第30話① キャロ(思いつく)
釣れない。
マジで釣れない。
今、思いつく限りのことはやったつもり。
なのに、ブルーギルの悪戯すらない。
魚がいないのか、魚にヤル気がないのか、はたまた単にヘタクソなだけなのか。
原因の一つとして、ブームによる人為的プレッシャーが考えられるが、理由の一つではあるものの、釣れるときは数釣れたりするので、一概にそうとは言い切れない。
何か分からないが、とにかく釣れないのである。
例年だと50本以上釣っているはずだが、今年はまだ10数本。
ここまで釣れてないのは過去に例がない。
受験生なので、釣りに行くペースはかなり落ちている。そのために釣果が落ちるのは、しょうがないコトなのだけれど…それにしてもこの本数はあんまりだ。
釣れなくなり始めた頃、フィネスで辛うじて釣果を上げていた千春。
彼女ですら1カ月以上魚の顔を拝めていない。
釣れないため、多くの人間がフィネスに走り、見破られた感がある。
それほどまでに深刻な事態なのだ。
夏休みも終盤。
外は結構な雨。
雷も鳴っている。
というわけで、桃代とユキは一緒に勉強中。
朝早くから(といっても9時ぐらい)、桃代の部屋で受験勉強をしている。
そろそろ昼も近いため、腹も減ってくる。
「午前の部、ボチボチ終わりにしよっか?」
「そやね。」
「お昼、何しよっか?」
「ん?と言いますと?」
「お昼、一緒食べん?」
「いいと?」
「うん。今日みんな余所行きでおらんきウチ一人だけ。どーせなら一緒に食べたいかな~と。」
「いーね。オレも手伝う。」
二人で台所へと降りてゆく。
「何作ろっか?」
「何ができる?」
冷蔵庫を開ける。
「ん~っと…焼き飯できるね。」
「いーね。」
練り物とかタマネギ、ピーマン、卵、ソーセージ…入れられそうなものは何でもぶち込む。
二人、仲良く並んでちょうどいい大きさに刻む。
途中で、お約束のようにユキがちょっかいをかけてくる。
おもむろに刻むのをやめ、
「いいじゃないですか、奥さ~ん。」
エロDVDのマネをしながら桃代の後ろに回り、抱きつき乳を揉む。
「あっ…ちょ…包丁危ない…」
切ない声が出た!
感じやすいから、いとも簡単にヘナヘナになる。
腰が砕けて座りこんでしまい、
「もぉ…いかんちゃ。」
赤くなりながらも注意する。
と、突然、
ガチャ!
台所の横の勝手口のドアが開き、
「桃ぉ!」
入ってきた菜桜と美咲と渓。
目の前には乳を揉んでいるユキと、揉まれてうずくまっている桃代。
「へ?」
「あ…。」
全く予想してなかった展開に驚き過ぎて変な声を出し、ただただ茫然となって三人の顔を見つめ固まっている。
菜桜は二人の見てはいけない姿を見てしまい、ボソッと一言。
「…っち、お前ら何しよぉん?」
こちらも見事なまでに目が点になり、固まっていた。
この二人が、昼間から本能の赴くまま行為に移るとちょいちょいこんな罰が当たる。
ちょいちょい、というくらいだから勿論これが初めてではない。
ただ、こんな言い方をすると、二人は毎日のようにやりまくっているように思われるがそんなことはなく、とにかく間が悪いのだ。
例えば…。
渓は、コトが終わって裸で抱きあっているところに遭遇した。
環は、ユキが桃代の大事なところを舐めているところに遭遇した。
千春は、ノックしたら部屋の中で慌てまくる音がし、ビミョーな時間待たされ服も髪も乱れきった桃代が出てきた。中には同じように乱れまくったユキがいた。
美咲は、ノックせずに開けようとしたら鍵がかかっていた。中でゴソゴソ音がして真っ赤になった桃代が出てきた。桃代のベッドでは布団が不自然に盛上り、少ししてその中からユキが出てきた。
菜桜に至っては腰を振っている真っ最中で結合部がモロ見えだった。そんな現場に10回近く遭遇した、モッてる女だったりする。
菜桜としても、それはそれはモーレツに気まずい。
思わず謝って、すぐにドアを閉めた。
他にも一人でしていたり、橋の下でしていたりとバリエーションも豊富。
このように、遭遇している回数が一番多い。
あまりにも遭遇するので、桃代から何回もお願いされている。にもかかわらず、小さい頃からの癖で未だにノックせず、いきなりドアを開ける。
そして今日もまた、あと少しで合体!というところまで盛り上がっていたであろう二人に遭遇した、というわけだ。
桃代は今回も、
「もぉ…菜桜…お願いやきノックしてよぉ。」
半泣きでお願いする。
菜桜も流石に強く出ることはできなかったみたいで、
「ごめん…。」
素直に謝った。
何度見られても慣れることはない。
気を取り直せないまま、昼食の用意を再開する。
「みんなご飯食べた?」
恥かしさで目も合わせられないが、とりあえず聞く。
「いや…まだ食っちょらん。」
「一緒食べる?」
「うん。」
気まずさで会話が短く、ぎこちない。
声も小さい。
ユキも間が持たないため、黙々と桃代の手伝いをしている。
今回も立ち直るまでしばらく時間がかかりそうだ。
人数が増えたため具材を追加。
一回で済まそうと、全部フライパンにぶち込んだものの、あまりにも量が多くなり過ぎて、混じらなくなったため、急きょ半分に分けた。
なんとかできる量になったので、これを完成させ、後から来た3人に食べてもらう。
残りを調理し、ユキと食べる。
とりあえず昼食も終わり、洗い物も済んだ。
さっきまでの気まずさも何とか治まり、普段通りバカ話を始めだす。
外はまだ雨が降っていて、雷も鳴っている。
この天気で釣りに行くのは危ないから釣りビジョンでも見て、今後どうしたらいいかを考えることにする。
上手い具合にJB TOP50のトーナメント、檜原湖戦が放映されていた。
このとき、ボートにカメラが同乗しているプロがヒントをくれる。
「魚探にはベイトのワカサギに付いたバスの反応が。水深6mから7mにかけてのハードボトムを1.8gのライトキャロライナリグで丁寧に攻める。すると…」
と、ナレーションが入る。
全員が「!」となった。
「そーいやウチら、キャロっち一回も試したことないよね?」
「キャロかぁー。思いつかんやったね。」
「ホントやね。試してみる価値あるかも!雨止んだら行ってみよ?」
「そやね。」
何をやるかが決定した。
キャロライナリグ。
通称キャロ。
まんま、ウナギやコイを狙うとき使う一本針のブッコミ仕掛けで、作り方は以下のとおり。
リールからの糸にシンカーを通す。シンカーは中通しなら結構何でも使える。キャロ専用のシンカーはあるが、エサ釣り用のナツメ型とか丸型は普通に代用できる。他にはテキサス用のバレットでもよい。
その糸にテキサスリグ用のビーズを通し(無くてもいい)、ヨリモドシ(スナップなしのスイベル)を結ぶ。
ヨリモドシにハリス(リーダー)を結ぶ。長さは通常20cm~1m。状況によって長さを変える。ハリスの強度はリールに巻いてある糸の強度を最大とし、それ以下を使う。
ハリスの先にフックを結び、完成!
キャロライナリグは、
広範囲探るのに効果的…らしい。
シンカーからルアーまでがフリーになり、ノーシンカー状態となるので、よりナチュラルな動きを演出できる。
リグるのがちょっと面倒臭いので、あまりやる人がいないため、スレた魚に効果的なコトがある。
リグの構造上、根掛かりしやすいと思う。オモリとハリが離れているから、引っかかる範囲が広い。テキサスやジグヘッドだと引っ掛かる部分が一カ所なのに対し、キャロは二カ所。オモリが障害物を通過できても、その後からついてくるルアーが引っ掛かる。
リグ全体の自重が重くても、シンカーとルアーが回転しながら飛んでいくことがとてもよくあり、力を打ち消し合うので遠投するのが難しい。
リーダーが長ければ長いほどタラシも長くなり、投げにくい。後ろの草に接触し、ワームのテールがちょん切れたりしやがる。
ワームばかりじゃなく、クランクベイトやシャッドを使うこともある。
軽いシンカーのキャロをライトキャロ。重いシンカーのをヘビキャロという。
といった特徴のあるリグである。
早速桃代のタックルを使い、実際にリグってみる。
専用のシンカーは持ってない。
ありあわせの道具で作るため、1/2オンスのテキサス用バレットシンカーを使う。
リールはミリオネア(リョウガは巻き用に戻した)。16ポンドフロロを巻いてある。
ノーシンカーがリグってあったため、ハリの約30cm上を切り、バレットシンカーを通し、ヨリモドシを結ぶ。
そして切った糸を、そのヨリモドシに結んだらできあがり。
「バスやりだして初めて作ったよね。こっから先がフワフワっちするっちゃろ?なんか釣れそうやね。」
「へ~。こげな感じになるんやね。」
初めてのリグ。
なんかワクワクする。
すぐにでも試したいが、雷が鳴っているので危なくて釣りなんかできない。
大人しく…はないが、テレビの続きを見ながら、釣り方を研究する。
この日は結局雨が止まず、外に出ることができなかった。
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