話其の拾捌/問答の続き、必死の訴え

鬼ヶ島の長と桃太郎の問答が続いている。


「解決をしようという事が思い上がりではないのか?」


桃太郎の意見に対して、長が疑問をぶつけた。


「解決が出来ると思い込むと過信に繋がるのかもしれません。しかし解決を目指す事は当然ではないでしょうか」


「うむ」


「正直に言えば、俺は最初、貴方達、鬼を退治しようと思って、この鬼ヶ島へ向かいました。しかし道中、動物達の話を聞き、人間の方にも非があると思い、一度、話し合いをしたいと思う様になったのです」


「なるほど」


「貴方達、鬼が人間を懲らしめる事を止めなければ、人間との対立は深まる一方です」


「それは、そうだな」


「そうなると、人間は自分達を守る為にと、更に自然を破壊する事にもなり得ます」


「う~む」


「そうなってしまっては、これまで人間を懲らしめる事で自然破壊を抑制していた面もあるのかもしれませんが、それが自然破壊の助長に転じる事もあるのではないかと」


「確かに、そう言われてみると、それも否定は出来ないな」


「勿論、人間の方も、まだまだ行動を改善しなければならないでしょう。それも含めて、お互いに協力をしていく道はないのでしょうか」


「お前の言いたい事は分かった。しかし、それでも人間を信用が出来るかは別の話で、そう簡単に信用をする訳にもいかない」


「確かに、それはそうなのかもしれませんが、それを言ってしまったら、人間も鬼を信用が出来なくなってしまいます」


「では、我々にどうしろと?」


「だから、少しの間、時間を頂けないものか、と。その間、人間を懲らしめる事を止めて頂ければ」


「少しの間とは?」


「十年でも二十年でも構いません」


「うーむ」


長が考え込む。


「このまま、人間を懲らしめ続けても、人間は鬼に対して、より恐怖を感じる様になり、益々、お互いの溝を深めるだけになってしまい、取り返しのつかない事にもなりかねません」


長は何も言い返さずに考え込んでいる。


「そうなる前に関係を修復し、共に協力する事が出来たら、もっと自然を守る事も出来るのではないでしょうか」


長はまだ、黙って考え込んでいた。


少しの間をおいて、再び桃太郎が話を始める。


「先程も言ったけど、俺は最初、鬼を退治する為に此処へ向かった。その道中に動物達の話を聞き、更に此処で貴方方、鬼達と接する事で益々、暴力での解決に疑問を持つ様になりました」


桃太郎が一人、話を続ける。


「同じ様に人間に対しても、暴力での解決は、すべきでないと思うのです。人間も決して、そんなに悪くはありません」


桃太郎が長に対して、更には周囲の鬼達に対しても必死の訴えを続けていた。

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