第12話 ライギョ。

 今日から三年生。

 

 学年は上がったがクラスは変わらない。

 

 変わったことといえば…。

 桃代の誕生日にユキと桃代がちょっと大人の階段を上った。

 進んでいやがっていた。

 それ以来、調子こいてそこまではやるようになった。

 どちらかの親がいないときに部屋に籠り、ちょくちょくなさっている。

 しかしこれは恥ずかしすぎて幼馴染達には話せない。

 

 

 

 3月。

 桃代の誕生日。

 今年はいつものメンバーに舞と涼が加わった。

 王様ゲームという名の電気あんま祭で盛り上がり、参加者全員大いに悶えまくったのは言うまでもない。

 パーティーも終わり、みんな帰る…と見せかけてユキだけが戻ってくる。

 盛り上がっている最中、コソッと二人で逢う約束を交わしていたのだ。

 一旦帰り、アリバイを作る。

 メールして再び家に行く。

 桃代が出迎える。

 そして部屋へ。

 鍵を閉め、いきなり抱き合って、髪をかきあげ…キス。ここまではもはや得意技となっていた。

 そしてベッドへ。

 抱きあい、再びキス。

 舌を絡め、切ない吐息。

 服の上から胸に手を這わせた時点で急に怖くなりヘタレる。

 今のところディープキスまでで精一杯。

 

 バレンタインデー。

 初めてキスをした。

 その数日後、再度キスする機会がやってくる。

 ここで仕掛けたのは桃代。

 ディープキスだった。



「ディープキスっちしてみたいよね。」


 幼馴染女子チームで駄弁っているときそんな話題になった。

 想像してみる。

 口の中に侵入してくる好きな人の舌。または、好きな人に侵入させる自分の舌。

 なんか…考えただけでドキドキする。


 といった話を思い出し、勇気を出して実行してみたのだ。

 ユキは最初こそビックリしていたが、すぐに嬉しい表情になった。


 ディープキスっち…なんとゆーかエロい。


 音と舌の蠢きで強制的にエロエロモードになっていく。というのは勿論あるが、一つになれた感がハンパなく、ものすごく感動するということも分かった。

 それ以来、定番の愛情表現となっている。

 とはいえまだ付き合っていないのだけど。

 

 

 

 というわけで、桃代の部屋の場面に戻る。

 

 只今服の上から胸を揉んでいる状態で、絶賛ヘタレ中。

 躊躇しているユキだったが、せめてえっちまではいけなくてもキスより先の段階までは!と、勇気を振り絞る。

 

 そして…行動に移る。

 

 トレーナーの中に手を入れる素振りを見せるとピクンと身体が反応する。

 一旦止め、顔を見る。

 目線が重なる。

 赤面しながら小さく頷く桃代。

 

 ホントは恥ずかし過ぎるから電気を消したい。

 が、ユキが家に来ていることを家の者に知られているため、消すと即エロいことをやっているのがバレてしまう。

 ここはフルカラーで見られる恥ずかしさを我慢することにした。

 すべすべな肌を感じつつ上の方へ。

 掌が胸に到達する。

 今日はスポーツブラをつけている。

 隙間から浸入させ…探り当てた。

 コリッとした感触。

 鼓動がさらに跳ね上がる。

 その瞬間、身体が小さくピクッ!と波打つ。

 

「んっ…」

 

 声が漏れた。

 顔をしかめ、歯を食いしばり、大きな声が出そうなのを必死で我慢する桃代。

 反応が愛おしくてたまらない。

 思わず強く抱きしめる。

 再度両掌を浸入させ、優しくなでるように揉む。乳首を摘まんで優しく転がすと、何度も何度も身体が波打った。

 声が出そうになるのを必死にこらえ、その度深く呼吸する。

 

 トレーナーをまくり上げる。

 透けるように白い肌。

 身体の左側。わき腹から腰にかけて激しい火傷の痕が痛々しい。


 そして…胸。

 あまりの恥ずかしさに、

 

「ちっぱいで…ごめんね…。」

 

 超絶赤面で謝ると、

 

「ううん、そげなことないよ。」

 

 優しく否定。

 

 淡いピンク色の乳首。

 純粋に美しい。

 その全て。傷痕までもが愛おしいと思った。

 

 舌を這わす。

 身をよじり、歯を食いしばり、声が出そうなのを必死に我慢する。

 

「んっ!」

 

 自然と漏れる声。

 しばらく愛撫が続く。


 もっと先に進みたい。


 ごく自然に下半身へと手が伸びる。

 ジャージなので簡単に侵入できる。

 掌を浸入させると一瞬身体が強張った。

 視線を合わせ、同意を求めると…小さく頷きそっと目を閉じた。

 恐る恐る侵入させる。

 初めて触る女の子の大切な部分。

 これまでの愛撫で有り得ないほど濡れていた。

 とめどなく溢れる愛液は、今なお着ているものを濡らし続けている。あと、ユキの指も。

 学校で悪ふざけしていて偶然触ってしまったいちばん敏感な部分にそっと触れる。

 

「ンあっ!」

 

 堪えきれなかった。

 叫び声にも似た大き目の切ない声が漏れる。

 同時に意思とは無関係に腰が跳ねた。

 穴の方へ指を滑らす。

 中は驚くほど熱い。

 ゆっくりと、さらに奥に指を侵入させる。

 動かすと激しく溢れ出てくる。

 

「痛くない?」

 

「ん。大丈夫…」

 

「見てもいい?」


「ん。」

 

 腰を浮かせ脱がせやすくする。

 あらわになった下半身。

 以前、偶然見てしまった時とは様子が全く違う。

 ぴったりくっついていた二枚のビラビラは少し開き、充血した濃いピンク色の中身が見え、ヒクヒクと蠢いている。

 

 最も敏感な部分にそっと舌を這わす。

 また大きな声が出た。

 思わず口を抑える桃代。

 唇で皮を剥いて強く吸う。

 腰が跳ねる。何度も…何度も。


 声を押し殺すのに必死な桃代。

 歯を食いしばり、苦痛にも似た表情。

 尚も続けると、感極まった表情になり身体を強張らせ、数度跳ねた。

 快感の波がおさまり大きく息を吸う。

 穏やかな顔になり、そして微笑む。

 愛おしい、という言葉だけでは全然足りない。。


 また強く抱きしめた。

 

 

「ありがと。気持ちよかった。今度はウチが口でしちゃーね。」


「ホント?」


 まさかの展開である。

 

「うん。」

 

 ジャージを脱がす。

 尿道口とその周辺がヌルヌルになっていた。

 中途半端に被った皮を押し下げ口に含むとツンとくる特有の匂いがした。

 ユキが目を瞑る。

 歯を立てないよう気を付けて、咥えたまま上下に動かす。

 滑らかじゃなくぎこちないが、愛する人にしてもらっているのがたまらなくいい。

 至福の表情になる。

 経験なんか皆無なので、当然即果てる。

 液体を射出するユキのモノ。

 それを口の中に受け止める。

 愛しい人の体液なので躊躇なく飲み込む。

 

「ありがとね。」


「うん。」

 

 抱き合って…キス。

 

 ここまでしたら本番までいきそうなものだが、やはりヘタレる。

 ナマでやるのが怖いのだ。

 恐らく、ゴムがあったらやっていたのだろうが、残念なことに持ってない。

 買うもの恥かしい。

 なかなかうまく事が運べない。

 泣く泣くここで終わる。

 

 他の幼馴染達には言えない、二人だけの秘密。


 ここまでやっているのに付き合ってない。

 見るからに彼氏と彼女なのにそうじゃない。

 

 こいつらのヘタレはまだまだ続く。

 

 以上が大きな変化。

 




 今回のターゲットはライギョ。

 というわけで、どんな魚かまず説明。


 スズキ目タイワンドジョウ科。

 日本にはカムルチー、タイワンドジョウ、コウタイの3種が生息する。

 筑豊にいるのはカムルチー。中国・朝鮮半島原産の外来種。

 上の3つの中では一番大きくなる種類。1mを越える個体もいる。

 蛇のような模様で魚体は棒状。丸太みたいな感じ。

 貪欲で、カエル、小魚は勿論、水鳥まで食ってしまうこともあるという。

 噛む力がとんでもなく強く、ハリを外す際気を付けないと大けがをする。

 繁殖力が強く、水質汚濁にも強い。

 水草が多い池などが好きだけど、川などでも繁殖できる。

 仔魚は親が守る。

 空気呼吸もできるため、陸上でも長時間生きることができる。

 美味しい魚らしいが寄生虫の中間宿主。生で食べてはいけません!食べるときは熱を加えて!

 淡水魚の中では最大級。釣りの対象魚としてはかなり有名で、専門に狙う人も多い。生きたカエルをエサにして釣ったりルアーで狙ったりする。

 引きが強くなかなか弱らない。

 はっきし言って楽しい。

 イメージ的には気が荒くてダイナミックと思われがちだが、神経質な面もある。

 水草の下とかでボーっと浮いていたりするが、人の気配を感じたら「ガボッ!」と音を立てて潜る。


 とまぁこんな魚。



 コイツがいる!

 近所の陥落に!


 本格的に狙うとなれば専用タックルを用意しなくてはいけない。

 リールはリョウガでイケるが、サオと糸が…。

 ライギョロッドはとにかく強い。ライギョゲームの性質上、藻もろとも大物を引き寄せるパワーが必要だ。バスロッドだとどうしてもパワーが足りない。

 糸はかなり太いPEライン。

 どちらも高い。

 中学生の小遣いでは余裕がないため、バスの仕掛けを流用する。


 ちなみに親父たちは、今のバスロッドと同じ規格のタックルで雷魚も狙っていたらしい。



 ライギョは前の川でもたまに釣れる。

 バスを狙っていたらゲストさまとして来てくれるのだ。

 年に数回出会いがある。


 ちなみに、ゲストさまでいちばんメジャーなのはナマズ。で、次が雷魚。

 あとはコイ、ハス、ウグイ。極たまにヘラブナとかカマツカが釣れたりする。




 というわけで、やってきました!ライギョ池。


 朗におしえてもらったバスを釣った陥落とは別の場所のように見えて、実は水路でつながっていたりする、あの池というか、陥落である。


 真夏はヒシとハス、ホテイアオイが水面を埋め尽くすが、今はまだゴールデンウィーク前。

 水面にポツポツとヒシの葉が顔を出している状態なので、ほぼオープンウォーターだ。よって、少しだけ釣りやすい。

 バス用トップウォータープラグでなんとかなりそう。

 フロッグやペンシルベイト、ポッパーを用意する。



 今日のメンバーはユキ、桃代、海、涼。

 それぞれ思い思いの場所に散る。


 海と涼が遠くでイチャイチャしている。


「あっ!チューした!」


 桃代がユキに報告する。


「オレらもする?」


 ニヤッとしながら桃代に聞く。


「もぉ!外は恥ずかしい!」


 赤くなる。

 でも…。

 結局する。

 海達から見えないようにしゃがんでチュッ!

 負けてない。

 お互い満足げ。

 あんましこーゆーことをしていたら、釣りどころじゃなくなるので泣く泣く中止した。



 釣り開始。


 ユキはじっと水面を観察する。 

 黒い影が浮いていた。


 おった。


 余裕で届くところにいたので、着水音で逃げないよう、その向こうにキャストする。

 波紋が消えるのを待って動かし始める。

 黒い影が反転したのを確認。頭と思っていた方は尻尾だった。

 ルアーの真下につく黒い影。

 じっと見ている。

 リールは巻かず、その場で動かし波紋を立てる。

 するとジワリと間合いを詰めてきて…


 パスッ!


 独特の捕食音とともに上がる飛沫。

 心躍る瞬間だ!

 ルアーが水面から消え、糸が走る。

 一呼吸おいて思い切りアワセる。


 重い!


 藻の中に突進された。

 糸は20ポンドナイロン。リールはリョウガ。

 強引に巻く。

 沖の方で藻の塊がズボッと動く。

 引きはない。

 足場は低いのでそのまま引きずり上げる。

 藻をほぐすと…出てきた。

 60cmをちょっと超えるくらいの小さ目な魚体。

 胴体の太さは大したことない。直径は10cmそこそこだ。


 全員寄ってくる。

 涼は間近で見るのが初めてのようで、


「グロッ!まんま蛇やん、これ。」


 恐る恐る突いたりしている。

 暴れる力が強いため、みんなで押さえつけ、口をこじ開けハリを外す。

 記念撮影して水に返した。


 バシャバシャバシャ!


 尻尾で水をかけられた。




 無事逃がしたので釣り再開。

 お互いが真横にフルキャストして、なおかつ余裕がある程度には離れているから、先程のヒットの影響は出てないようだ。




 桃代がターゲット発見。

 

 今度も何とか届きそう。

 魚の向こう側に投げ、波紋が消えるまで待つ。

 動かした瞬間影が猛ダッシュ!

 一気に、


 パスッ!


 ルアーが消え、糸が走る。

 アワセるとかなりの重量感。

 藻に潜られた。


「食った!重て~!」


 それを強引に引き剥がす。

 ユキのサオより1ランク下のMHなので、リールには余裕があるがサオのパワーがイマイチ足りない。

 強引にリールを巻くと、徐々に藻が千切れ軽くなる。

 モワっと塊が寄ってくる。


 魚は?


 そのまま擦り上げる。

 塊をほぐすと、


 いた!


 小さい。40cmあるかないかの小さなライギョ。

 模様がクッキリしていて明るい色。


「可愛い!若いライギョやね。」


 微笑んで頭を撫でる。

 ルアーが口から出ていたので一人で外せた。

 記念撮影して、


「おっきくなーれ!バイバイ!」


 また水をかけられた。




 この二発で場所が荒れた。

 浮いているライギョが全く見当たらない。

 警戒して沈んでしまったのだ。

 万遍なく扇形に探るが、誰一人ヒットしない。

 こうなると、粘ってもあまり意味が無くなってしまう。

 少し早いが帰ることにした。



 帰り道。


「涼ちゃん、この頃釣れよぉ?」


「ん~、あんましやね。」


「そっか。ルアーっち偽物やき、エサみたいには食わんもんね。で、楽しい?」


「楽しいよ。前よかだいぶん投げきるごとなったし。」


「それならよかった。」


「桃、ホント上手いよね。」


「へへへ。もぉ長いもんね。涼ちゃん上手いよ。たしかはじめてから、そげ経っちょらんよね?」


「そーね。中一からやもんね。だき…ボチボチ二年?そげな感じ。」


「それで、バス何本か釣ったんやろ?ゼッテー素質あると思う!三年やき勉強忙しくなるけど、これからもずっと一緒に釣りしようね!結婚しても。」


「わかった。はよ上手くならないかんね。」


「今の感じで大丈夫。あとはタイミングやき、行きよけばそのうち釣れる!それにしてもウチ、今日は涼ちゃんに釣ってもらいたかったよ。」


 駄弁りながら歩く休日の夕方。

 また一つ楽しい思い出が増えた。



 数年前始まった土地の整備。

 陥落が次々と埋め立てられていく。

 既にメジャーな池が数カ所消失した。

 近い未来、ライギョはどうなってしまうのかな?


 どうか環境の変化でいなくなってしまいませんように。

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