第3話異世界ライフ!

 

  この建物はまるで秘密基地のような構造になっている。


  隠されたスイッチを押すと壁が回転したり、迷路のような入り組んだ道を進んだり、扉の前で合言葉を言ったり。

 そこは魔法使えや……とも思ったが、魔法という概念が当たり前の世界らしいので、逆にこういう王道な仕掛けの方がバレにくいのかもしれない。


  男心をくすぐらないこともないが、迷いそうだし面倒くさい。


  そんな道程を経て、俺たちは現在50以上LDK、のまさにそのLDKにいる、魔王城にD(ダイニング)はまだしも、K(キッチン)がある事実。

 

  システムキッチン張りの性能があるであろうキッチン(火種は魔法らしいが)でエミがお茶を入れている。

  やはりそこは魔王、キッチン以外にも一つ一つの家具が実に高そうだ、俺が座っている椅子や、テーブルも大層凝っているであろう装飾が施されている。壁や床はさっきの広間と同じものだが、大分、雰囲気が変わった。しかし、それは『金持ってそう』とか、『気取ってやがる』という雰囲気ではなく、なんだか家庭的な臭いがする。多分、一つ一つの家具が使い古され、味わい深くなっているからだと思う。


  エミが、紅茶っぼいものと共に、山盛りのクッキーを机に置いた。


  まさか、魔王城でお茶とお菓子を嗜むことになろうとは、そして魔王にもてなされるとは……。


「どうかしら? このクッキー、私が作ったのだけど?」


「うまい……」


  ーーいや、マジで!!


  なんか俺の好みの味、ドストライクなんだが! この甘さ控えめで、ちょっと固すぎるくらいの食感。なに、魔王って人の好みまで分かるの!?


「よかった~、私の好みの味付けなんだけど、周りからは不評なのよ」


「あ~、確かに大抵のクッキーは、もっと甘くて、しっとりしてんだよな。俺、ああいう王道のクッキーはあんまり好きじゃなくて」


「分かる! あんたなかなかいい味覚してるじゃない!!」


「いや~、好みが合うな!!」


「「あははははっ」」


  ーーなにやってんだろ、俺……。


  そうだよ、こんなことやってる場合じゃない。まずは、情報収集!


「ところでさ、ここって魔王城なんだよな?」


  エミは紅茶っぽいものを啜る。


「城って感じではないわね、ここはダンジョンの最深部だし、魔王の住まうラストダンジョンのラストフロアの隠し部屋と言ったところかしら」


  こうやって見ると本当に、エミが魔王だなんて信じられないな。

  特に今、エミはローブを脱いでいるので同い年くらいの女の子にしか見えない。しかも、ローブの下が真っ白なワンピって……もし倒されたらすごい格好悪いよ、魔王が真っ白なワンピって……可愛いけどな!


「あ~、どうも世界観が掴めないな、文化とか歴史とかも知りたいんだけど、なんか文献とかないのか?」


「あんた適応するの早いわね、異世界に召喚されてまだ2リールくらいしか経ってないわよ。まぁ一応、書庫はあるけれど」


「マジで! 書庫あんのか、やった! 俺の部屋そこでいいか?」


「は!? あんた書庫で暮らすつもり?」


「うん、もといた世界でも俺、書庫で寝泊まりしてたし」


  異世界に来て最も心配だったことがある、それは書庫があるのか、ということだ。

 昔から両親に勉強を強制され、趣味も読書くらいのものだった。

  つまり、俺は書庫にさえいればほとんど動くことなく一日を過ごせたのである。気づいたときには一日中書庫にいた、それこそ眠るのも、毎日だ。書庫は俺の唯一の居場所だったわけだ。


  あれは中3での修学旅行のとき、俺は衝撃的な事実に気がついた……眠れない。

  そう、気づくと俺は、紙とインクの匂いに包まれていないと眠れない体になってしまっていたのである。


  ーー異世界に来て、俺つきまくりだな!




  さっそく書庫に案内してもらった。


  ーーすごい!!


  とにかくすごい! 蔵書数は実家のとそう変わらないが、流石は異世界。それは俺の知らない知識の宝庫だった、だって『魔導書グリモワール』なんて、読みたいよ! 読みたいに決まってるだろ!!

  まずは、この世界についての知識を深めることが先決だろうが、そのあと絶対読んでやる!


「ところでさ……この字って何語?」


  さっきから、ザッと背表紙を眺めているが、驚くべきことに目に映るのはすべて見たこともない文字だ、まぁ考えてみれば、異世界なんだし日本語や英語であるはずもないのだが……。

  でももっと驚くべきは、その見たこともない文字を読めてしまうという事実。


「イリヌス語、クェスト語、シェーン語、フェーレン語、ヘリス語、全部で9言語くらいかしら」


  ーーわ~お、なんも知らない。


「なぜか俺、読めちゃってるんだけど」


「私の魔力を通してここに来たわけでしょ。確証はないけど、召喚されたときに私の日常的に使うような知識が魔力を通してあなたに流入したんじゃないかしら? それこそ言語とか。だってあなた、私と会話できてるわけだし」


  エミは、平然と言うが俺は鼻で笑ってやった。バカめ、そのための前提条件が達成されていないではないか。


「おい、おい、その理論はエミが9つの言語を習得していないと成立しないじゃないか」


  俺の言葉にエミもまた、鼻で笑い返してきた。


「バカね、魔王なんていろんな言語駆使できなきゃ務まらないでしょうが。ここにある本は昔と今の人間と魔人が使ってた言語で書かれてる本しかないけど、それ以外にも人魚族セイレーン語、淫魔族サキュバス語なんかも喋れるのよ!!」


  エミは、慎ましやかな胸を張りながら自慢げに話す。


  ーー嘘だろ……。


  絶対バカだと思ってた……、というかこの世界、人魚族セイレーンやら淫魔族サキュバスもいるのかよ。


「人は見かけによらないとはよく言うけど魔人にも通用するんだな」


「それって、私の見かけがバカってことよね。ねぇ、ブン殴っていいかしら?」


  エミは、笑顔を浮かべてはいるが笑ってない、目が。

  正直、エミのパンチなら痛くなさそうだが、魔王のパンチは痛そうだ、てか死にそうだ。


「誤解だよ、誤解。聞いてくれエミ、一つ一つの所作がさ、そこはかとなくバカっぽいな~って思ってただけなんだ」


  俺は、それはもう真剣な眼差してエミの瞳を見つめながら語ったが、途中からエミの瞳はジトッとしたものに変わった。


「決めたは、歯を食い縛りなさい」


「流石は魔王だな、なんの罪もない善人に暴力を奮おうとは……」


「なんの罪もない善人!? 自分の胸に手を当てて考えてみなさい」


  と、言われたのでやってみた。


  なんだ、俺の罪業は、幾年月(具体的には16年と9ヶ月)を遡り己の罪の数を確かめる。


  ーーどれだ……。


  新学期の直前に、妹を仲良しの友達と同じクラスにするために学校にハッキングしたことか……いや、あれは兄として当たり前だし……。

  それとも母様の携帯のロックを勝手に解いたことか……まぁ、あれはやむおえない事情があったわけだし……。

  それとも……


「あんたどんだけ心当たりがあるのよ」


「……正義のためには、ときに悪に屈することも必要だろ、綺麗事だけじゃ生きていけないんだよ。イテッ」


  デコピンされた。一応触ってみる。血は出てなかった。


「なにを格好よく締めようとしてるのよ、全然格好よくないけど」


  『はぁ~』と飽きれたように溜息を吐くエミ。中指から煙が出てるんだけど……もう一度触ってみた。血は出てなかった。


「グググ……まさか、魔王に己の罪を悟らされるとわな」


「次、変なこと言ったら眼球ピンだから」


  ーーなにそれ怖~い。


  そんなことを満面の笑みで言えちゃうエミも怖い。


「辞めろマジで、争いからはなにも生まれない、だからマジで辞めろ」


「目玉焼きにしてあげるわよ」


  ーーなにそれ怖~い。


  取れちゃうんだ……眼球ピンしたら、目玉取れちゃうんだ……。


  やめだ、やめ、怖すぎ、魔王怖すぎるわ。よし本読も、こういうときは現実逃避に限るよ。

  まずは、この本かな。9つの言語のうちの何語かは解らんが、一応『大陸の歴史』って書いてあるし。


「なにスルーしちゃってくれてんのよ! なんか言いなさいよ!!」


  それから地図を見て、どんな場所があるのか把握しながら、土地ごとに生息している異種族の種類、並びにその特徴を調べる必要があるな。それからそれから……。



    ※     ※     ※



「うぉ~い!! 無視してんじゃないわよ! 眼球ピンするわよ! ねえ……ねぇ! 聞きなさいよ! ねぇ!!」


  エミは、机に向かいながら一心不乱に本を読んでいる雁矢に向かって叫ぶが。


  ーー嘘でしょコイツ……本読んだまま全然動かなくなったわ。


『ペラ ペラ ペラ ペラ ペラ』


  動いてはいるわね。


  はぁ……なんなのよコイツ。

  私の寂しさを紛らわすために召喚されたのよね、多分だけど。

 全然、やる気ないじゃないむっちゃ無視きめてくるんだけど……。


  でも、誰かと話したのは1週間ぶりね、まぁその誰かってミミのことだけど、猫だけど……。

  ということわ!?  私、会話をするのは、

 1、2、3……6、6年ぶり!?

  ちゃんと話せてたかしら……多分、大丈夫よね手紙のやり取りはあったし……まぁ、外交のための公式文書だけれど……。


  時計を見ればちょうど2リール。

  もうこんな時間なのね、どうしようかしら、お昼には遅い時間ね、まぁさっきお菓子食べちゃったし、いっか。


  そう思いながら、晩御飯は少し豪華にしようと決めるのであった。




「ねぇ! カリヤ! カ~リ~ヤ~!! ご飯なんだけど!!」


  ーーなにコイツ! 全く反応しないじゃない。


  時刻は7リール、エミはご飯ができたので雁矢を呼びに書庫に来たのだが……そこには、さきほどと全く変わらない姿で机に向かう雁矢がいたのだ。


『ペラ ペラ ペラ ペラ ペラ』

 

  ペラペラペラペラ、ウッサイわね!!


「本、燃やすわよ!!」


「オイ!  なに言いやがる!!」


「ッ!!」


  突如、叫び出す雁矢。

  もの凄い形相ね、逆にビックリしたわよ。


「ご飯ができたって言ってんのよ! さっきからずーっとね!!」


「え……今何リールだ?」


「7リールよ」


「マジか……」


  てかコイツ何冊読んでんのよ、そこらじゅう本だらけなんだけど。


「まったく、ワザと無視してるんじゃないでしょうね」


「安心しろ、それはない。俺、昔っから一回モードに入っちゃうとなかなか戻ってこなくなるんだよ、夏場とかよく書庫で脱水起こしてぶっ倒れるんだよな~。あはは」


  ーーコイツ、バカね。


  エミは、今日何度目かになる溜息を吐いてから、雁矢の襟首を掴み引きづり連れるのであった。


「今日、会ったばかりの相手にする行いじゃねぇな……」


  ズリズリズリズリと引き摺られる雁矢が発した言葉に、エミはふと思う。


  ーー確かに、コイツとはやけにき気楽に話せるわね。


  確かに、2人を見て今日出会ったばかりだと思う者はいないだろう。

  10年来の付き合い、はたまた幼馴染と思われても不思議ではないくらいに、一日もしないうちに2人は、気の置けない仲になった。



    ※     ※     ※



  エミは、料理も得意だった、尋常じゃないくらいに。

  しかし、そこは異世界だ、もとの世界とは少しだけ食文化が違うようで、主には野菜が中心、肉はほとんどなく、魚も火を通したものしか食卓には並ばなかった。少し以外だったので、『異世界といえば主食は肉で、朝から晩まで水のように酒を飲んでると思ってたわ、勝手な偏見だけど』と言ってみたところ、満更間違いではないらしい、というのも人間、それに魔族の大半はそんな感じの食習慣らしい。

 魔族は、複数のコミュニティを形成し、そのコミュニティごとに集団生活をしているらしい(小さな国がいっぱいあると解釈しよう)。

  そのコミュニティによって文化も変わってくるようだ。エミのような食習慣は寧ろ珍しいという。まぁ、生魚を食べることはほとんどないらしいが。

  しかし、俺にとっては好都合だ。肉ばっか食わされても胃がもたれそうだし、さっき読んだ本によれば、この世界での飲酒年齢制限は『倫理上、問題のない年齢』とあった、15才頃からの飲酒が普通らしい。無理やり飲まされたらやだなと思っていたのだ。(酒を飲まないのは単にエミが飲めないかららしいが。)

  でも、皿にこれでもかとサラダを盛られたときには、もとより低い体温がもっと低くなるなと思いながらモシャモシャ食べた。

  嬉しかったのはチーズがあることだ、ラクレットは絶品だった、熱したチーズをナイフで削ぎ、温野菜にかけて食べる。口に入れた途端、溶けたチーズの塩味と旨味が口の中に広がり、咀嚼すると温野菜の甘さがチーズの塩気をマイルドにする、食べたときにどんな顔をしていたのかは解らないが、エミに笑われたのは少し恥ずかしかったな。

  見たことのない料理も多々あったが、どれも美味しかったので、食事が楽しみになりそうだ。


  ということを、俺は机に向かった思い出していた。


  ーー食いもんのことしか出てこね~。


  俺の前には一冊の紙の束がある、この世界にはノートのようなものがないらしいので、適当な紙を束にしたのだ。何のためかというと、日記を書くためである、やはり日々の習慣はたとえ環境が変わったとしても、変えるべきではないと思うのだ。


  今日はいろいろなことがあった、本当にいろいろなことが、なのに思い起こされるのは食べ物のことばかり。これは多分アレだ、あまりに衝撃的なことが続き過ぎて実感湧かないやつだ。だって、異世界召喚なんて某宝くじで6億円当てるより難しいと思う、多分だが。


  明日、目が覚めたらもとの世界に戻ってるかもしれないな。もし戻ってなくても絶対、ここがどこか思い出すのに少々時間を要するだろう。


  まぁ、今日の日記は食べ物のことだけでいいか……どうせ現実なのかも分からないし、あと1時間だけ本を読んで今日は寝よう。



    ※     ※     ※



「やっちゃった…」


  異世界初日で一徹しちまった……明日、目が覚めたら……みたいなくだりが水の泡じゃねぇか。


  しかし、俺の一徹の成果は無駄ではないぞ、大分この世界のことが掴めてきた。ザッと要約すると、

  まず、この世界には人間族、魔人族、人魚族セイレーン獣人族ワービースト小人族ドワーフ妖精族エルフの7族が多数派として生息している、少数派には淫魔族サキュバスなどが存在するが紹介するとキリがないので割愛しよう。


  次に、この世界にある大陸は、ロンバルディア大陸たった一つらしい(周辺に幾つかの島国はあるらしいが)。

 そんなことあり得ないと思うかもしれないが、これは事実だ。なんとこの世界では大陸移動がない、なんせこの世界は平面だからだ。しかしこの平面説はあくまで仮説らしい、でも本当に平面なのか調査しに行った数多の冒険家のなかで帰ってこられた者はいないというのも事実もあり、大陸移動がないということは地殻が存在しないからだと考えれば、有力な説だと思う。

  この仮説が正しければ、俺は今現在、重力ではなく固定された大地に落下する力だけ立っていることになる。自転と公転はするのだろうか? ずっと窓のない場所にいたのでよく分からなかったが、一応昼夜はあるらしい、地動説ではなく天動説的な考え方を持つべきかもしれない。ちなみに四季はないらしい……少し主題からズレたか。


  最後に、人魔の歴史だがこれが面白い。

  人間と魔族はなんと2000年もの間、戦争を繰り広げてきたという。身体能力は低いが個体数の多い人間と、身体能力は高いが個体数の少ない魔族、両者の力は拮抗していたという。しかしおよそ60年前の魔王(エミより3代前の魔王)が2000年もの間続いた戦争を終わらせた。魔王の名をガリウスという、彼は魔王の中でも類を見ないほどの魔法への才を持っていた、そしてなにを思ったかは知らないがおよそ60年前、彼は自身の命をもってとある魔法を使い大陸全土に結界を張ったのだ。

 その日から両者の戦争はパタリとなくなった、なぜなら彼が張った結界により戦争を行えばたちまち大災害が起こるようになったからだ。彼がなんのためにそんな結界を張ったのかは分からないが、彼の次の代の魔王はこれを受けて7つのダンジョンを作った、なんせ戦争はできずとも少数での戦闘において、結界はその効果を発揮しないからだ。人魔の争いは耐えず、人間は少数部隊を作り魔族を攻め、魔族のお偉いさんはダンジョンの奥に引きこもっているという。

 なぜ魔族が守りに徹しているかというと戦後に人間と魔族のもとに、時期を同じくして謎の賢者たる人物が現れたからだ。

 人間側の賢者はとある儀式を行うと外的危害によって命を落とした生物が復活する魔法を伝え、現在は教会がその技術を独占しているらしい。

 対して、魔族側の賢者はとある儀式を行うと外的危害によって、で命を落とした生物が復活する魔法を伝えた、その特定の場所というのがダンジョンである。

  この違いがあるため、人間側は攻め、魔族側が守るという形におさまったわけである。ちなみに命を落とした者が生き返る場所を"神台"と言うが、そこを破壊すれば復活不可能となるらしく、人間側はダンジョンに潜り"神台"を破壊することを目的としているらしい(未だ成功例はないらしいが)。


  大体、解ったのはこんなところだ。その他にも、種族ごとの生態や、立地なども調べたが今は割愛しよう。

  それと、時間をリール(時)とトル(分)で表し、距離をカロン(km)とミル(cm)で表す。まぁ、会話するときだけ気をつけよう。


  ちょうどそのとき


『コン コン コン』と、扉がノックされこちらの反応を伺わずに扉が開く。


  ーーお前は、お母さんか!


  まぁ、俺の母親はしっかり俺が『どうぞ』と言ってから入ってきたがな。


  当然、入ってきたのはエミだ。エミはこちらを見ると、途端に眉間にシワをよせた。


「あんた寝てないでしょ」


「な……なぜ解る」


  ちなみにベットは、公文書などを書く際に篭ることがあるらしいので、しっかりしつらえてあった。


「目の下、すっごいクマよ」


  エミが手鏡を見せてくれた、確かに目の下に三日月型のクマが2つ。そういえば、こっちの世界に来て鏡を見たのは始めてだ、自分で言うのもなんだが割と目鼻立ちは整ってる方だと思う、面倒で最近切っていないため伸びっぱなしの黒髪、召喚されるって解ってたら切っといたのに。

  まぁ、俺だ。召喚されて体が変わってました、みたいなことはなかった。

  それに服も同じ、制服だ。この服装は流石にどうにかしたいな……あ! そういえば通学用バック向こうの世界に置きっ放しだは、ケータイやら財布も入ってるから置き引きされたらマズイな……。

  まぁ、なんとかしてくれるだろ。誰かが交番に届けていてくれたかもしれんしな。


「本当だ、疲れてんのかな?」


「いや、そりゃそうでしょ。突然、環境が変わって相当疲れてるんじゃない? 少し休んだら?」


「いや、なんか全く眠くないからいいや」


「なら、とりあえず朝ごはん食べる?」


「ありがとう、お母さん」


「あんたみたいな子、産んだ覚えはないけど、この世界に召喚したのは私だし母親ということになるのかしら……」


  どう見ても同い年くらいにしか見えない母親とかイヤだよ。

  ちなみにだが、魔人の寿命は人間と変わらないらしい。女性に年齢を尋ねるという失礼な真似はしないが、エミの見た目からしてどう見ても俺と同い年か一つ下くらいだと思う。


  まぁ、取り敢えず朝飯だ。今日はやってみたいことがある、胸が弾むぜ!

 


 

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