共通点
数日後の帰り道。今日は講習があるのだけれど、病院にいくから休む。行かなくても休もうとしていたのだが。みんながそれぞれの教室に向かう中、私は一人逆走して学校から出る。温かい風が吹いている。こんな天気のいい日に私はここにいて、みんなは講習なんてとても気分がいい。だからといって、故意でやったりするつもりはないけど。
そして地下鉄に乗り込む。今日は混んでいない。席に座ると目の前の座席にいる人と目が合った。山中涼賀だ、なんでここに? 今は講習中のはずじゃないだろうか。あぁ、思い出した、この人はよく講習やら授業やらをサボっていた。今日もそういうことなんだろう。それにしても帰りが同じになるのは二回目か。
そんなことはどうでもいい。私はまだあのことについて答えを出せていない。今考えるべきことはそれのみだ。やはり曖昧な感情として捉えておくべきだろうか。どれだけ考えても答えなんて出ないのではないだろうか。
あ、そういえば今日は私が好きな歌手のアルバムの発売日だった。先に買いに行こうっと。この時点でさっきの話はとっくに忘れているのであった。
アルバムを買いに行ってから病院行こうと決めて地下鉄を降りる。やっぱり山中君も同じところで降りた。改札を出てエスカレーターを利用して目的地へと向かう。ここまで二人とも同じ方向へと向かって着いたところは私が行こうとしていたところ。結局、目的地が同じならそりゃ行き方も同じよね。私はアルバムのコーナーに向かってそれを手に取る。隣の人も私と同じくそれを手に取る。顔を上げると、山中君だった。
「えーと、山中君。今日は目的が同じだったようだね」
「ん、あぁ、そうだね」
これが初しゃべりである。
「最近、帰りが一緒になることがあるけどなんでだろう?」
「へぇ、そうだったんだ」
こいつ、気づいてなかったのか。気にもしていなかったのか。なんだか、少しでも気にしていた自分が馬鹿みたいだ。
「岩倉さんってもっと大人しくて静かな子かと思ってた」
私は実際うるさい子だと言いたいのか、失礼なやつだな。
「そうみえるんだー、意外だなー」
自分でも驚くほどの棒読み加減。
「岩倉さんはこの歌手好きなの?」
棒読みに加え、笑ってもいなく真顔で会話していることに、私って無愛想なのかと考えていたところに突然の質問は正直驚いた。
「え、あ、うん」
「そっか、じゃあさ、なんか新情報とかあったら教えてよ。そういうの詳しそうだし」
「うん、いいけど」
「ありがと、じゃ俺はさっさと帰ってゲームしたりするからお先ー」
そう言って笑顔でレジに向かう。私とは正反対の人か。これ以上の関わりは今後なさそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます