第11話

 それは一日のことだったのか。

 昼を感じないまま、夜を迎えた。やはりそれは、まだ土曜の夜だった。僕は部長を残して起き上がり、ベランダに出た。


 風は強かったが、人肌のように暖かい。月は白く、空は群青色。まだ夜は若い。ふと、僕は右を見下ろす。そこには鳩の死体が落ちていた。

 いつから、ここにあったのか。


 僕は腰を下ろし、その鳩の羽根をつまんで持ち上げた。


 首の辺りが切れていて、そのせいでこと切れたのだと、思われた。

 鳩の死体は冷たくはなかったが、それはおそらく風に吹かれたせいだ。


 羽の一枚いちまいが、するすると解けるように抜けては、風に舞う。


 僕の腕先とベランダという小さな世界で繰り広げられる光景としては、あまりに奇抜だった。


 僕は、はたと、思った。

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