バトルオブハニー

銀町要

0.プロローグ

俺の名は東川幸太郎ひがしかわこうたろう

高校一年の15歳で、好きなことはもちろん…

ソシャゲをすることだ。

それほど現実に不満があるという訳でも無いが、何故かソシャゲにのめり込んでしまう。

ログインボーナスとかゲリラクエストとか言われている呪縛魔法に、俺はまんまと引っ掛かってしまったようだ…

そして明日、かなり前から巷で話題になっていた、『バトルオブハニー』のサービス開始日だ。

このバトルオブハニー、オレンジというSNSのゲームなのだが、なんでも『手に入れたキャラを現実に召喚できる』らしい。

これはもうハーレムを築くしかないと、俺は思う。


◇◆◇◆◇


「これでダウンロードできたのか…」

現在、配信日当日の0時31分。

そう、俺は激戦が繰り広げられるサーバー接続戦争に勝ったのだ。

『はじめる』と書かれた所にカーソルを合わせ、行為前の童貞のような緊張ぶりで左クリックを押す。

少しのロード時間の後、名前を入力する画面に切り替わる。

名前か…これが普通のソシャゲとかだと特に考えないんだけどな…

この名前が女の子キャラからの呼び名となるとな…

『ビックマグナム』…これでいいか。

もうさっきのような童貞ヅラはどこにもない。

俺は下卑た笑みを浮かべながら次へと進む。

次は少し長いロード時間の後、一般的なソシャゲであるようなホーム画面が表示された。

上には左から、ストーリー、対戦、ボックス、ショップ、ガチャ、フレンド、設定。

何のチュートリアルも無いのか…まあソシャゲマスターの俺ならそっちの方が好都合だが。

まあとりあえずやる事は決まってる。

俺はこの日の為に大量の電子マネーをオレンジに入れていたんだ。

今こそこれを一気に行使する時!

俺はガチャ画面へ移動し、キャラクターガチャを選択する。

今まで俺を小馬鹿にしていたリア充共…泣き喚け!

「さあ!俺にマイハニーを!」

『ガチャ…ガチャガチャ』

俺は演出の箱を開ける…

刹那、箱の中から目を閉じざる得ない程の光が漏れ出してくる。

…光が無くなり、改めてスクリーンに目を向ける。

『引いてくれて感謝しよう。俺はアリウス、種族は騎士だ』

…………………

そうか…このゲーム、女もプレイするんだっけ…

「いらねえな…でもまあ、」

『ッッ!まさか俺を売るのではあるまいな…やめてくれ、ビ……ビックマグナム…』

「お前に言われたくねえよ…まあいい、とりあえず保留だ」

俺は改めてガチャ画面へと進む。

そして俺は大きく息を吸い込と、

「改めて…さあ!俺のマイハニー!」

と叫んでガチャを引く…

『ガチャ…ガチャガチャ』

がしかし、出てきたのはやはり男だった。

その次も男…そしてその次も男…言葉を発せなくなったその次も男…!


……俺がガチャを引くだけの作業ロボットになってから80回目…最後の一回だ。

『ガチャ…ガチャ…』

今回はいつもと違うピンク色の箱が出てくる事に気がついた。

ッ!これは…いや、しかしフラグを立ててしまっては…

俺は恐る恐る箱を開ける。

『どうも。私の名前はリオ…って何するんですか!』

俺はノートパソコンに抱きつく。

いやだって、最後の最後で美少女キャラとか嬉しすぎるだろ。

「よし決めた。俺はリオに79体のキャラクターを突っ込んで強化してやる」

『そんなハレンチ……じゃなくてそんな無駄なコト!私の種族は魔術師ですけど、魔術師の中では最弱クラスのリオですよ!』

ハレンチて…可愛いな…そしてエロい。

「そんな事知らん!可愛ければそんなの関係ねえよ」

俺はリオの言う事を無視してボックスへと画面を切り替える。

『マスター…本当にするんですか?』

ビックマグナムって呼んでくれないのか…

でもマスターもいい響きだ。

「ああ、もちろんするよ」

ふとボックスに目をやると、アリウスを筆頭としたメンズ達が必死で喚いているが、そんな事知ったこっちゃない。

俺はリオを強化元に選択し、79体のゴミを強化素材に選択する。

よし、79体も突っ込めばレベル最大まで余裕だろう。

『カチッ』


…………………

一気に空いたキャラボックスには、リオが1人申し訳なさそうな顔をしながらポツンと立っていた。

レベルを確認すると……15!?

『だから言ったのに…私は最弱クラス、最大レベルでさえ15だって…』

そこまでは言ってなかったぞ…だがしかし俺はそんな事でレディに怒る奴じゃない。

「別にいいんだが…それより、今から三次元こっち来れるか?」

『まあ…行けますけど…』

「よし。この召喚ボタンでいいんだよな?」

『はい…でもヘンなコトはしないでくださいよ』

「任せとけ!」

俺は息を荒くしながら例の召喚ボタンをクリックする。

すると、俺の目の前に足が現れる。裸足だ。

そして、その足から出る青い光が、段々と人の体を成してゆく。

数秒かかって、ようやく全身が完成した。

すると、途端にリオは翼を無くした鳥のように俺の太ももへと落ちる。

「痛え!」

「あっ!ごめんなさい。初めて二次元から出たので……………って本当に痛いんですか?息遣いがいやらしいです」

「…………いやらしい事を考えたのは本当だが、今のは本当に痛かったぞ」

だってローブ越しとは言えリオの胸が俺の胸に当たんだもん!

とは言わない。

「そうですか…ごめんなさい…」

「じゃあ…俺のユーザーネーム読んでみて?」

「ビックマグナム?」

リオは普通に読み上げる。

恥ずかしがらないんだな…いや、そもそもビックマグナムの意味を知ってるのか?

「俺は?」

「…?ビックマグ……って!何言わせるんですか!」

リオはようやく意味が分かったのか、顔を真っ赤にして怒る。

さっきから思ってたが、このソシャゲは本当に良く出来ている。

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