第53話① 虫取り(虫にハマるお話)

 桃代たちが帰郷して一年。


 只今夏真っ盛り!


 有喜にとっては二度目の筑豊の夏。

 今、幼稚園は夏休み。


 そしてっ!虫の季節だ!!

 

 出会った当初から色んな生き物に興味を示していた有喜。ついにド定番ともいえる、クワガタ&カブトムシに特別強い興味を示しだし、執着しだした。


 最大のキッカケは、ユキが会社でヒラタクワガタ(3.5cmの♂)を見つけ、持って帰ってあげたこと。

 出社した時、社屋の出入り口にある電灯の下にいた。

 産廃屋なので山の中。恐らく夜中飛んできたものと思われる。

 見つけた瞬間、有喜の喜ぶ顔が脳裏に浮かぶ。

 その場にしゃがみこみ捕まえた。

 小さいが、どこも欠けていないキレイな個体。


 すぐ後を歩いていた龍から


「ユキ、どげしたん?」


 声をかけられる。

 振り向いて、


「あ!おはようございます。クワガタ見っけたもんで。子供に持って帰っちゃろっかなっち思って。」


 捕まえたクワガタを掌に乗せ龍に見せる。


「ほぉ。ヒラタやんか。懐かしいね。オレも昔取りよったや~。」


 男なら結構な確率で通る道。

 龍も虫が好きだったらしい。

 その日一日、試験室では虫の話で盛上ることとなる。




 社屋に入りタイムカードを押すと、ミーティングルームには行かず、そのまま作業場へと向かった。

 分析が終わり、処分待ちの泥が入っているポリビンを持ってきて中身を出し、ざっと水洗い。圧縮空気で気吹きし、乾かしてティッシュを詰め、クワガタを入れ、さらにティッシュを入れる。これでひっくり返って死んでしまうことはない。蓋に穴を何個か開け、窒息しないようにしたらお持ち帰りの準備完了だ。

 ミーティングルームへと向かった。




 帰宅してクルマを止めると有喜が出迎えてくれる。

 勝手口が勢いよく開き、


「おかえり!」


 走ってきて飛びつく。

 しっかり受け止め抱っこしてあげるとギューッと抱きしめてくる。

 毎度のことだが嬉しい瞬間だ。


「はい。ユーキお土産。」


 作業着のポケットに入れていたポリビンをわたす。


「ん?何これ?」


 手に取って、不思議そうにポリビンを縦にしたり横にしたり。


「開けてみてのお楽しみ。」


 ネジになった蓋を回して開け、ティッシュを引っ張り出す。

 一緒に出てきた黒いツヤツヤのそれを確認して、


「うわ~!ヒラタクワガタやん!すげー!」


 歓喜の声を上げた。

 初めてみる本物のクワガタムシ。

 しょっちゅう図鑑で見ているからそれが何かすぐに分かった。

 想像以上に喜んでくれている。 

 その姿を見るていと一日の疲れも吹っ飛んでしまう。

 捕まえてよかったと心から思えた。

 とりあえず、


「食いつかれんごとせな、ヒラタは痛いぞ。またおったら捕まえてきてやるの。」


 注意すると、


「うん!」


 いい返事。

 興奮しすぎて若干挙動不審になってはいるが。


 しまった!これじゃ晩飯食わんかも…食った後あげればよかったかな?


 後の祭りである。

 とりあえず、虫かごにティッシュを敷いて、どんぐりの木の枝を数本折って入れ、脱脂綿に砂糖水をしみこませたものを入れ、間に合わせで住環境を整えた。

 クワガタは早速砂糖水を吸っている。


 有喜は興奮し過ぎて風呂の時も晩御飯の時もソワソワしっぱなし。

 バタバタ終わらせベッタリと虫かごに張り付いて離れない。

 興味あるものを与えられた子供の集中力の凄さを改めて実感する。

 この日は普段より遅くまで起きていた。

 子供はあまり遅くまで起きていると夜更かし癖がついてしまう。有喜もそんな雰囲気だったため、最後には桃代に怒られた。

 渋々布団に入る。

 翌朝も、いつもより早起きして虫かごを眺め中。


 こりゃ、いっときは続くぞ…。




 朝ご飯の用意ができても虫かごにへばりついたまま。

 一向に席に着く気配がない。

 桃代から、


「ユーキ!たいがいで朝ご飯食べんね!ゆーこと聞かなクワガタ逃がすきね!」


 また怒られていた。


「分かったちゃ!」


 逃がされたら大変だ。またもや渋々いうことを聞く。

 仕事行きがけ、


「ちゃんとお利口さんしちょかなクワガタ逃がすきね。分かった?」


 釘を刺されていた。

 これからしばらく「クワガタ逃がすきね」が脅し文句として定着することとなる。




 その日、仕事が終わりいつものホームセンター兼スーパーで夕飯の食材を買うとき、昆虫マットとゼリーと止まり木も一緒に買った。虫かごは、以前チ●ポを噛んだ特大ヒラタを飼っていた最も大きいサイズのモノを使う。桃代が夕飯の準備をしている間、有喜と一緒に虫かごの準備する。マットを敷き、止まり木を置き、さらにマットを敷く。エサ用の止まり木にゼリーをセット。霧吹きでマットを程よく湿らせクワガタを入れる。コバエ侵入防止のためのシートを挟んで蓋を被せたら完成。

 少しの間、死んだフリで固まっていたが、動き出すとすぐにマットの中に潜っていった。

 その様子を食い入るように見ている。


「潜っていったね。」


「おぅ。エサがあるきまた出てくるぞ。暗いところに置いとっちゃれ。」


「わかった。どこに置けばいい?」


「そーやのー…下駄箱の下かどっか邪魔にならんとこに置いて、じーちゃんとばーちゃんに近くで蚊取り線香燃やさんごとゆっちょけ。」


「は~い。」


 虫かごを置きに行く。


 ユキも昔はこんな感じだった。思い当たる節だらけ。

 クワガタと出会ってから今までの有喜の行動が、小さいときの自分と被る被る。

 気持ちが痛いほどわかるユキだった。

 そして、親目線でそれを冷静に見ることができるようになったことが、ちょっと嬉しかったりする。


「じーちゃーん!虫かごココ置いていい?」


 晩酌している爺ちゃん(ユキの親父)と交渉している。


「おぅ。いーぞ。」


「蚊取り線香燃やさんでね?」


「ん。分かった。」


 交渉成立だ。


「一個頂戴?」


 酒の肴をねだっている。


「ほら。あーんしなさい。」


 口を開けさせ刺身を入れてやる。

 飲み込むと次は、


「泡、ねぶらせて?」


 ビールの泡を貰おうとしている。


「泡だけぞ。飲んだらいかんきの?ほら。美味しいか?」


 ズビズビと吸って、


「うん!」


 こんな小さいうちから…お酒は二十歳になってから!やろ。

 将来は呑み助確定な気がした。

 刺身をさらにもう一切れ貰い、口をモグモグさせながら走って戻ってくる。


「置いてきた。」


「よし。もうすぐご飯やき、ちゃんと食べようの。ちゃんと食べなお母さんからまた怒られるぞ。」


「うん。」


 ユキの言う事はちゃんと聞く。というか、桃代のいう事をだんだん聞かなくなりつつある。やはり男の子だからということなのだろうか。


 虫かごを玄関に持っていってからどうにも落ち着きがない。見たくてウズウズしているのだ。気を逸らせるために、


「ユーキ。お母さん、ご飯何作りよぉか見て来い。」


 命令する。


「は~い。」


 台所に走って行き


「お母さん、何作りよん?」


「肉、焼いてやりよーきね。もーすぐできるき向こういって待っちょき。」


「は~い。」


 戻ってくる。


「肉っちばい!」


「そっか。いっぱい食べらなぞ。そしたらおっきくなるき。」


「分かった。」


 有喜は6月生まれ。友達の中でも割と早い誕生日なのだが、あまり大きい方じゃない。背の順で並ぶと大体真ん中辺り。ユキは特別高いというわけではないが、低いわけではない。で、桃代は女性としてはかなり高い。高くなる要素はあるのだが、恐らくは遅太り。有喜の中では背の高いことがカッコイイらしく、少しだけ気にしていた。だから、いつもよりしっかり晩御飯を食べた。

 そしてまた虫かごへと向かう。




 クワガタを持って帰った日の週末。

 朝ごはんを食べ終わった後のこと。


「お父さん!虫取り連れてって!」


 その言葉を聞き咄嗟に考えた。

 藪の中に入るためには長袖長ズボン。首にはタオルを巻いて帽子も被る。

 間違いなく地獄だ。

 できれば行きたくないのだが…。

 そうだ!

 庭にどんぐりの木があるじゃないか!チン●を噛んだヒラタを捕まえた時、一瞬虫取りに目覚めたことがあった。その時は樹液が出ていてコクワを3匹ほどゲットした。もしいれば、山に入らなくて済むかも。


「ユーキ。庭のどんぐりの木、クワガタおるんぞ。」


「ホントに?」


 目の色が変わった。


「ほら。あっこ。」


 指をさす。が…残念なことにカミキリムシは既に全部巣立っており、それ以来この木には卵を産んでないらしい。新しい木屑が出ていないのがその証拠。樹液の出ていた穴もこの数年ですっかり塞がっていた。


「何もおらんね。」


「あれ~…前はおったんにね~。」


 ぬか喜びさせてしまった。

 ガッカリするユーキ。

 流石に可哀想になってきた。


「困った。どげんしよっかねぇ…。」


 考えてみる。

 短パンで行けて、クルマベタ付けにできて、いっぱい取れるところ。

 子供の頃の記憶を必死で辿る。が、そんな都合のいい場所なんて一カ所もない。あの頃は必死で山奥に入っていた。


 困り果てていると有喜からの提案。


「ねぇ!お父さん!山行こ!あっこの山、クワガタの木いっぱいあったばい!」


 なんですと?

 山に登れと?

 しかも今から?

 ちょっと勘弁してくれ…。


 頭が痛くなってくる。


 家の裏のほうにはこの辺ではメジャーな標高が340mほどの山がある。

 隣接する三つの地区に跨っており、初日の出や遠足などでお馴染みの山だ。ルートによっちゃ意外と傾斜がきつかったりする。

 有喜は幼稚園の屋外授業や遠足で既に何回か登っている。その時にしっかりチェックしてきていた。

 完全に虫取りモードだ。ユキが強く「行かない」と言えば多分聞いてはくれるだろうが、同時に落ち込むのは目に見えている。可愛い我が子のために暑いのを我慢することにした。


「桃ちゃん、あっこの山行ってくる。昨日の作業着もぉ洗った?」


「また!ユーキやろ、そげなこといーよぉのは?この暑いのに山やら行きよったら熱射病になるよ?」


 呆れかえっていた。


「うん。だき、いよいよヤバいと思ったらすぐ引き返す。」


「あ~もぉ…ちょー待ってね。持ってくるき。」


 服とタオルと冷たい麦茶を用意してくれた。

 ユキがとても可愛がるので嬉しい桃代なのだがこの暑さ。流石に危険じゃないのかと心配になる。

 服を着替え、有喜も着替えさせ、虫除けをスプレーし、首にタオルを巻いて、いざ出撃だ!

 遊びの移動基地、緑のレジアスエースに乗り込み出発。

 登山道へと入っていく。

 少し進むと風景が竹やぶから雑木林へと変わる。


「お父さん!ここ!」


 離合できそうな場所にクルマを止め、エンジンを切り、降りて早速登りだす。

 いかにも!な雑木林。辺りを見回すと、所々樹液が出ている木がある。流石に夜じゃないため、祭りの様に賑わっちゃいないが、それでもスズメバチやカナブンなどは活発に樹液を舐めている。雑木林はかなり木が密集しており、朝も遅い時間だというのに日光が届かず薄暗い。なので、幸いなことに今登っている場所は雑草の育ちが悪く草丈が低い。とはいえ、足にまとわりつくのでそれなりにかき分けながら進むことになる。この動作が容赦なく体力を奪う。登り始めたばかりだというのにユキは既にヘトヘト。有喜は…走るように登っている。若さとはこーゆーことなんやな、と感心するのであった。こんなことを言うと、ユキがえらくヨボヨボに見えてしまうのだが、年齢的には全くオイサンではない。致命的に体力が無いだけなのだ。


「ユーキ!ヘビとハチと毛虫に気を付けなぞ!」


 言った傍から、


「わ~!びっくりした~。」


 悲鳴のような声を出すから心配になってくる。


「おい!どげしたんか?」


「でったんデカいムカデ落ちてきた!コエ~。」


「大丈夫か?噛まれたりしてないか?」


「うん!」


 元気な返事で一安心。

 流石に突然目の前に落ちてきて焦ったらしく、進む速度が格段に落ちる。ユキと一緒に進むようになった。

 ある程度目を凝らしながら進んでいくと、幸いにもスズメバチのいない樹液が出ている木がある。ユキの目の高さより少し高い位置と、有喜の目線の高さ。下は有喜に見させ、高い方はユキが見る。


「おったか?」


「暗いき中まで見えん。」


「そっか。ほい。」


 スマホの懐中電灯をオンにし、有喜にわたす。

 穴の中を暑さも忘れ凝視する。


「何もおらん。」


「そっか。じゃ、お父さんに貸してん。」


「はい。何かおる?」


「おる!」


「ホント?僕にも見せて?」


 一気にテンションが上がる。


「ほら。」


 抱っこして見えるようにしてあげる。

 それを確認すると、


「コクワ!オスやね。」


 即座に判別する。

 思わず感心。

 有喜をおろし、枯れ枝を突っ込みほじくると、勢いよく出てきて足元に落ちた。


「あ!落ちた!」


 咄嗟の出来事だったが有喜は見逃さなかった。

 落ちた場所に素早く座り捕まえる。

 伸びるカラー軍手をしているから噛まれても痛くない。

 ガスッ!とばかりに握るとすぐに虫かごに入れた。

 なんとかボーズ(?)は免れた。

 4cmくらい。大きめのコクワガタ。

 興奮気味に虫かごの中のクワガタを観察する。

 ここで時間を食いたくないし、もう少し取りたい。

 なので、


「有喜?次行くよ?」


 先を促すと、


「うん!分かった!」


 再び歩き出す。


 しかしまぁ、なんというか…蒸し暑い。

 雑木林の中は湿度が高く、不快指数がハンパない。頭がボーっとしてくる。既にヘロヘロのユキ。こんな過酷な状況にもかかわらず子供は元気いっぱいだ。それでも知らず知らずのうちに無理をして、熱中症にでもなれば大変なので声をかけ、水分を摂らせる。


「お~い!ユーキ…お茶飲め。」


「は~い。」


 飲むとまたすぐダッシュ。

 お~い!ユーキ!待ってくれ~…という言葉すら出ない…気がする。

 息も絶え絶えのユキ。


「ヘビと…ハアハア…ハチと…ハアハア…毛虫に…ハアハア…気を付けなぞ…」


 周りが冷静に見えてないであろう有喜に死にそうな声で注意する。


「分かった~。」


 だいぶん先から返事。

 そして、そこからさらに数m登ったところで、


「お父さ~ん!ミヤマとスイギュウがおったー!はよ来て!おっきいき捕まえきらん!」


 というコトらしい。

 凄いことだ。

 子供に大人気の越冬しない系。

 派手な方のクワガタの代表選手が二人も!


「マジか!待っちょけ!すぐ行く。」


 くたばりかかっていたユキのテンションがMaxになった。

 先程のヘロヘロさはどこへやら。

 今でも自分は虫が好きなんだ。

 つくづくそう思った。

 ●ンポを噛んだヒラタの時もテンション上がったが、今回だって負ないくらい上げ上げだ。


 どうにかこうにか有喜の元へと辿り着く。

 そいつらは、木の幹の分かりやすいところにいた。

 大あごがハッキリ「く」の字型に湾曲した立派な♂のノコギリクワガタ。通称スイギュウ。7cmぐらいある。

 ちなみに小型で湾曲していない大あごをもつ♂はワリバシという。

 そして、頭部の出っ張りが非常にカッコイイ、これまた7cmはありそうなミヤマクワガタ。

 二人とも立派で思わず見惚れてしまう。

 エサ場の取り合いで睨み合っている。しばし、有喜とそのケンカを見守ることにする。

 両者同時に仕掛けた!カリッカリッと硬いモノを挟む音が聞こえる。スイギュウが頭を低くし、ミヤマの身体の下に大あごをねじ込んで挟み、上体を起こす。投げ飛ばされまいと、必死で木にしがみ付くミヤマ。スイギュウはそれを引きはがそうと、さらに上体に力を入れる。ミヤマもしがみ付く力を強め、反撃の機会をうかがっている。挟み直そうと体制を変えた瞬間、ミヤマが反撃に出る。そのままの体勢で頭を下げて胸部を挟み、今度はミヤマが優勢となる。スイギュウのボディが木から引きはがされ、持ち上げられてしまう。そのまま、


 ポイッ!


 投げ飛ばされた。

 木から落ちる。

 急いで捕獲。

 落ちるとき飛ばなくてよかった。

 虫かごに入れる。

 そして、勝ったミヤマも木から引きはがし虫かごへ。

 いいモノを見させてもらった。まるで、テレビやDVDで見る、絵にかいたようなクワガタムシのケンカだった。見ていて熱くなってしまった。

 有喜も興奮している。


「お父さん!凄かったね!」


「おぅ!帰ってお母さんにおしえちゃらなの。」


「うん。お友達にもおしえる!」


「そやの。みんなに自慢しちゃれ!」


「うん!」


 まだ何かいないかと、もう一度樹液の出ているところを見てみる。

 木の割れ目に何かいる!

 よく見てみると、クワガタの♀だ。


「ユーキ!こぉ!」


 指さして、有喜に確認させる。


「ん?どこ?」


「ここ。中、よーと見てん?」


「あ!これヒラタのメス!」


 黒くてツヤツヤ。3cmくらいのヒラタだった。

 木の枝でほじくる。しばらくすると観念したらしく、モソモソと出てきた。


「アイツのお嫁さんやの。」


「うん。交尾するやか?」


「したらいいの。」


 さっきからずっとテンション上がりっぱなしの有喜。


 今日は激しい運動もしたし、早目に寝てくれるといいが…また興奮して寝らんかの?


 気付いたら結構な個所、蚊に食われていた。有喜はというと、思ったほど刺されていなくてホッとする。

 かなりいい虫が取れた。有喜も満足だろう。というか満足してくれ!これ以上山の中を走り回りたくないぞ。お願いだ!言うことを聞いてくれ!という気持ち一杯で、有喜に帰ろうと言ってみた。


「ユーキ。いっぱい取れたき帰ろ?」


「うん!帰っておっきい虫かごに入れる!」


 よかった~…これでやっと暑さから解放される。

 ソロソロと斜面を降りる。

 散々走り回った(速度は歩き並み)ため、足が笑っている。傾斜がきつくて気を緩めると転げ落ちそうだ。有喜は、というと…早く虫かごに移し替えたいらしく、テンションそのままで駆け下りてしまっていた。こうなるのは分かっていたのでキーはその前にわたしてある。エンジンのかけ方も教えてあるので、先に降りてクルマを冷やしていてくれるはず。しかしまぁ…ホント、子供の元気良さには恐れ入った。必死こいて下りていると、エンジンのかかる音がした。


 明日から筋肉痛との戦いだ。というか、既にいろんなところが痛い。

 こんな日に求められでもしたら、腹筋と足が痛くて正常位で腰なんか振れない。もし今日するのならば、上に乗ってしてもらおうと、固く心に誓うユキだった。去年の年末、久しぶりにして、あまりの快感だったので毎日のように狂ったようにやりまくった。その名残なのか、まだまだかなりの頻度でやりまくっているのだ。

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