第10話 冬バス
寒くなってきた。
で、釣りはオフシーズン?
まさか!
コタツでミカンもいいけれど、冬こそデカバスのシーズンじゃありませんか!
この時期頑張らないでどーすんの?
ワームをついばみ千切っていくブルーギルや、お子様バスは水温低下でお休み。
体力が無いため動けない。
んじゃデカバスは?
ヤツらは体力があるので低水温でも活発に捕食してまわる。
産卵を控えているのでとにかく太い!
幅もあり、ヘラブナもビックリな体高だ。
釣れてくるのはほぼ40upで1kgを軽~く超える。
そんな魚に出会うため、この日も寒さを我慢してフィールドへ!
保温効果の高い素材の服を着て、その上に長そでのシャツ、トレーナー。
ネックウォーマー、ニット帽、分厚い靴下二枚重ね。
防寒着の上下(親のお下がり)で完全武装。
パンパンの重装備で夢を求めて、さぁ!出撃!!
今日のパートナーは桃代のみ。
いわゆるツーショット!
釣りデートですわ~。
肝心なところでお互いがヘタレて気持ちが伝えられず、未だに彼氏彼女じゃないけどね(←はい!ここ重要!)。
選んだのは、夏場より少し下流の水深があり流れの緩やかなエリア。
この辺じゃ有名な越冬場の一つ。
パッと見はただの護岸された川。
だがしかしっ!
底は相当変化に富んでいる。
護岸と水との境には矢板(夏場は水没する)が打込まれていて急深となっており、所々に杭がある。
旧河川跡のブレイク(急に深くなる)。
消波ブロックも入れてある。
根掛かりは多発するけれど、美味しいところだらけなのですよ。
寒さ堪えて実釣開始。
巻きとワーム、どちらが効果的なのか手分けして探っていくことにする。
ちなみにこの冬初の大寒波。
積もりはしなかったが雪が舞った。
今は晴れているけど、しんしんと底冷えがして寒い。
身が切れるような感覚。手袋をしていても手が悴む。
水温は気温より遅れて上昇する。だから夕方前、一番上がった頃がチャンス。
桃代はクランクのゆっくり巻きからスタート。
ディープクランクCB350を矢板に沿って何度も通す。たまに沖へ投げる。障害物に軽くヒットさせ、ヒラをうたせ(=障害物にわざと当て、バランスを崩すテク)リアクションバイトを狙う。
ユキは、3.5gシンカーのテキサスリグ。
ワームはドライブクロー3インチ。
沖の障害物周りを丁寧に探る。
流石に真冬。
ちょっとやそっとじゃ反応しない。
居るけど反応しないのか?
それとも、回遊してきていないのか?
桃代は居ると仮定してルアーをローテーションする。
冬のド定番。メタルバイブをチョイス。
クオンのリアクションボム11g。色はチャートリュース。
食性に訴えても食ってこない魚にリアクション(反射食い)で強制的に口を使わす作戦だ。
深場にルアーをぶん投げる。
糸の動きを見ながら着底を判断。20cmほど底を切るイメージでサオをしゃくる。そして着底。これをひたすら繰り返す。
ユキも頑張っているが、反応はない模様。
ローテーション。
リグごと替えることにした。
i字系ワームのノーシンカーリグ。ジャッカルの名作iシャッド4.8インチ。
フォールスピード(沈降速度)を早くするため、ハリのシャンク(軸)に板オモリを巻く。この時点でもうノーシンカーじゃなくて、ほぼウェイテッドフックだけどね。
障害物の向こうに投げて沈める。
ルアーを舞い上がらせるイメージで、サオを心持早めにスッと上げる。糸を見ながら着底の信号を待つ。
糸が弛み、着底。
リールを巻いて弛みを回収し、またサオを上げる。
これの繰り返し。
頑張ることしばし。
沈黙を破ったのは桃代。
「ん?」
サオに違和感。
よく「雑巾が引っ掛かった感じ」と例えられるバイト。
バイトなのだがイマイチそういう風に認識できない。
念のためアワセを入れる。
モワっとした重量感。
暴れない。
ただ重いだけで、ファイトと呼べるような代物ではない。
一度も抵抗することなく上がってきた。
上げるまでゴミかも?と思っていた。
この時期にしては珍しい、30cm足らずの魚である。
リアクションバイトならではのサイズと釣れ方だ。
いかにも越冬中の魚。
体色が白く、白眼がクッキリしていて、バス持ちすると尻尾を曲げたまま固まっている。
でも。
「やったね!釣れた。この時期の魚は貴重です!遊んでくれてありがと。キミ、白いね~。」
飛び跳ねて大喜び。
小さかろうが、とんでもなく嬉しいのだ。
ハリを外し、頭を撫でてあげる。
記念撮影して、
「またね!バイバイ。おっきくなってまたおいで!」
いつものやり取りが微笑ましい。
この日は頑張ったが、これ一本のみ。
寒さが限界に達し、撤収することにした。
翌日。
再び桃代とユキ。
昼ご飯を済ませ、ガッツリ着込んで桃代を呼びに行く。
「いこーや!」
「うん!」
ユキは今日、スピニングタックルも用意した。
ブラックレーベルSSS6101MLXS+ルビアス2506に糸は6ポンドナイロン。
根があるので潜られないよう、多少強引なファイトをする太糸仕様。
スプリットショットリグ(噛み潰しオモリをルアーの前に着ける)にシャッドシェイプワームをセット。
桃代は少し前、ワーム専用のMHアクションのサオを買った。
ブラックレーベルPF731MHFB 。
5~28gのルアーが扱える、抜き上げ力が強いモデル。これにリョウガ2020をセットする。糸はフロロ20ポンド。
今日はこれ一本のみ。
買ってから魂を込めようと(←そのサオで釣るという意味)頑張ってはいるのだが、未だに釣れてない。釣れない癖がついてしまいそうなので、早く初日を出して安心したいのだ。
リグは3インチドライブクローをセットした10gテキサス。
遠投して広範囲を探る作戦だ。
どちらのリグも底を取り、2~3回ピョンピョン跳ねさせて再度底を取る。
これをひたすら繰り返す。
沈黙を破ったのはユキ。
動かして止め、再度動かした時には食っていた。
食った瞬間が分からない、「居食い」という厄介なバイト。
障害物を越えるときの抵抗のような、僅かな変化をサオ先が捕らえた。
さらに動かすけど、その重さが無くならない。
「ん?」
巻くのをやめ、サオ先に注目しながら数cm上げ、待ってみると…。
グッグッグッ…
サオ先に生命感を感じた。
やっぱバイトやったんやん!飲まれたかも!
青ざめる。
鋭くアワセると一気に走った。
重量感のある強い突っ込み。
サオが大きく弧を描き
ジ―――!
ドラグが滑る。
「つえ~~~!」
「ぅお~!なんかすげぇのきちょーやん!」
少し離れて釣っていた桃代が、サオを放り出し駆寄ってきてファイトの様子を見守る。
根に潜られないよう、強引にリールを巻く。
一旦こっちを向くが、今度は横に走る。
中々往生際が悪い。
スピニングはベイトに比べ仕掛けが細い為、ファイト時間が長引くとかなりの恐怖を感じる。
ビビりつつもサオを立てて必死で耐え、強烈な突っ込みをやり過ごす。
岸から数mまで寄って来ているのは確かだが、姿がまだ見えない。
深場に潜ろうと絶賛抵抗中なのである。
掛けてから今まで、魚の歯で糸が擦れる感触が伝わりっぱなしなのがなんとも心臓に悪い。
はよ取込まんと糸がもたん!
焦りが加速する。
ゴリッゴリッ…
「歯が擦れよぉばい!コイツ取れんかも。」
「マジ?飲まれた?」
「多分ね。居食いされて気付かんやったっちゃ。」
「うわ~。そらぁきちーね。」
せっかく足下まで寄ったのに、また沖に向かって突進する。
サオの弾力を活かし、ドラグを滑らせ、どうにかやり過ごす。
そのままの締め付け力で再度巻き取る。
徐々に魚が寄ってくる。
やっと足下。
姿が見える。
デカい!
水面に顔を出させ引き寄せる。
飲まれてしまっていてルアーが見えない。
右手でサオを高く上げ、左手でエラブタの下辺りを腹側から掴み…取った!
すぐさまサオと魚を地面に置く。
「でけー!」
「わ~!すげーね!」
飛び跳ねて喜び、桃代に抱きついた。
顔が思いの外近い位置にあったので
「あ!ゴメン…」
照れマクる。
「いえ…こちらこそ…」
意識した途端、離れてしまう。
まだまだ幼い二人。初々しいのでした。
食性に訴えて食わせた冬の魚は、間違いなくデカい。
測定すると43cm!丸々と肥えている。
立派な魚だ。
これだから冬バスはやめられない。
ハリを外そうとして糸を持ったら、
プチ。
呆気なく切れた。
歯で傷が入り既に限界だったようだ。
「あぶねー!糸、切れたし。」
「ホントやね。ザリザリになっちょーやん。」
「ふぁ~…シビレあがったき!いー魚やね。」
「うん。ウチも頑張らないかん。」
「ヤベ。一本釣って満足しよる。次が釣れんくなるばい。オレもガンバろ。」
口をこじ開けてハリを外し、そっと逃がす。
心に余裕ができたから、今度はベイトタックルで勝負する。
しばらくして桃代にアタリ。
キャストして底を取り、2~3回チョンチョン躍らせ底を取る。弛んだ分を回収し再び躍らせる。
その操作を5回ほど繰り返したところで。
コンッ!
サオ先を弾く感じのハッキリしたアタリ。
すぐさま重量感が乗り、徐々にサオ先が絞り込まれていく。
「食った!」
呟き、一呼吸おいて鋭いアワセ。
サオが弧を描いた。
MHなので、かなり硬いはずなのにバット(サオの根元付近)からぶち曲がっている。
リールはリョウガなので、巻く力はある。
サオを立てて、強引にこちらを向かせる。
横に走ったり底に向かって突っ込んだりして抵抗するが、徐々に寄せられ足下へ。
掛かり具合を確認すると、ど真ん中100点のところにルアーが見える。
これなら大丈夫!
タックルのパワーにまかせ、抜き上げた。
「よいしょー!」
これもいいサイズ。
測定すると41cmで腹もポンポコリン。
「よっしゃ!なかなかいい魚!サオに魂もこもった!」
記念撮影してゆっくり逃がす。
「ありがと!バイバイ!寒いのによく頑張った!」
それからも粘ってみるが流石に難しい。
冬なので暗くなるのも早い。
この日はこれで終わり。
とはいえ大満足な釣果だった。
冬は全く釣れないこともしょっちゅう。
だからこそ、釣れた時の感動がハンパない。
一日一本釣れれば上出来。
二本、三本釣ろうものなら祝杯モン。
とは言え、条件さえ揃えばそれ以上の釣果も期待できる。
太くてコンディションの良い魚に出会える確率が高い冬。
たまには寒さを我慢して、フィールドに繰り出してみるのもいいよね!
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