第3話
「君、そのネクタイの色いいね」
「はい、妹がくれました」
「家内もその色が好きでねぇ。いや、今日ね。ラッキーカラーが緑だったし、緑のネクタイをつけた学生が来たら、採用しようって、決めてたんだよ。おめでとう、斉藤君」
椅子にどっぷりとつかった社長に笑いかけて、僕は尋ねた。
「社長は何色が好きなんですか?」
「えっ?私は白が好きだよ。白はいいねぇ、いさぎがいい! 学生は白だよ。白の似合う人間は、うそをつかない」
その社長は今日、白と黒の服を着て、お棺の中で安らかに寝ている。小さな派遣会社の社長だった。
僕は初任給も貰ったばかりで香典分の金を返すことになり、ひどく残念に思った。
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