが全く隠せていなかった。

 この一言で、

 

「お前もなしそげあるんかっちゃ!ウチにとっちゃ大事件なんぞ!」


 完全に弘明の方へと矛先が向いてしまう。

 しかし。

 予期してなかったこの上ないご褒美をいただいた弘明は、

 

「だって、嬉しかったっちゃもん。北尾さんの初めてを貰えたんばい?しかもナマ乳首とか!そんなの嬉しくないわけないやん。」

 

 負けずに反論。


 そうやった!

 

 せっかく無かったことになりかかっていたもう一つの大事件である「右乳首パクッ!事件」を見事に蒸し返しやがった!

 その言葉で桃代もユキも再度千春の胸に注目。

 なるほど、Tシャツが肌に接触すると、二つの小さな「ポチッ」がなんとなく確認できなくもない。

 いつも指摘されている桃代は、


「コイツ、ウチに『止めれ』とか言いやがるくせに自分がノーブラとか、どーゆーことか?」


 ここぞとばかりに突っ込みマクる。

 恥かしくなってしまい、

 

「うるせー!バカ桃!そして内山も!せっかくみんなスルーしちょったんに、なんで改めて言い直す?」


 胸を隠し、あっち向く。

 急いで脱ぎ捨てていたパーカーを着てチャックを締めた。

 そして、


「え~くそ…もっと首の開いてないヤツ着てくれば…」


 何やらぶつぶつ独り言。

 その様子がなんとも可愛らしくて、


「ありがとね、北尾さん。ナマ乳首、嬉しかったよ!」

 

 思わず礼を言う。

 言い合いは続く。


「バカ!そげなこと、蒸し返すなっちゃ!」

 

「だって!でったん嬉しかったっちゃもん!」

 

 が、心の底から嬉しいと思えたから、只今絶賛ご立腹中の千春にも負けちゃいない。

 千春はこのやり取りを終わらせるために、 


「うるせー!ハプニングが嬉しかったやろーが!」


 言い放った。

 しかし、弘明にとってはそうじゃない。

 

 だけ?それは違う!断じて違うと言い切れる!


 だから、

 

「それは違うばい!オレ、さっきゆったよね?惚れそうになったっち。北尾さん、マジでオレのどストライクなんちゃ!そんな人とチューできて、ナマ乳首まで咥えさせ貰えたんばい?普通に考えて嬉しいよ?」

 

 真顔で言い切った!


 言っている内容はまあまあサイテーだが、これまでに散々「可愛い」だの「嬉しい」だのと言われ続けているから悪い気はしない。

 怒りの標的が桃代→弘明となった辺りから、徐々に千春のペースが狂い始めていた。

 自己中な意見を言い過ぎたことに、少なからず申し訳なさを感じていた。

 そんなところにトドメの断言である。

 

「何なんか、それ…」

 

 ムキになっていた態度が一転、しおらしくなってしまう。

 

「うわっ!千春がものすご可愛らしくなった!今、でったん抱きしめてーき!」


 いちばん触れてほしくないトコロをピンポイントで弄り、茶化しまくる桃代。

 

「うるせー!バカ桃!誰のせいかっちゃ!」

 

「は~い。ウチ!」

 

 挙手してはしゃぎ、


 ベシッ!


「あ痛ぁ!あははは。」


 またぶっ叩かれる。

 ただの飲んだくれである。

 ユキは「気の毒に」という顔をしている。



 あまりの騒がしさに有喜が起きてしまっていた。

 眠い目を擦りながら大人しく座り、焼いたソーセージをモグモグと食べている。

 

 弘明はチューした後からずっとご機嫌のまま。

 ちょっとふて腐れてしまっている千春を慰める。

 

「北尾さん、ありがと。嬉しかったよ!だき、機嫌直そ?」

 

「だって…。」

 

 さっき真顔で断言されてから、なんかむず痒いようなビミョーな感覚が消えない。

 弘明の顔がまともに見れなくなっていた。

 結局最後まで普段の自分らしさが取り戻せないまま、この日はおひらきとなった。

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