エピソード13/報告
今日、俊之は絵美の家には上がらずに自宅へと帰る。
そして絵美はというと、普段は先ず自室へと向かうのだが、今日はそのままリビングへ行った。
そしてリビングに居た父と母に向かって、満面の笑みを浮かべ、Vサインをして見せる。
絵美の母「どうしたの!?何か良い事でもあったの?」
絵美「うん。俊君に抱いて貰っちゃった」
絵美の母「あら、まぁ」
絵美「それじゃ、着替えて来るね」
そう言うと、絵美は自室へと行った。
絵美の父「何だ!?昨日の今日じゃないか」
絵美の母「そうね」
絵美の父「まったく」
絵美の母「いいじゃないの」
絵美の父「何がいいんだ!?」
絵美の母「絵美のあの笑顔を見たでしょ」
絵美の父「まあ、いい」
絵美の母「それに、あなた、俊君に全てを任せたんでしょ」
絵美の父「だから、もういいと言ったはずだ」
絵美の母「はい、はい」
そう言うと、絵美の母は逃げる様に台所へ行った。
絵美の父はテレビを見ている。
暫くしてから、絵美がリビングに戻って来た。
そして父に向かって、右の側に座る。
絵美「お母さん、私にも頂戴」
絵美は台所で麦茶を入れていた母に声を掛ける。
絵美の母「お父さんは?」
絵美の父「貰うよ」
絵美の母は三人分の麦茶を持ってリビングに来て、絵美の対面に座った。
そして絵美が話をし始める。
絵美「何から、話をしたらいいのかな~!?」
絵美の母「ふふふ」
絵美「日曜日にさ、俊君、ウチに来たでしょ」
絵美の母「うん」
絵美「それで、お父さんもお母さんも、俊君の事を気に入ってくれたでしょ」
絵美の母「そうね」
絵美の父は黙っていた。
絵美「私、それが、すごく嬉しくて、月曜日に学校で俊君と会った時に、」
絵美の母「うん」
絵美「大好きって言って、抱き着いちゃったんだ」
絵美の母「学校って、学校の何処で?」
絵美「廊下。だから、みんなに見られちゃった」
バツが悪そうに絵美が答えた。
絵美の母「まぁ、この子ったら」
絵美「でね」
絵美の母「うん」
絵美「今日、俊君がHをしようって言ってくれた時にね」
絵美の母「うん」
絵美「私、訊いたんだ」
絵美の母「何を?」
絵美「なんで、Hをする気になったの?って」
絵美の母「そう」
絵美「そうしたらね」
絵美の母「うん」
絵美「月曜日に私にね、大好きって言われた事で決めたんだって」
絵美の母「そうなの!?」
絵美の父「何だ、それは!?」
絵美「私、それまでね」
絵美の母「うん」
絵美「自分の方から俊君に好きって、言った事が無かったんだ」
絵美の母「そう」
絵美「本当はずっと好きだったんだけど」
絵美の母「ふふふ」
絵美「でね」
絵美の母「うん」
絵美「俊君からしたら、初めて私の方から好きって言われた事になるでしょ」
絵美の母「うん」
絵美「それで、俊君ね」
絵美の母「うん」
絵美「やっと、両想いになれたんじゃないかって」
絵美の母「そう」
絵美「本当はずっと両想いだったんだけどね」
絵美の母「ふふふ」
絵美「私、嬉しかったんだ」
絵美の母「何が?」
絵美「俊君、ちゃんと私の事を見ていてくれてたんだと思ったから」
絵美の母「そうね」
絵美「でね、でね」
絵美の母「何?」
絵美「もう一つ、とても嬉しい事があったんだ」
絵美の母「あら、羨ましいわね」
絵美「俊君ね」
絵美の母「うん」
絵美「小学校一年生の時から、私の事を好きだったって言ってくれていてね」
絵美の母「うん」
絵美「私もね」
絵美の母「うん」
絵美「小学校一年生の時から、ずっと俊君の事を好きだったって言ったの」
絵美の母「そうだったの!?」
絵美「うん。でね」
絵美の母「うん」
絵美「俊君ね」
絵美の母「うん」
絵美「私達、ずっとお互いの事を想ってきたんだなって」
絵美の母「ふふふ」
絵美「それでね」
絵美の母「うん」
絵美「これからも、ずっとお互いの事を想っていけそうじゃんって」
絵美の母「そう」
絵美「でね」
絵美の母「うん」
絵美「俊君にプロポーズをされちゃった」
絵美の母「あら、まぁ、俊君もやるわねぇ」
絵美の父「本当なのか!?」
絵美「うん。俊君が大学を卒業したら、結婚をしようって」
絵美の母「まだ大学生になってもいないのにね~」
絵美「そうなの。俊君もお母さんと同じ事を言っていた」
絵美の母「そうなの!?」
絵美「それで二人で笑ったんだ」
絵美の母「ふふふ」
絵美「それでね」
絵美の母「うん」
絵美「俊君ね」
絵美の母「うん」
絵美「時期が来たら、もう一度、ちゃんとプロポーズをしてくれるって」
絵美の母「そう。良かったわね」
絵美「うん」
絵美の父は黙って二人の話を聞いている。
最初、絵美の話を聞いた時は昨日の今日だったので、余りの急展開に、俊之に対する不信感の様なものが生まれ始めていた。
しかし絵美が余りにも嬉しそうに話をするのを目の当たりにして、その不信感の様なものは何処かへ吹っ飛んでしまった様にも感じたのだ。
まだ絵美は母と嬉しそうに話を続けている。
絵美の父はそんな絵美の姿を見て、すごく幸せな感じがした。
壁掛けの扇風機が首を振りながら、勢い良く回っている。
すでに日は暮れて外は暗くなっていたが、まだ暑さが残る、そんな夏の夜だった。
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