第59話 久しぶり
梅雨も明け、暑さが本格的に厳しくなる7月下旬。
澪が出張で九州事業部へ来ることになった。
本社での研修と視察が主な目的だという。
ま、研修云々は単なる言い訳。表向きの事情で、建前というヤツだ。たまには余所の事業部の人とも飲みたいよね!というのが本音。
呑み助が多い会社なのでしょーがない。ある意味飲み会が一番大切だったりする。
楽しい飲み会を!
というのが裏の社訓だ。
この会社に於ける宿泊を伴う出張は、一泊分の宿泊費というものが決まっている。そこから宿代を出す形になるので、差額は全て給料に上乗せされて振り込まれる。
という事は、宿代が安ければ安いほど自分の取り分が増えるというわけで、もしも出先に知り合いの家などがあり、泊まらせてもらえるのであれば全額自分のものとなる。
一週間の出張だ。宿泊費はかなりの額に上る。キツイ思いをして残業代を稼ぐよりも断然効率が良い。そして、都合がいいことに出張先には桃代の実家があるじゃないか!
というわけで、出張が決まった時点でお願いしてきた。
勿論桃代は快くOK。ユキと桃代のセックス部屋(離れのプレハブ)に泊まることとなった。
澪が来る数日前の昼休み。
「桃ぉ~、お前の友達が関東で事務しよろーが?そいつが今度研修で一週間ぐらいこっちくるぞ。」
風香からおしえてもらう。
「あ!それ、この前直々に連絡ありましたよ。」
「やっぱしか。ま、仲良しならそげな感じやろーね。来たらいっぱい飲ますぞ!」
「ははは。それいーかもです。つぶしちゃいましょ!」
「お前も意地悪いね。」
「先輩ほどじゃないですよ。」
「桃、お前…ウチらのこと意地悪とか思っちょーっちゃね。よし!お前もつぶす!。」
「勘弁してくださいよ~。」
しょーもない話題でじゃれ合っている。
普段からこんな感じで、非常に仲が良い。
遡ること2週間。
7月も中旬にさしかかった頃のコト。
夜、マッタリしていると澪から電話。
「出張で九州事業所に行く」とのことだった。
毎日のように連絡は取り合っているのである程度互いの現状は分かっている。だが、実際に会えるとなると嬉しいものだ。引っ越してからは全く会っていない。実に2年ぶりである。
出張の件は美咲と渓も連絡を取り合っているため桃代と同時期に知った。
こんな機会でもない限り滅多に会うことなんかできないのだから、出張の間に何回かは家飲みしよう!というハナシになった。
出張当日。
午後3時頃、総務の人間が社用車のハイエースを出して福岡空港まで迎えに行く。この日来るのは澪を含め5人。全て同期で顔見知りだ。
迎えに行った人間が2時間余りで帰ってくる。
挨拶もそこそこに、飲み会の場へ移動することとなる。
場所はいつもの飲み屋の大部屋。
そこでやっとちゃんとした対面だ。
「桃、久しぶり!元気だった?」
澪が駆け寄ってくる。
猛烈に綺麗になっていて羨ましいばかりだ。
席を確保しつつ現状の報告。
「うん!澪は?」
「元気だよ。ユーキは?もうだいぶん大きくなったんじゃないの?」
「うん。言うコト聞かんで往生こいちょーばい。っちゆーか、近頃ユキくんの言う事しか聞かんし。んで、二人ともウチの言うコト聞いてくれんっちゃ。バカ。」
隣にいるユキにとばっちりが。
いつもの如く、ヘラヘラしながら聞き流す。
そんなやり取りがあっている間に瓶ビールが到着。
各自、注ぎあって社長の挨拶。
挨拶によると、この飲み会は一応「暑気払い」という事らしい。
社長自身が呑み助で、既に我慢が限界らしい。
始まりの言葉もソコソコに乾杯。
いつものパターンだ。
飲んでいる最中にも渓と美咲から連絡が入る。
澪の方にも来ているらしい。
「美咲と渓から。もう家飲みの用意してるって。早く会ってみたいね!」
この飲み会の後、ユキ達の部屋で家飲みすることになっている。そんなわけで、これから幼馴染達全員で買い出しに行ってくるらしい。海と涼は子育ての真っ最中なので、夜遅くは出れないとのこと。残念だ。
で、会社の飲み会は今、どんな感じかというと…
桃代はやっぱしヒカルと風香から拉致られて、エロ話の餌食になり大赤面中。両方から肩を組まれ、ユキの隣に戻れなくなっていた。拉致られたとはいえ同じテーブルで、しかもすぐ近くなんだけど。いつぞやのラブホの件をまたもや引張り出され、どんなプレイで楽しんだか根掘り葉掘り追及されていた。勿論、澪も風香に呼ばれていて、すぐ横でニヤケながら聞いている。他の社員にモロ聞こえなので、ユキもたいがい恥ずかしい。たまに話を振られ、正直に応えようとして桃代から飛びかかられ、口を塞がれる。
いつの間にかユキの隣にいた美智は、泣き上戸が発動していた。桃代と結婚したことについて、「また」絡んでいる。ユキは曖昧に笑いながら「ごめんね」と言って頭を撫でている。飲み過ぎてゲロゲロにならないように、ちゃんと量を制御して注いであげながら。
いつもの如く、カオスな状態が強まってきたので、一旦おひらき。
今日は家飲みがあるためここで離脱。タクシーで帰る。
家に着くと9時過ぎ。
有喜はボチボチ寝る時間なのに、夏休みという事もあり、少し夜更かし癖がついていた。
元気よく出迎える。
「おかえり!」
「お!ユーキ!久しぶり!大きくなったね。」
澪が話しかけると、
「…誰?」
突然知らないオネイサンに名前を呼ばれ、若干警戒気味。
「ありゃ~…忘れちゃったか~。しょーがないか。まだ小っちゃかったもんね。」
ちょっと残念そうな澪。
「………」
首を傾げ一生懸命思い出そうとする有喜に、
「向こうにいた時、お家に遊びに来てたお姉ちゃんだよ?覚えてないかな?」
ヒントを与える。
しばらく難しい顔をして考える。
そして自信なさげに、
「…澪ネーチャン?」
なんとか思い出してくれた。
「当り!」
嬉しさのあまり抱きしめる澪。
感動の再会第一弾だ。
とりあえず急いで風呂に入ることにする。
風呂上り。
すっぴんなのに超絶キレイな澪。
桃代は羨ましくてたまらない。
「あ~あ、不公平極まりない!お前なんでそげキレーかな。はがいたらしー。」
「桃だって肌とかすべすべだしキレーじゃん。ってゆーか、結婚できたんだからいーじゃんか。」
相変わらず自信無しの桃代だった。
全員風呂を終わらせたところでみんなに連絡。
桃代は酒の肴を作るため台所へと向かう。
数分後。
コンコン。
部屋のドアがノックされ、有喜が走って開けに行き、
「美咲ネーチャンと渓ネーチャンと千春ネーチャン来た!」
桃代に伝える。
「おぅ、ユーキ。来たぞー。」
三人とも両手にパンパンのレジ袋を持っているので飛びつくことができなかった。
「美咲!渓!久しぶり!」
有喜の声を聴き、澪が感動の表情で出迎える。
「お~、澪!久しぶり!元気やったか?」
「うん!めっちゃ元気だよ!二人とも髪型変えたんだね。」
「おぅ!なかなかよかろうが?」
「うん。なかなか似合ってる!大人っぽいね!」
「よかった。イメチェン大成功。お前も大概キレーやけどね。で、美咲は元気か?」
「うん!会いたいって言ってた。」
「会ってみたいね。」
「次は一緒に来るよ!」
「おぅ!楽しみしちょく。」
桃代が用意にキリを付け出迎える。
「うわ!大量やな!」
あまりの量にビックリしている。
「酒、重いきウチらはこれだけしか持ってきてねぇぞ。あとは今来てないヤツラがもうチョイ持ってくるけど。」
ビールと酎ハイとカクテルを2ボールずつ買ってきていた。
「こんだけあればいっとき大丈夫!家にもあるし。はよ上がんない。」
上がるのとほぼ同時にまたノックの音。
「はーい!」
有喜が出迎えに行く。
大体誰か分かっている様子で、飛びつく気満々だ。
ドアが開くなり、
「菜桜ネーチャン!環おばちゃんも!」
「うわっ!夜遅いのに。でたん元気やんか。」
「また。こそばいーちゃ。」
順番に飛びついて大好きな乳を触っていた。
「こら!止めんか!バカユーキ!降りれ!」
桃代から怒られる。
澪が苦笑していた。
恥ずかしい。
大人ばかりの集まりで子供は有喜だけ。遊び相手がいないので少しつまらない。
いないとは分かっていても、
「幸は?」
環に聞く。
「ん?もうねんねしちょー。また今度の。」
「分かった。」
ちょっと残念そうな顔になりつつも、素直に諦める。
その時外から、
「桃~、開けて~。両手が塞がっちょー。」
千尋の声が聞こえる。
「は~い。チョイ待ってね~。」
開けてやると、
「これ、ニセモノビール。冷えちょらんばってんがどげする?」
24本入りの箱を抱えてきていた。
「うわ~、いっぱいやん。冷凍庫で冷そっかね。とりあえず家にもあるし、美咲と渓が持ってきた冷えちょーのが何本かあるき、そっち飲みよるうちにつべたくなるやろ。」
すぐさま冷凍庫へ。
千尋が家に上がると同時にドアをノックする音。
「はーい!」
有喜が走って行きドアを開けると、
「お!ユーキ。久しぶり。」
「大気ニーチャン!」
飛びついて抱っこしてもらう。
かなり久しぶりの大気。
正月休み以来だ。
なんか、会う度カッコよくなっていっている気が…。
大気は会社がどうしても合わなくて辞めるとのこと。今は、溜まりに溜まった有給の消化中で実家にいる。既に次の職場は決まっているらしく、リフレッシュ中なのだ。
持ってきていた珍味のレジ袋とワインを桃代にわたす。
これで全員揃った。
「とりあえず乾杯しよーや!」
ユキがみんなに缶ビール(本物)を回す。
そして、
「「「かんぱーい!」」」
飲み会第二弾開始。
各々が好きなように食って飲む。
家飲みのマッタリとした雰囲気がなんとも心地よい。
と、先程から澪の様子がなんとなくおかしい。
気付いたのは美咲。
夕飯の時に少しは飲んだが、こいつらの中じゃ最も素面に近い部類。だからこそ分かってしまった僅かな変化。
なんか再会直後よりも頬の赤みが増した気がする。ある時点から赤さの質がどうも違う…気がするのだ。
アルコールのせいだけじゃないはず。
彼女の行動と、美咲の予測を照らし合わせ目線を追う。
その先には。
………!
なんか…どういうことが起こっているのか分かってしまった気がする。
喋りながら何度もチラ見。
ロックオンしていらっしゃる!
意識して、よーく観察する。
見る度ハートマークをまき散らし、キュンキュン音が聞こえる気までしてくる。
これっちゼッテーそぉゆぅことやろ?
確信に変わった。
甘酸っぱさが全開だ!
他人事なのにドキドキが止まらない。
なんか…もぉ…
胸の辺りがウワ~ってなってくる。むず痒くてどうにも…。
ついに居ても立ってもいられなくなってしまい、
「おい、澪!ちょーこっち来い!」
小声だけど鋭く言った。
「え?何?」
腕を掴むと立ち上がらせ、部屋から出ていく。
驚いた顔で美咲を見る澪。
「何?どーしたの?」
ニヤッと笑うと、
「え?マジで何?」
意味が分かっていなくて不信感をあらわにする。
続けて、
「お前…大気に惚れたやろ?」
気付いてしまったコトをダイレクトに問いかけてみるとその瞬間、劇的な変化が!
「なんでっ?」
大赤面の澪。
「『なんで?』やねぇちゃ。お前、分かり易過ぎぞ?」
「ウソ?マジで?」
「モロやねぇかっちゃ!でったん見よぉし。」
核心を突かれたせいで体温が上がってしまい、掌で顔を扇いでいる。
気付かれてないと思っていただけに、余計に恥ずかしい。
誤魔化せないと思った。
深く息を吸い、大きく吐き出した。
「…実は…一目惚れしちゃいまして…って、恥かしっ!」
「澪はあげなんが好みなんかぁ…まぁ大気カッコイイもんの。」
「いや~、マイっちゃったよぉ。どストライクだもんな~。ここに来た瞬間からだよ~…。」
真っ赤な顔して困り果てている。
「うん。お前いきなし顔変わったもんね。」
「そっかそっかぁ~。あいつ、たしか彼女おらんはずぞ。」
「マジで?期待しちゃってもいいのかな?」
「いーくさ!イっとけ!っち、無責任なことはゆえんの。ちゃんと聞いてみよ。引張り出すぞ。」
「うん!頼む!」
今後の作戦を立てていたため部屋の外での時間が長くなり過ぎた。
ガラッと戸が開き、
「こげんとこおったんか。どげかしたんか?」
大気だ。
関東からの大事なお客さんがゲロゲロにでもなったのかと思って心配していた。
それにしても何という神憑ったタイミング!
思いっきしビクッとなり、焦りまくってあっち向く澪。
「ちょっとお話し中やった。」
大気は安心して、
「あんまし戻ってこんき、うんこかと思ったぞ。」
クソしょうもない冗談をいいだしてしまう。
よりにもよってうんことか!ほぼ初対面の女子になんてことを…。
話題のチョイスがいつもの如く酷過ぎる。
「ちょっ!バカ!お前っ!」
焦りまくる美咲。
幼馴染の男達は、ユキを筆頭に例外なくみんなアホだ。
美咲から頭をはたかれる。
「お前の話しよったって。ちょー出て来い。」
無理矢理部屋から引っ張り出した。
「はぁ?何?オレの悪口言いよったん?」
「そーたい。お前がスケベで下品っち話しよったって。」
「マジでか?でも、ユキには負けるぞ?」
「そげな勝負、今はどげでんいーったい!そこ、はよ閉めれちゃ!今から大事なお話するっちゃき!」
「なんか?3Pでもするんか?でもオレ、美咲はイヤぞ。こっちの可愛らしいオネイサンとの2Pがいい。」
あんまりにもあんまりな話題。
澪の目が点になっている。
「バカタレ!お前、ホント黙っちょけっちゃ!」
反対向いて澪の耳にコソコソ声で
「見ての通り、こげなアンポンタンぞ?ホントいーんか?」
「うん!全く問題無し!男ってみんなそんなもんでしょ?」
既に立ち直っていた。
「ならいいけど。じゃ、聞くぞ?」
「うん、お願い。」
改めて大気に向き直り、
「お前、今、女おるん?」
「おらんばい。なんで?」
心の中でガッツポーズの澪。
第一関門突破だ。
「心して聞けよ?」
「なんかっちゃ。勿体ぶらんではよ言え。焼酎が待っちょーっちゃき。」
「うるさい、バカ!しょーもねぇコトいーよったらおしえんぞ?」
「分かった分かった。」
ヘラ~っと笑う大気。
美咲から、
「コイツ、お前のことがいいっち!好きになったんっち!一目惚れなんっち!」
驚愕の真実を聞くと、笑顔のまま固まった。
酔っていー気分だったのが一気に吹っ飛ぶ。
数秒の間を開け、真顔になって、
「マジで?」
「マジくさ!だき心して聞けっちゆったろぉが!それなんにヤラシイことやら下品なこと言いやがって。アンポンタン!で、返事は?」
「OKくさ!断る理由やらどこにある?でったん可愛いやんか!」
即答され舞い上がる澪。
千尋菜桜ペアに引き続き、またもや美男美女カップル爆誕!
フワ~っと力が抜け、その場に座り込んでしまう。
顔を真っ赤にして目を潤ませていた。
「っちゆーかオレ、こっちの名前すら知らんっちゃけど。」
そう言えば自己紹介なんかしちゃいなかった。
「ごめんね、いきなり。」
「ううん。そげなことねぇよ?」
「私、桜井澪って言います。」
「澪ちゃん、ね。オレ、下村大気。よろしく。っち東京の人なんやろ?いきなし遠恋やん。」
「うん。そうなっちゃうね。」
「せっかく彼女できたのに一緒おれんとか拷問やん。」
悲しそうな顔をする大気。
しばし腕を組み、何か考えている澪。
そして、
「じゃ私、こっちの事業部に異動の希望出すことにするよ!何回か出してればきっと聞いてもらえるはず。それまで待っててほしいんだけど…ダメかな?」
「うわ~…お前スゲ~ね!そげな積極的なキャラやったっんか?」
美咲が感動している。
「へへへ、自分でも驚いてる。」
「待つよ?」
その答えだけで嬉しい澪。
「もし聞いてもらえなかったら辞めてでもこっちにくる。で、こっちで仕事探す。」
「そこまで?嬉しいね。待つき辞めんでも大丈夫ばい。ヒマ見つけてオレも会いに行くし。」
「ホントに?でも、あまりにも聞いてもらえないと辞めちゃうかも。とりあえず1年を目処に。」
「分かった。頑張って。こげなヤツ好きになってくれてありがとね!嬉しいよ。ずっと仲良くしようね!」
「こちらこそ!突然こんなぶっ飛んだことしちゃってゴメン。ずっとよろしくね!」
殆どプロポーズな勢いだ。
あまりにも帰ってこないので、桃代が心配して部屋から出てきて、
「お前ら、いつまでも外でなんしよん?」
その問いには答えず、
「よし!みんなの前で言え!」
美咲が仕切って全員部屋の中へ入れる。
「お~い!みんな聞け~。重大発表ぞ!」
前に二人して立たされている。
「なん?何が始まるん?っちゆーか、それっちどーゆー組合せ?」
ワクワク中のユキ。
すると大気が、
「今から澪ちゃんと付き合う!」
みんなを注目させて言った。
「は?」
「なんかそれ?」
「なんかおらんち思えばそげなことか。大気、もうセックスしてきたんか?」
一瞬状況が呑み込めなかったものの、すぐに理解し興奮のるつぼと化す。
「めでたいき乾杯しようや!」
そう言ってユキが新しいビールを配る。
「みんな、飲み物持った?じゃいくよ!」
「大気くんと桜井さんの未来にかんぱ~い!」
「「「かんぱ~い!」」」
既に結婚が決まったかの如く盛上る。
澪は嬉しさのあまり涙を流していた。
実は向こうで相手に恵まれず、悲しい恋ばかりしていた。そういったことがあっての今日である。嬉しくないわけがない。
この人に賭けてみたい!今度こそは!
縋るような思いだったのだ。
次の日が仕事だというのに遅くまで飲んだ。
そして次の日。
澪の変化にソッコー気付く風香。
「お前、なんか清々しい顔しちょーやねーか。昨日何があったんか?」
いきなり聞いてくる。
鋭すぎる!
「いや!あの!…」
まるで予測できていなかったため、タジタジになる澪。
「はは~ん、その反応…男やな?」
良いネタを手に入れ、弄る気満々の表情に変わる風香。
「先輩!」
一気に大赤面だ。
「うっわ!わかりやす!今晩も盛上るぞ!桜井は強制参加の!拒否権は無い!相手も連れて来い!」
出社してすぐなのに既に飲み会決定だ。
「勘弁してくださいよ~。」
泣きそうな澪。
そして夕方。
いつもの飲み屋にて。
事情を聴いた風香。
「そっか~…なるほど。桃とユキの幼馴染なら問題ないの。見るからにいい人そうやし。任せろ!ウチが引っ張っちゃーき心配すんな!これでもウチのゆーことは影響力あるっちゃき。」
風香は総務課で実質上のトップである。
なんとも頼もしい限りだ。
「期待してもいいんですか?」
「当たり前やんか!任せろっちゆった!だき、任せろ!秋までには絶対こっちに引張る。」
そしてこの言葉が現実のものとなる。
澪は晴れて10月1日付で九州事業所の一員となったのだった。
九州に出張して仲良しと再会できただけでなく、結婚前提とした相手まで見つけることができた。
大収穫だ!
本当に充実した出張だった。
九州の友達に感謝!
その後。
大気はというと新しい会社でいきなり重要な戦力となり、順調にやっている。
休日などプライベートの時、傍らにはいつも澪がいる。
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