第48話① ロストバージン…菜桜の場合(昨日の話しは生きていた!)
今、ラブホのベッドの上にいる。
そして…千尋の腕の中だったりする。
25歳にして初体験。
超絶快感でヨガリ声あげまくり!
からの超激痛。
下手するとトラウマにもなりかねない程の痛さで、それはもう大変だった。
でも!
嬉しくて嬉しくて…最高だ!
絶賛幸せ噛みしめ中。
どげな経緯でラブホ?
それは…
事の発端は正月休み初日。
夕方、回覧板を隣の家に持って行き、帰るところから始まる。
家に入ろうとするタイミングで千尋に会った。
かなり久しぶりだった。
高校卒業以来ぶりではなかっただろうか?
挨拶程度の世間話の中で、夜、千尋の部屋で家飲みしようというコトになる。
その時はまだ恋愛感情など微塵もなく、楽しく飲めたらそれでいい的な軽い気持ちだった。
が、まさかこんなことになろうとは!
アルコールが入るにつれ、おかしな方向にハナシが発展していく。
「オレら、付き合おっか?」
千尋がそんなことを言ってくる。
言われた瞬間、何の冗談?と思った。
酒が入った上での悪フザケだと本気で思っていたのだけど…マジだった。
強引な展開に翻弄され、押し切られるような形でその申し出を了承してしまう。
上手いこと丸め込まれた感がハンパない。が、かといって悪い気はしない。
了承と同時に勢いがつく。
そしてさらに加速する。
キスまで到達するのが早い早い!
そして…
「明日、ここに来るんやろ?そん時はセックス。」
なんですと?
恥かしくてオニのように焦りまくったが、これまた不思議と悪い気はしない。
飲んでいるときの千尋はとても優しくて、終始心地いい雰囲気を提供してくれていた。
だから、悪い気がしなかったのだろう。
失恋の苦痛から脱出できる日も近いかも、と思えた。
ただただ純粋に嬉しい。
ありがとう!千尋!
そして
幸せだ!
というわけで、ラブホ。
彼氏彼女となった次の日。
昨晩(正確には午前様だった)は、ドキドキが凄くてなかなか寝付けなかった。
かなり遅くに寝たものの、社会人の癖というかなんというかで平日と同じような時間に目覚めてしまう。
二度寝しようとも思ったが、昨日の千尋との会話のインパクトが凄すぎて、どうにも思い出してしまう。そうなってくると、とてもじゃないが冷静でいられなくなり、二度寝なんかできやしない。
しばらく布団の中で転がりまくる。
そかし、そう長いことゴロゴロできるわけもなく。
仕方なく起きて朝食をとり、やることやって一段落。
寝不足気味なのか、しばらく頭がボーっとしていたが、徐々に普段通りになってゆく。
正午前。
昨日、千尋が言っていた「今夜は部屋で鍋か焼肉しようや」。
実はものすごく楽しみにしていた。
一緒に食材を買いに行くのも楽しそうやな。
とか、
二人飲みの雰囲気、マッタリでよかったな。
とか、そんなことを考えつつ、
『今晩、鍋か焼肉するんやろ?』
ワクワクしながら送信すると、
『来るならするよ。』
だそうで。
やった!んじゃ、一緒買い物行こう!
と、送信しようとしていたところで、立て続けに、
『菜桜を食った後でね❤️』
って、おい!っちゆーか、あれ生きか?もしかして生きなのか??
思わず赤面し、あからさまに狼狽する。一人でアワアワなり、スマホを落しそうになっていた。
『マジで?』
すぐに返信。
『当然!今日、親は夜しか帰ってこん。何時にする?』
かなり具体的な話、進められていた。
ちょっと待て!そんな!心の準備が!
文字を打つのさえもどかしい。
思わず、
「もしもしっ!」
電話したら、
「お~、菜桜。楽しみやな!で、何時に家くる?」
極めて普段通りなテンションで千尋が出た。
もう、千尋の中では既にすることが決定しているっぽい。
マイッタ。
イヤというよりも、とにかく恥ずかしい。
「ちょー待ってン!もぉスること決定?」
焦りまくり、声が裏返るわ震えるわ。
う~…カッコ悪い。
「え?そのつもりやなかったと?もぉ、ゴムも買ってあるよ?」
そんなことまで!
電話じゃ表情が読めない。
本気なのか冗談なのか全く判断できないから、
「お前!ちょ、今そっち行くき!」
一方的に電話を切った。
昨日のスウェットのまま、ドテラを着て家を飛び出す。
数十秒後。
ピンポ~ン。
玄関のチャイムを鳴らすと、
「は~い。」
笑いながら千尋が出てくる。
「お前っ!」
焦りまくりで相当取り乱し気味。
なのに、千尋は平然としていて、
「まぁ上がんない。」
促してくる。
落ち着き具合になんかものすごく腹が立つものがある。
すすめられるままに家に上がることになってしまう。
このままえっちに突入?突入なのか??
この先の展開を想像してしまっていた。
もしかして千尋の思惑通り?流石にそれは…せめて、する前に風呂ぐらい…じゃないで!
不安なはずなのに、どこか期待してしまっている自分がいる。
そのことに少し、いや、だいぶ驚いた。
恐る恐る部屋に入ると…そっと抱きしめられ、キス。
ファーストキスを済ませているためか、躊躇がなくなっている気がする。
しまった!これじゃ千尋のペースにモロハマりやねぇか!このまんま押し倒される?ついに初体験?
一気に身体が強張った。
実は今、千尋のチ●ポはギンギンに勃起していて菜桜の下腹部、ヘソよりも少し下辺りに意識的に接触させている。違和感で絶対に分かるはずなのだが、緊張のあまり全く気付いてもらえない。菜桜から「こらー!何そげなもん押し当てよるんか!」と怒られる予定だったので、その言い訳まで考えていた。
ツッコみ待ちをしていたのにスカされたカタチになってしまう。イチイチそのことを説明するのも恥ずかしいから、なかったことにした。
でも、よくよく考えてみると菜桜は全く男慣れしていない。しかも、只今絶賛緊張中なので、そんなことにツッコむ心の余裕なんか一切ない。
このことを考慮してなかった。
大失敗である。
気を取り直し、
「さ、脱ごうか?」
悪戯っぽく笑い、スウェットのズボンに手を掛けると、
「…ちょ…。」
身体がピクンと跳ねた。
緊張し過ぎて声にすらなってない。
これは脱がされないかん展開なんか?拒否ったら千尋ガッカリする?世のカップルどもはこげなシチュの時、本番に突入するモノなんか?
考えてみるが、さっぱり分からない。
経験値不足。
というよりも未知の分野だ。
思考が完全に停止した。
千尋の目を見つめ、ただただ立ち尽くしている。
菜桜の様子を見てすぐさま、
「ウソよ、ウソ。」
意地悪そうにニヤケながら解放すると、一気に力が抜ける。
「も~…バカ!でったん身構えたやんか!」
ビミョーに涙目になっていた。
流石に申し訳なくなって、
「焼肉、脂飛んで部屋臭くなるき、鍋にしよ?」
話題を切り替える。
が、しかし、
「…う…うん。」
驚きからまだ立ち直れていない。
しかし、イヤだったのかというと、そうじゃない。
単に、心の準備ができていなかったというか、焦りまくったというか…まぁ、そんな感じ。
不意打ちにビビり、ヘタレてしまったとゆーことで。
安心させるために、
「野菜は畑にあるき、肉やら魚介類やら鍋用スープ買えばいいね。」
夜の話をするものの、
「うん。」
かなり怯えた表情になってしまっており、声も小さい。
ビビったのとは別に、
するの、イヤっちゆー風に取られたやか?そうじゃないでね、ただ恥ずかしかっただけなんよ?
っと、さっきからずっと心の中で言い訳をし続けている。
「心配せんとっちゃ。流石にここではせんよ?昼間っから近所に声聞こえるのもあれやし、しよる途中で家の者が帰ってきて気付かれでもしたらそれこそ立ち直れんやろ?」
優しく言葉をかけてくる。昔から焦っていても余裕があるように振る舞える。そこが千尋のすごいところ。
そうそう。千尋っち、こげあるんよね。
改めて気付かされた。
「うん。」
「だき、ラブホいこ?」
「ん。それならいーよ。」
素直にOKした。
いつもの下品で粗いオイサン言葉じゃなく、ちゃんとした女子言葉になっているコトに気付けていない。
ボチボチ昼飯時だし、腹も減ってきている。
「昼飯、どげんしよっか?何か食いてーもんとかある?」
「ん~…緊張して…何が食べたいか、よー分からん。」
いまだ立ち直れず、真っ赤になって下を向いていると、
「なんか喋り方変わってしもーちょーやん。可愛いなーもぉ。」
ついに気付かれてしまい、茶化され、また抱き締められた。
「もー!」
とりあえず抱きしめられた腕の中でもがく。
抵抗するフリだ。
そしてブータレたフリをする。
すると、またキスされた。
抱きしめ中に良い案を思いつく。
「そーだ!コンビニかスーパーで飯買ってラブホに持ち込もっか?」
「うん。」
これからの予定が決まった。
早速実行だ!
「なら、今から行こうや。服、どげんする?」
「着替えてくる。」
「ん。分かった。じゃオレも着替えちょくき、準備できたらすぐ出て来ぃ。」
「うん。」
菜桜は一旦着替えに戻る。
いつあるか分からない日のために買っておいた勝負下着。
こんな時こそこれで武装しなきゃだ!
外出の準備が整った。
可愛いと思われたいため、かなり気合を入れた。
ヒラヒラフリフリ大増量!
再び千尋の家に行くと、
「おぉ~…可愛いやん!」
「ホントに?ありがと!」
可愛らしく微笑む。
なかなか、爆発しろ!な光景だ。
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