話其の玖/信用が物事を前進させる

突然の事態を目の当たりにして、呆気に取られている桃太郎と犬。


猿は雉の空からの攻撃に防戦一方だ。


呆気に取られていた桃太郎がそこへ向かう。


そして猿を包み込む様に抱き抱え、猿を庇った。


暫くの間、雉はそんな事はお構いなしと、桃太郎に攻撃を加えていたが、一旦、攻撃を止め、桃太郎に話し掛ける。


「おい、そこの鬼。何故、俺の邪魔をする?」


「その前にお前は何故、猿を攻撃してるんだ?」


桃太郎は猿を庇ったまま、雉に訊き返した。


「そこの猿の野郎が俺の子供達をさらって食べやがったからだ」


桃太郎は猿を地面に下ろして尋ねる。


「本当なのか?」


「さらったのは本当だが、まだ食べてはいない」


猿は素直に答えた。


「本当か!?」


雉が猿の答えにすぐさま反応した。


「ああ、俺の隠れ家に隠してある」


猿は雉に応えた。


「返してやって貰えないか?」


桃太郎が猿に頼んだ。


「お前には助けて貰ったからな。断れないな」


不満そうではあるが、猿は桃太郎の頼みを飲んだ。


「という事で、勘弁してやって貰えないか?」


桃太郎が今度は雉に対して伺いを立てた。


「俺の方は子供達さえ帰って来るのであれば、何の異存もあるはずはない」


雉も桃太郎の提案を飲んだ。


「じゃあ、隠れ家まで案内しておくれ」


桃太郎は猿を促した。


「来るのはお前だけにして貰いたいが」


猿は桃太郎以外が隠れ家まで来る事を嫌がった。


「という訳だから、此処で待ってて貰えるかな?」


桃太郎は犬と雉に尋ねた。


「俺は構わないよ。お前の事を気に入った」


犬がそう答えた。


「俺もお前を信用しよう」


雉は事態の収拾を桃太郎に預けた。


雉の返事を聞いて、猿が隠れ家へと向かう。


「それじゃ、ちょっくら行って来るね」


桃太郎は猿の後を追う様に猿の隠れ家へと向かった。

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