【ドルアーガの塔&ゼビウス&スーパーゼビウス ガンプの謎】

対決半島(前編) 1/3

【クイズ ミレニアムブックス】


 秋穂あきほ県秋穂市、といえば?


 きりたんぽ、と答えた方、不正解。

 きりたんぽは県北の鹿爪かづめ市あたりの郷土料理とされており、県中央に位置する秋穂市にはあまり馴染みがなく、きりたんぽを年に一度も食べないことがある秋穂市民がいるくらいである。


 稲庭うどん、と答えた方、不正解。

 稲庭うどんは県南の湯河ゆがわ市あたりの郷土料理とされているが、きりたんぽに比べると秋穂市でもよく食べられているように思われる。秋穂駅前には稲庭うどんのお店も多い。


 なまはげ、と答えた方、不正解。

 なまはげは秋穂市から少し北西に向かった先、日本海に突き出た女鹿めが半島に生息する神の使いである。時々、秋穂駅の駅ビルに出没することもあるが、それは女鹿半島から出張してきたものである。そういえばきりたんぽのお店のキャラクターと一緒にいたのを見たこともある。県内異文化交流である。


 さて、何が言いたいのかというと。

 特にクイズには意味がない。

 今回のレトロゲームと古本屋は、古めかしい古本屋ミレニアムブックス(所在地:秋穂県秋穂市)を離れ、先述のなまはげの生息地、女鹿半島(とその周辺)で繰り広げられる、無意味かつ小さくゆるい対決です。

 100女鹿メガショック!(一応自主規制)


 一応、ミレニアムブックス、と答えてくれた方、正解。

 そんな人はいませんね。


 はい、いらっしゃいませ。



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【二〇一三年五月七日 一〇時一五分

 秋穂市 ミレニアムブックス】


 ゴールデンウィークも終わり、その直後の平日。

 講義が休講だったため、朝から旭川あさひかわ千秋ちあきがバイトに出てきている。

 よく動くポニーテールを持ち、白い無地のシャツとベージュの細身のカーゴパンツの上に黒いロングのエプロンを装備している。正しい本屋さんスタイルだ。

 店の前の掃除をしようとしているのか、竹箒を片手に店内奥から入口辺りまで出てきたところだ。

 一方、店長の大平おおひら矢留やどめは、店内手前の、ゲームソフトがずらりと並ぶ本棚に囲われたゲームスペースに鎮座する一四型ブラウン管テレビに、プレイステーションを接続しようとしている。昨日届いたネット買取でプレイステーション用ソフトが大量に入ったようで、その動作確認をするところのようだ。

 そんなまだ開店直後の風景の中、平日の午前中だというのに、自動ドアが開く。

 店内に入ってきたのは、黒髪ロング、黒セーラー服の美女。

 高校生……というには少し歳がいっているようだが、年齢不詳な感じだ。

 突然の想定外の来客に、旭川も大平もただぼんやり見つめてしまう。

 そんな店員二人の様子は気にも留めず、手に持っていた巻物をくるくると広げ、仰々しく読み上げる。


「やぁやぁ、大平矢留ぇ」

「え、俺?」

「ゴールデンウィークの先日、忘れもしないここ、ミレニアムブックスでのリアルバウト餓狼対決。貴殿の堂々たる戦ぶり、堂々たる勝利、敵ながらあっぱれであった」

「ああ、あれね……」


 大平は思い当たる節があるようだ。


「しかし! 番組構成上このままおめおめと引き下がっているわけにはいかんのだ」

「なんだよ番組構成って……」

「よってここに格ゲー対決再戦を、女鹿半島で執り行う事、ここに申し込ーむ!」


 一通り読み上げると、セーラー服美女は巻物をくるくると元に巻き戻し、そそくさと店を出て行く。

 旭川は、ハッと気がついた様子で、大平に話しかける。


「今のって、もしかして彩子あやこさんですか!?」

「へえ、よくわかったね。女性同士だとあれくらいすぐわかるもんなのかね」


 大平は感心した様子で答える。

 大平の友人であり、彩子の夫である新屋あらや政仁まさひとは、黒髪ロングウィッグと黒セーラー服を身につけた状態の彩子を初めて見た時、彩子だと認識できなかったそうである。この姿の時は性格も一変しているので、弁解の余地はあるのかもしれない……が、まだ付き合いの浅い旭川にすぐ見破れるほどなのだから、やはり夫としてギルティな気がする。

 ちなみに、この状態の彩子は、読みとしては一緒ではあるが『亜也子あやこ』と呼ばれ、畏れられている。


「そういえば、ゴールデンウィークになにかあったんですか?」

「ま、大したことじゃあないよ。彩子さんと新政あらまさと、珍しく格ゲーで勝負する事になってね。向こう二人も俺も、格ゲー苦手なのにね。もうひどい泥仕合だったよ……」

「それで、なんとかその対決は店長が制した、と」

「そういうこと。最終的には、強攻撃で削るだけ削って、最後弱攻撃でちまちま削る、みたいな、なんとも見苦しい攻防がね……」


 苦虫を噛み潰したような表情の大平。


「はは、苦手なりの本気度が伺えますね……」


 苦笑するしかない旭川である。



 さて、そうこうしているうちに、亜也子がまた自動ドアを開けて入ってくる。そして再び、巻物を広げ読み上げ始める。


「やぁやぁ、大平矢留ぇ。RB餓狼のみで勝負を決すると思ったら大間違いだ。

 まず秋穂港で最初の対決だ。この対決で勝てば秋穂市の地はお前にやろう。しかし負ければ秋穂市は新屋家のものだ。

 次に向かうは湖上こがみ市だ。そこでお前が勝てば湖上市の地はお前にやろう。しかし負ければ湖上市もまた新屋家のものとなる。

 もうわかったであろう大平矢留。女鹿に向かう全ての道中で対決だ。

 これより二日間各地で死闘を繰り広げ、領地を奪い合い、最終的により広い領土を確保した方が勝ちとなる。

 女鹿半島は今日から二日間対決半島となるのだ!!」

「パクッてるじゃん!」


 じっと聞いていた大平がすかさずつっこむ。


「パクってないよ」


 目を逸らしながら亜也子が受ける。


「パクッてるよ! こないだだってこれ再放送してたじゃん!!」

「パクリという名のオマージュだよ」

「認めちゃってるよ!!」


 状況不利と判断したか、巻物を広げたまま外へ逃げていく亜也子。しかし、急ぎすぎたのか、自動ドアが開ききる前に通ろうとして、肩をぶつけて、いてっ、とか言いながら出ていく。


「さっきのやりとり自体もパクリですよね」


 旭川の鋭い視線が大平を射抜く。


「それは、アレが……ナニで……」


 モゴモゴと口ごもる大平。



 そしてまた、自動ドアが開いたかと思うと、黒セーラー服がオカリナを吹きながら入ってくる。きれいな音色が作り出す曲は、『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』の、オカリナのメロディーだ。


「意外な才能ですね……」


 聞きほれてしまう旭川。


「残念ながら、鳥は飛んでこないようだけどな」


 大平は割と本気で残念そうだ。


「やぁやぁ、大平矢留ぇ。

 この対決に負けたならお前には生き地獄を味わってもらおう。

 なに? 格ゲーより苦しい生き地獄があるものかって?」

「言ってないし!」


 ついついつっこむ大平だが、亜也子は気にせず、わざとらしく笑い、続ける。


「うは! うは! うはは!

 あるじゃぁないか、あるじゃぁないか。

 お前はパズルゲームが大嫌いだ、落ち物が大嫌いだ。

 ぷよぷよの流行った中学生時代はずいぶん辛かったそうじゃないか。

 ん? なんだと? 『ぷよぷよ』くらいなら大したことはないだと?

 ぬは! ぬは! ぬはは!

 誰が『ぷよぷよ』だけだと言った? ん? じゃ『ハットリス』もかって?」

「マニアックだよ亜也子さん。せめて『ドクターマリオ』とか……」


 もはや大平の発言は独り言にしかなっていない。


「ぬは! ぬは! ぬはは!

 七種だ。七種のパズルゲームで合宿をしてもらうぞ。

 ん? なんだと逃げるだと?

 うは! うは! うはは!

 逃げられるかなあ? あんな所から。

 なあ旭川千秋、他人事じゃあないんだぞ、お前も一緒に行くんだぞ、穂沢ほざわ湖の山奥に。

 一週間合宿で落ち物パズルをするんだぁ」

「……へ?」


 まさか自分まで標的にされるとは思ってもおらず、開いた口のふさがらない旭川であった。



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【二〇一三年五月七日 一一時二五分

 秋穂市 国道7号線】


「おい、しかし……」


 ワンボックスのワゴンを運転しながら、大平が後部座席に話しかける。ちなみにこのワゴン車は、大平の仕事用の車である。


「新政は当然来るものと思っていたが、何で高清水までいるんだ」


 二列になっている後部座席の後ろの列には新屋夫妻が陣取り(しかも二人揃って睡眠中)、その前の列には旭川と高清水が座っている。高清水は相変わらずのおだんご頭だ。さすがにいつもの中華料理屋エプロンはしていないが。


「ん? 彩子さんに誘われたからねー。女鹿に遊びに行くんでしょ?」

「まあ間違いないっちゃあ間違いないが。というか、言い出しっぺがもうすでに爆睡とはどういうことだ……」


 お気楽な高清水に反し、店を臨時休業させられ、車を出させられ、運転までさせられ、やられ放題な大平なのである。それはうんざりもするだろう。


「それはそれとして、こんないきなり小旅行とか、千秋ちゃんこそ大丈夫だったのか気になるよ」

「いやほらさすがに大学生ですし……。念のため家には、泉さんと遊びに、と言っておいてありますけどね」


 割とこちらも気楽なものである。


「まあ、家の方はそれでいいかもしれんけど、今回のはなんか完全に亜也子さんの暴走に巻き込まれちゃった感じだけど、いいのかな」


 旭川を気遣う大平。自分が巻き込んでいるのでなければ、ゲームが絡んでも一応バイトへの気遣いはできるらしい。


「もちろん! だって、楽しそうじゃないですか! 新屋家を打ち負かしてやりましょうー!」


 何度でもいうが、旭川千秋は素直ないい子である。


「そういえば、店長にも苦手なものがあったなんて……」

「そうな、あれは亜也子さんの言うとおりだ。昔から落ち物パズル系は苦手でね。嫌いじゃないけど、とにかく下手なんだよな。格ゲーもそうだ。だから、合宿なんてご勘弁!」

「でも、勝算なんてあるのー? 向こうが仕掛けてきた戦でしょ」


 割と他人事な高清水は、ニヤニヤといやらしい表情で後部座席から大平の肩をつつく。


「まあ、そこは対決開始時のお楽しみかな」



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【二〇一三年五月七日 一一時四五分

 秋穂市 ポートタワーシーリオン】


「さあ着いた! まずは秋穂市対決だよ!」


 連休後のゆとりある駐車場に飛び降りるやいなや、亜也子がさっそく対決を挑む。

 到着したここは、秋穂港のシンボル、ポートタワーシーリオン。シンボルとは言っても完成したのは二〇年ほど前なので、比較的歴史は浅い。そのふもとは道の駅あきほ港として利用されている。


「元気だなあ……直前まで寝てたじゃない」


 呆れる大平をものともせず、亜也子は準備に取りかかる。


「さあさあ、新政くん、対決のお題よろしくー」

「ほいほい、僕はまだ眠いんだけどな……」


 と、本当に眠そうな新政はブツブツ言いながら、先ほど寝ていた後部座席から、PSoneとソフトを取り出す。


「やはり外での対決になるから、PSoneが無難でしょう、と」

「わ、何ですこの小さいPS、かわいいですね!」


 初めてPSoneに遭遇する旭川は興味津々だ。


「そうさー。モニター付きだから、電源さえ確保できれば外でも遊べちゃう。そして肝心のタイトルが、これだー」


 と、取り出したのは、『KOF'95』。


「ふむ、ここで『ナムコミュージアムvol.3』か。空気読むな」


 大平はまるでわけのわからないことを言い出す。確かにパッケージには学ランの草薙京がいる。


「え? 『KOF』でしょこれ」

「まあ中身を開けて見てみなよ」


 新政がパッケージを開けてみると、確かにそこには『ナムコミュージアムvol.3』のディスクが入っている。


「えええ! なんでー!?」

「出かける前に中身全部入れ替えておいたから」


 大平がしれっととんでもないことを告白する。


「うわ、びっくりするほど卑怯すぎる!」

「突然勝負ふっかけられてるんだから、これくらい許せよ」

「むむむ……。まあでも、この状況では飲むしかないよね。受けて立つ!」


 なかなか切り替えの早い亜也子。無駄に勇ましい。

 一方新政はまだぶつくさ言っている。


「せっかく苦手なの我慢してKOF練習したのになあ……」


 そんな新政を放置して、大平が助手席からある白いモノを取り出す。


「ということで、二人同時プレイではないゲームでも公正に対決するために、もう一台PSoneがありまーす」

「準備良すぎ! 策士だわこの子……」


 さすがにここまで準備しているのは想定の斜め上だったのか、亜也子も驚きを隠せない。

 しかしここで、傍観おだんご娘が茶々を入れる。


「でもさー、対決のお題が大平セレクションになっちゃってるんじゃ、大平さんプレイしたら圧勝じゃん。大平さんはそれでプライドが許されるのかなあ?」

「むむ、それも一理あるな……」


 ゲーマー心理を突いたうまいつっこみである。大平も考えさせられる。


「じゃ、こんなのはどう? きっと大平セレクションだと基本レトロに偏るだろうし、未プレイの人が多いだろうから、大平さんはエキシビションとして最初にプレイして軽くお手本。そんでチーム・ミレニアムブックスは千秋ちゃんしかいなくなっちゃうので、あたしが参戦ということで!」

「エキシビション……悪くない。うん、悪くないな」

「泉さん! がんばりましょー!!」

「ナイス高清水裁き! それで対決だね! ほらほら、新政くんもそれでいいよね」

「そだね、それが最善でしょう!」


 満場一致で高清水案を採択。



「ということで、ここ秋穂港には、目の前にそびえ立つポートタワーシーリオンがあります。タワーつながりで、『ナムコミュージアムvol.3』より、『ドルアーガの塔』対決ー!」


 成り行き上、進行役となってしまった大平だが、ノリノリである。ぱらぱらと両チームから拍手やら歓声が上がる。

 そこそこの盛り上がりに満足して、早速プレイを始める大平。


「操作は簡単。移動と、ボタン押して剣を出す、ボタン離して剣をしまう。盾を出している方向は魔法を防御可能だ」

「おお、本当に簡単ですね」


 特に初めて『ドルアーガ』を見ると思われる旭川は食い入るように画面を見ている。


「で、クリアの条件は、フロア内にあるカギを取って、扉まで到達すれば次の階に進める、という感じだ」

「なるほどー。別に敵は倒さなくてもいいんだね?」


 おそらくこちらは、見たことはあるが未プレイという感じの亜也子から質問が出る。


「倒さなくてもクリアはできるけど、パワーアップアイテムとかが手に入る宝箱があって、その出現条件になってたりするんだわ。階によって条件は違うけどね。その攻略情報を巡って、当時ゲーセンでは活発な情報交換が行われていたわけだ」

「謎解きがメインのアーケードゲームって、なかなか新鮮だったんだろうね」


 新政が謎解きというキーワードを出すと、大平が急に何かを思い出したように叫び出す。


「謎解き……? ブタ子……? ブタ子ーーッッッ!!」

「なんですか突然。ブタ子って……」


 あまりにも突拍子のない発言に焦る旭川。


「ああ、いや、謎解きといえば『魔城伝説Ⅲ』かなって……。主人公のパートナーのブタがブタ子って名前で……。ちょっと頭がパーンってなった。そういえばあのガールフレンドはハイスクールの生徒なのになんでデフォルトの名前が『女子大生』なんだろ」


 そんなよくわからないうんちくを語っている間に、大平は一階をクリア。


「さて、ブタ子は置いておくとして。こんな感じで、一階クリア時の得点勝負としようじゃないか」


 旭川から得点の質問が出る。


「早くクリアするほど得点は高くなるんですね?」

「その通り! 実質タイムトライアルということになるね」


 続けて亜也子からルール面での質問。


「死んでもオッケー?」

「なしだ! 死、即、負け確定だ。双方死なら、ドローで再戦ね」

「いいじゃない、なかなか燃えるねー。じゃ、チーム・新屋家はわたしから出させてもらおうかな。いい? 新政くん」

「一応僕もプレイしたことはあるからね。公正にいこうじゃない」


 にこやかに頷く新政。もともと公正に欠けた勝負をふっかけていた側だということは無かったことになっているようだ。


「チーム・ミレニアムブックスは、旭川千秋!」

「わたしですか、いいでしょう!」


 大平に指名されポンと胸をたたく旭川。


「千秋ちゃん、負けたらメイド」


 と、後ろからいやなプレッシャーをかける高清水。


「なッ!? 持ってきてるんですか!?」

「当然。向こうがセーラー服ならこっちはメイド服でしょうよ」


 亜也子の黒セーラー服に対抗して、ということのようだが、おそらくただ単に旭川にメイド服を着せたいだけである。


「というか、持ってきているという時点で、いかなる手を使ってでも着せるんだろう? 高清水よ。だから旭川くん、もう観念しておいたほうがいいと思うよ」

「えぇー」



「それでは、秋穂市を賭けた『ドルアーガの塔』対決! レディー、セット、ゴゥ!」


 ゲームスタート。出だしは旭川優勢。スタート位置から近かったため、楽々カギを取得する。


「やった、あとは扉に向かうだけー」

「むむむ、急げ急げ! ギルくん足遅すぎじゃない?」


 一方の亜也子は、カギ位置が遠く、苦戦している。


「一階はまだブーツが出てないからねー、遅い遅い。なので純粋に勝負できるかなとね」

「カギの位置とか運じゃん!!」


 新政から非難の声が上がる。


「あっ、あれ? あれれ?」


 調子よく進んでいた旭川のギルが、グリーンスライムにやられたようだ。


「なんでですか!? 剣出してたのにー」

「スライムはねえ、止まっている時じゃないと倒せないんだわ。移動開始していると、いかにこちらが剣を出していてもやられる」

「そうなんですか……。く、悔しい」


 ポニテとともにがくりとうなだれる旭川。


「よーし、チャンスだね!」


 ようやくカギをゲットし、さらにはつるはしまで手に入れた亜也子は、落ち着いて扉に向かう。


「あ、つるはしあるなら、壁の前で止まってボタン押せば、一回までなら壁壊せるよ」

「ほんとだ! ラッキー」


 新政の助言によって壁を壊してショートカットし、楽々扉へ到達する亜也子。


「勝利! 秋穂市は新屋家のものだよ!」

「あっ、泉さん、ちょ、ま、やめてえぇぇぇ……」


 新屋家の勝利が確定した瞬間に、待ってましたとばかりに、紙袋を持った高清水が旭川をお姫様抱っこで抱え、シーリオンへと一直線に駆けてゆく。


「あいつ、どこにあんなパワーがあるってんだ……。ま、とりあえずあれはもう仕方ないな。新政、秋穂市のポイントは?」


 ああそうかと、言われてスマホを取り出し、メモを確認する新政。


「えーと……、905.7平方キロメートルだから、906ポイントだね」

「ええーと、参考までに、これから対決する予定のポイントも教えてくれるか?」


 新政の読み上げた各地のポイントはこうだ。

 湖上市、98ポイント。

 湖東三町、280ポイント。

 三実みさね町、248ポイント。

 九朗潟くろうがた村、170ポイント。

 女鹿市、241ポイント。


「……ん? あれ、もしかして」


 大平も車から電卓を取り出して計算してみる。商売道具なので車にも常備されているのだ。

 秋穂市を除いた合計ポイントは、1037とはじき出されている。


「まじか! この先全勝しないと勝ち目なし!?」



※秋穂県女鹿半島周辺地図はこちらを参照。

https://drive.google.com/file/d/0B_fyJ9r5fEDNcGc0NHhSeE9fS28/view?usp=sharing



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