エピソード64/突然の手紙

ゴールデンウィークも終り、俊之としゆき達はもうすぐ1学期の中間テストを迎える事となる。


そして今日はゴールデンウィーク後の最初の日曜日。


由佳ゆかはコンビニでアルバイトをしていた。


俊之や絵美えみも、それぞれアルバイトをしているはずである。


木綿子ゆうこあつしはデートをしているのかもしれない。


由佳はレジのところで客が来るのを待ちながら、今度の中間テストも木綿子には勝てそうもないな、と少し憂鬱な気分になっていた。


そこへ一人の男性客が店に入って来る。


由佳「いらっしゃいませ」


男性客はすぐに雑誌のあるコーナーへ行って、立ち読みを始めた。


幾らもしない内に、今度は俊之が店にやって来る。


由佳「いらっしゃいませ」


俊之「よー。頑張っているじゃん」


由佳「何だ。山ノ井やまのい君か」


俊之「何だ、はないだろ!?」


俊之はそう言いながら、ジュースを数本、手にとって、レジへと向かった。


由佳「わざわざ、からかいに来たの?」


由佳は会計をしながら、俊之に話しかけた。


俊之「いや。たまたま今の現場が近くだったからさ」


由佳「そうなんだ」


俊之「それで使いっぱ、させられているだけ」


由佳「山ノ井君が一番、下っ端なんだ」


俊之「そりゃ、そうだよ。バイトなんて俺だけだし」


由佳「そこの現場は、いつまでなの?」


俊之「もう、今日で終るかな」


由佳「そうなんだ」


俊之「ゴールデンウィーク中は毎日の様に来ていたんだけど、佐藤さとうは居ないしよ」


由佳「仕方がないじゃない。家族旅行に行っていたんだから」


俊之「そんじゃ、頑張れよ」


俊之は会計を済ませると、すぐに店を出て行った。


暫くすると、もう一人の男性客が雑誌と缶コーヒーを持って、レジへとやって来る。


そして由佳が会計をしている時、急にその男性客に話しかけられた。


男性客「さっきの男の子、キミの彼氏?」


由佳「え!?いえ、違います。あれは友達の彼氏で」


由佳はそこまで言って、言うのを止めた。


ただの客に、そんな事を言う必要はないと、途中で気付いたのである。


男性客「そっか。良かった」


由佳は何がなんだか分からなかった。


男性客「今度、俺とドライブに行かない?」


由佳「え!?」


由佳は突然の事で、どう対応したらいいのか分からなくなってしまった。


そんな由佳を見て、男性客は手紙を出して由佳に渡す。


男性客「ラブレターって訳じゃないけど、俺のちょっとした自己紹介を書いておいたからさ、もし、少しでも俺に興味を持てる様だったら、一度、デートをして欲しいんだ」


由佳「えーっと、」


由佳はもう、完全に混乱をしていた。


男性客「また来週に来るから、返事はその時に」


由佳「あ、はい」


そして会計を済ませると、その男性客は店を出て行く。


由佳は客のいなくなった店の中で、呆気に取られてしまった。


そして、その男性客の顔を思い出している。


そんなに、はっきりと覚えている訳ではなかったが、結構、好みのタイプだった気がした。


そう思ったら、由佳は貰った手紙を開けずにはいられなくなる。


手紙の一番、最初に先ず、その男性の名前が書いてあった。


片桐かたぎり じん


それが男の名であった。

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