なんてったってスピードスター!
@faust1349
第1話異世界へ行くならマッハでGO!
俺の名は
今日はマラソンの世界記録を塗り替えるべく選手登録を済ませ、意気揚々と帰路をダッシュで帰っていたはずだった。
しかし、今の俺はなぜか見知らぬ空間にたたずんでいる。夢なら惜しいことこの上ないほどのグンバツの美人さんが俺を見ている事が俺を冷静へと誘う清涼剤だが・・・。
「失礼ですが、お嬢さん私と一緒にランニングフォームについて語りませんか?」
「えっと、すみません。運動は苦手で・・・」
早速振られてしまった・・・鬱だ、走ろう。走りはいい。己の足が大地を蹴る感触が俺を高みへと誘ってくれる。文化的といっていい。
「ちょっと!色んな意味でいきなり走り出そうとしないで!」
「えー、でも俺速く走る事に命賭けてるから」
「そんなこと言わずに!今なら素敵な能力あげますから!」
まるで新聞の勧誘のような物言いに噴出しそうになりながらも俺はこの美人さんの話しを聞く事にした。
「で、どんな速さの能力なんだい?」
「速さ限定ですか・・・」
愚問だ。世の中スピードこそが至高であり俺の嗜好なのだ。
「それで?あるのか?」
「えっと、ありますあります・・・速さに関する能力の項目・・・」
美人さんはそういうと何処からか取り出した。広辞苑を上回る分厚さと図鑑を超えるデカさ、そして博物館に飾ってあったと言っても不自然で無いような年季の感じさせる本がここにある。
「オーケー、ならそれをもらって俺の速さに磨きを掛けようじゃないの」
そういうと彼女と二人して本を地面に置き、あーでもないこーでもないと能力のセッティングを始める。
「俺は幾つ能力をもらえる?」
「ランクによりますがスピードだけならそこまで高くないはずですよ」
「なぜ?」
「スピードは確かに必要ですが戦闘に置いて『決定力』から外れているからかも・・・人気が無いとランクは上がらないのですよ」
美人さんの言葉を受けて俺は頭が痛くなる。車だって飛行機だってスピードは絶対に必要になる。それが戦闘機や戦車になればなおさらだ。
確か昔の戦闘機は速度が時速30キロも離れれば一方的だったそうだ。戦車も無茶苦茶厚い装甲よりも戦場を疾走するほどほどの装甲を備えた戦車に取って代わられた。スピードは無くてはならない存在のはずなのに今までの連中には気付かないのか!
「戦いにスピードは必要ないと思ってるのか?」
「わかりません、ですが向こうの世界は馬や鳥に勝てるほどのスピードを持っていませんから・・・それに魔法陣から魔法陣へ転移する魔法もあるようですのでそのせいかも・・・科学も地球ほどは発達していませんし」
なるほど、彼らは知らないのか。鳥や彼らの魔法よりも速い存在を知らないのだ。
音の壁や光の速度。それを人間の身で体現できる奴がいないゆえに知らない。
移動には馬があればよく、長距離は魔法陣とやらがあればいいという。
取捨選択の果て、彼らは想像の及ばないスピードより筋力や魔法に移行していったのだろう。
戦車が軽くなったように、戦闘機が身をより鋭利なものに変えて行った様に。
しかし、彼らの発達は俺より遥かに古い・・・いや、遅いのだ!
俺はランク1・・・恐らく最低ランクの羅列と化している能力をワクワクしながら選んでいく。
「えっと、まずこの『アクセルスピード』を」
アクセルスピード
ランク1
能力:移動距離に一歩ごと(足踏みを含む)に秒速1メートルを移動速度に加算する
これは掘り出し物だ。秒速1メートル分を足していけば5歩歩いた時点で秒速5メートルになる、加算できる頭打ちは時速何キロか・・・どれだけにしろワクワクする。
次に選ぶのはこれだ。
「次はこの『クイックターン』を頼むよ」
クイックターン
ランク1
能力:スピードの慣性を受けずにターンできる。
この能力は面白いが成長しないという欠点がある。それ故に皆は身体強化なる成長して強化できる感覚強化の魔法をこれで代用するらしい。しかし慣性を受けずにターンできるということは『最高速を維持したまま』ターンできるということだろう?ならこれは貰いだ。
そして一番興奮したのがこれだ。
「次は『ストックスピード』を頼むよ」
ストックスピード
ランク2
能力:現在のスピードを変換して貯蓄できる。変換した数は手の甲に記載する。
スピード限定と言うことで人気がない・・・というより玄人好みのスキルなので使い手を選ぶのだろう。だが俺としては最高速まで溜めたスピードを無駄にせずに済むので有難い。そしてこれらは全てが揃って意味があるのだ。
わざわざスピードのためだけにこれらを覚えてスキルを圧迫するのは馬鹿らしいのだろう。なんでも後天的にスキルを覚えるには訓練か大金を積んで覚えるかのどちらかだ。
スピードの魅力を知らない彼らならもっとこう『ファイア』とか『剣舞』とかのスキルが欲しいだろう。それに剣を振ればおのずと覚えられるだろう剣舞や勉学で学べるファイアとは違い、スピードのスキルはどうやったら覚えられる?ってレベルで放置されてるとか何とか・・・。なんともったいないのだろう。
なんてったってスピードスター! @faust1349
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。なんてったってスピードスター!の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます