エピソード59/親の体面

木綿子ゆうこ「ただいま」


木綿子が自宅へと帰って来た。


木綿子の母「おかえり」


木綿子の母は夕飯の支度をしていた。


木綿子はそのまま自室へ向かって、着替えを済ませる。


そして着替えを済ませると、リビングに戻ってTVを見始めた。


そこへ台所から木綿子の母が何か、紙切れの様なものを持って、やって来る。


木綿子の母「これ。春休みにでも、みんなで遊んできなさい」


そう言いながら、その紙切れを木綿子に渡す。


紙切れは遊園地のチケットが四枚あった。


木綿子「どうしたの!?これ?」


木綿子の母「お父さんが会社から貰ってきてくれたのよ」


木綿子「そうなんだ」


木綿子の母「あんた、いつも皆にお世話になっているでしょ」


木綿子「そんなに気を遣わなくてもいいと思うけど」


木綿子の母「この間だって由佳ゆかちゃんチで、随分とご馳走になったらしいじゃない」


木綿子「そうだけどさ~」


木綿子の母「ウチじゃ、ご馳走を振舞う訳にも、いかないからね」


木綿子「それは、そうよね」


木綿子の母「だから。ウチだけ何もしないって訳には、いかないし」


木綿子「そっか。ありがとう。でも、1枚、足りないな~」


木綿子の母「え!?山ノ井やまのい君と由佳ちゃんと絵美えみちゃんと、あんたの分だけど」


木綿子「今はメンバーが一人、増えているんだ」


木綿子の母「そうなの!?何ていう子なの?」


木綿子「大竹おおたけ君」


木綿子の母「男の子が増えたんだ」


木綿子「そう」


木綿子の母「じゃあ、あんた、自分の分は自分でなんとかしなさい。アルバイトをしているんだから」


木綿子「やっぱり、そうなるんだ」


そして木綿子の母は台所に戻って、夕飯の支度を続ける。


木綿子は自室へと行って、チケットを鞄に入れてから、携帯で由佳へ電話をかけた。


由佳と話をして、明日、皆で相談をしようという事になる。


そして木綿子は再び、リビングへ戻った。


季節はこれから本格的な春を迎える事になる。


木綿子達にとっては、そんな春の訪れを祝うかの様な、ちょっとした贈り物であった。

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