1.ネタクスキルを駆使します!
「あのさリオ、とりあえず何かクエストを受けたいんだけど…」
まだリオは顔を紅潮させている。
俺が話しかけても上の空だ。
ビックマグナムってそんなに恥ずかしがる事でも無いと思うんだがな。ただの比喩だし。
「もしかしてリオって結構えっちな娘だったりするの?」
リオはビクッと反応して俺から数メートルほど離れる。
「な、な、何を言ってるんですか!この流れでそんな事を言えるマスターの神経に疑問です!」
「いやだってさ、ビックマグナムの意味をあんなに早く理解できる女の子って中々いないよ?」
「それは、その……」
「そのなに?」
「そんな事よりクエストを受けましょうよ!」
…お、逃げたな。
俺はニヤニヤといやらしい目つきでリオを見つめる。
リオはその意図を知ってか、俺から目を逸らす。
もうこれ以上追い打ちを掛けるのも可哀想だな…
「そうだな。で、どのクエストがいいんだ?」
そう聞くと、リオは俺の膝に乗り、手の上からマウスを操作する。
「これなんかどうです?金鼠ドゥルゴ。初心者でも比較的簡単に倒せて、ゴールドが沢山手に入りますよ」
ゴールドとはもちろんバトルオブハニーの通貨の事だ。
ってか…この体制はまずい…
そんな俺の煩悩に追い打ちを掛けるように、リオは上目遣いで言ってくる。
「それ以外にはゴブリ…」
「ネズミの方でお願いします」
俺は即答する。
「…?わかりました。クエスト開始と…」
リオはそう言ってクエスト開始ボタンをクリックした。
するとリオは、三次元に来た時の様子を逆再生したように、青い光を発しながら消えてしまった。
そしてそれとほぼ同時にノートパソコンから声が聞こえる。
『マスター!』
スクリーンを見ると、大きな平原の中でリオが杖を持って俺に向かって手を振っていた。
おお、可愛いな…
なんだろ、恋愛対象というより…妹?
『とりあえず操作方法だけカンタンに説明しますね』
「おう!」
『まず、画面にコマンドがでてくると思うので、それを打ってください。それが支援魔法です。後は適当に命令を出してくれたらそれに従います』
なるほど…あくまで俺はバックアップだけという事になるのか。
『あ、ドゥルゴが来ましたよ。マスター、後方支援は任せます!』
おお…こういうタイプのソシャゲは初めてだが、中々面白そうだ。
「攻撃を当てたら直ぐに退くんだ…とにかく、死ぬな、それが命令だ!」
俺は某少佐の台詞を気障ったく言ってみる。
しかしリオは、そんな気障ったい言い方は微塵も気にせず、任せとけと言わんばかりの笑顔でこちらに振り向く。
『りょーかいです!』
そして、リオは魔法で剣を創り出すと、敵との間合いを一気に詰める。
『さあ、私の全力を受けるがいい!ソード、フルバースト!』
リオは清々しそうにしながら敵に斬りかかる。
『ギィィンッ!』
魔法で創った剣は儚くも崩れてしまった。
そして、それと共にリオは突き飛ばされてしまう。
それを見たドゥルゴは、ネズミとは思えない巨大な体、そして立派なモノを、少しずつリオの方へと近づけていく。
『きゃっ!ネズミさんやめてください!』
くそ…やらせてたまるか…
その思いに応えるかの様に、画面には沢山のコマンドが次々と表示される。
かなり長く、特に規則性は無い英字の文字列…
でも、今までに数多くのMMOもこなしていた俺なら…
『カチャ!カチャカチャカチャ!カチャカチャ!』
俺はただ、ただリオを守りたいという一心で、必死にコマンドを打ち続ける。
ふとスクリーンに目をやると、次々に壁やら炎やらが大量に現れて、その様子は修羅場と化していた。
ドゥルゴはとっくに倒れ、リオはペタンと地面に座りこんで何が起こっていたのか分からないという感じだ。
暫くすると、クエストクリアという画面に切り替わった。
噂通り、貰えるゴールドはめちゃくちゃ多い。
そして、リオが三次元に召喚され始めた。足、腰、手、と、徐々に人の形を成していく。
頭のてっぺんまで完成すると、リオはこちらをパッと振り向いて、無垢な幼女のような笑顔を見せる。
「すごいです!あんな速さで支援魔法を次々と打つ人は中々いないと思いますよ!」
「…そ、そうか…あれはな、冒険をしている時に身につけた
「へぇー、そんなスキル持っているんですか。やっぱりマスターはすごいです!」
まあ嘘は吐いて無い。
MMORPGの奴らにはちょっと返事が遅れただけで煙たがられるからな…
「あ……」
先ほどまでの様子とは一変し、リオは床を指差して後ずさりをする。
「どうした?」
「ネ…ネズミがいます…」
そうか…リオは今回のクエストでネズミに対してトラウマが出来たのか…
そりゃあんな巨大なモノを見せられたらそうなるわ。
「後方支援は私に任せてください!」
と言いながらリオは壁際に退く。
やばい、めちゃくちゃ可愛いな……
「おう!前線は俺に任せろ!」
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