エピソード65/手紙の中身

絵美えみ「ねぇ、ねぇ。早く見せてよ」


由佳ゆか「待っていなさいよ。今、出すから」


そう言いながら、由佳は鞄から手紙を出した。


そして絵美と木綿子ゆうこが、その手紙を覗き込む。


木綿子「へぇ。湘南大学かー」


絵美「湘南大学って、どれくらいのレベルなの!?」


木綿子「一流大学って訳じゃないけど、まあまあじゃない」


由佳「私達だって、頑張れば行けない事はないよね」


木綿子「相当、頑張らないといけないけどね」


絵美「そうなんだ」


木綿子「それで由佳は、どうする気なの?」


由佳「だから、どうしたらいいのか分からなくて、相談をしてるんじゃん」


木綿子「そうじゃなくて、由佳自身に行く気が少しでもあるのかどうかを訊いているのよ」


由佳「うーん。結構、好みのタイプだった気がするのよね」


絵美「じゃあ、行ってみたら?」


木綿子「そうね。だったら、行ってみるのも一つの手じゃないかな」


由佳「でも、ちょっと怖くない!?」


木綿子「まあね。いきなりドライブに誘われるってのは」


絵美「ドライブか。いいなー」


木綿子「車を持っているってのはポイントが高いよね」


由佳「どうしよう~」


木綿子「手紙を見る限りは、そんなに悪い人には思えないけど」


由佳「実際も、そんなに悪い人って感じはしなかったんだけど」


木綿子「じゃあ、行ってみればいいじゃん」


由佳「うーん。絵美、一緒について来てくれない?」


絵美「え!?」


木綿子「それ、いいじゃん。絵美と山ノ井やまのい君も一緒にダブルデートをすれば」


由佳「そうだね。そうしようかな」


絵美「ちょっと待ってよ。私はまだ、いいって言っていないよ」


木綿子「友達でしょう~」


絵美「だったら、木綿子と大竹おおたけ君でもいいじゃん」


木綿子「私は人見知りをするから。山ノ井君だったら、きっと大丈夫だよ」


絵美「私は大丈夫じゃないよー」


木綿子「あんたは山ノ井君がいれば平気でしょ」


絵美「もー」


木綿子「いいじゃん。ドライブに行けるんだから」


絵美「そうだけどさー」


由佳「じゃあ、決まりだね。友達も一緒ならって言えばいいよね」


絵美「ちょっと待ってよ。とし君はまだ行けるかどうか分からないよ」


由佳「それは絵美と山ノ井君が行ける日に合わせて貰うから」


絵美「う~ん」


由佳「山ノ井君には先に絵美が話をしておいて」


絵美「分かったわよ」


木綿子「これで由佳にも彼氏が出来るって訳だ」


由佳「まだ付き合うとは決めていないって」


木綿子「でも、良さそうな感じじゃん」


由佳「だと、いいけどねー」


木綿子「大学生の彼氏か。ちょっと羨ましいかな」


由佳「何を言っているのよ。あんたには大竹君がいるでしょ」


木綿子「そうだけど。年上の彼氏って、少し憧れがあるんだよね」


絵美「そうだよね」


由佳「絵美、あんたもなの!?」


絵美「私は俊君じゃなかったら、年上じゃないと嫌かも」


由佳「私は年なんて気にした事はないかな」


木綿子「由佳は普段から、同い年の男の子達と仲良くしているからじゃないかな」


由佳「何で?」


木綿子「だって、私達は由佳みたいに男の子達と仲良くはなれないから、逆に客観的になれる部分があってさ」


由佳「それで?」


木綿子「同い年の男の子を見ると、ちょっと頼りないって思ったりはするんだよね」


由佳「へぇ。そうなんだ」


絵美「俊君は頼りになるけど」


木綿子「確かに、山ノ井君は他の男の子よりも、しっかりしていると私も思うわ」


絵美「大竹君はどうなの?」


由佳「そうそう。木綿子は大竹君と上手くいっているの!?」


木綿子「一応ね。でも、頼りなく思う事は時々、あるよ」


絵美「そうなんだ」


由佳「もう、Hはしたの?」


木綿子「まだ何もしていないわよ」


由佳「大竹君って晩熟なんだね」


木綿子「だって、まだ付き合い始めてからは1ヶ月が過ぎたばかりじゃん」


絵美「でも、キスもまだ、なんでしょ!?」


木綿子「そうだけど。今は、それでいいかな」


由佳「そうなんだ」


木綿子「だって、私、今までに付き合ってきた男の子って、ガツガツした感じの人ばかりだったから」


由佳「確かに、木綿子の過去の話を聞くと荒んでいたわよね」


木綿子「その時は、それでも一緒に居てくれるだけで良かったから。 今、思うと、馬鹿な事をしていたなって」


絵美「木綿子って大人だよね」


由佳「私も一度でいいから、そういう台詞を言ってみたいわ」


木綿子「何、馬鹿な事を言っているのよ。あんな思いは、しないに越した事はないわよ」


由佳「そう!?」


木綿子「そうよ。今になって、本当につくづく、そう思うもん」


由佳「私なんて、お父さんが煩いから、男の子と付き合うのも大変なんだよ」


木綿子「それは、それで由佳が気の毒だったりはするんだけどね」


由佳「絵美だけだよね。何の悩みもなく毎日、幸せそうにしていてさ」


絵美「そんな事はないよー」


由佳「じゃあ、どんな悩みがあるのよ?」


絵美「うーん、と。おっぱいが大きくならない事とか」


由佳「確かに、絵美のおっぱいは可愛そうだよね」


絵美「酷ーい」


木綿子「由佳はスタイルがいいからねー」


絵美「せめて、木綿子くらいには、なりたいんだけどなー」


木綿子「せめてってのは何なのよ!?」


絵美「ごめんなさい」


木綿子「まあ、それは、その内になれるわよ」


絵美「そうかな!?」


由佳「そんな事より大竹君、木綿子と付き合う様になってから、此処に来なくなっちゃったわね」


木綿子「由佳や絵美に色々と訊かれるのが嫌みたいよ」


由佳「そうなんだ」


木綿子「やっぱり、異性に異性の話をするのって、抵抗があるんじゃないかな。私だって、山ノ井君がいる時は大竹君の話は余りしたくないもん」


絵美「そうだよね」


由佳「言われてみると、それも、そうね。恋バナは女同士に限るよね」


絵美「男の子も男の子同士で恋バナをするのかな!?」


木綿子「どうなんだろう」


由佳「山ノ井君に訊いてみればいいじゃん」


木綿子「大竹君は私達以外には誰にも話をしていないって言っていたけど」


絵美「俊君も、そうなのかな」


俊之としゆきの家のリビングで、いつもと変わらない、おしゃべりが続く。


もうすぐ1学期の中間テストを迎えるが、勉強などする気もない3人であった。

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