エピソード2/二人の始まり

俊之としゆき絵美えみに交際を申し込んでから、二日後の昼休み、絵美が俊之の教室にやって来た。


絵美「山ノ井やまのい君、ちょっといいかな!?」


俊之「ああ」


俊之はクラスメイトに冷やかされながら、絵美と一緒に廊下へ出て行く。


絵美と俊之は二日前と同じ、廊下の柱の脇へ行って向かい合った。


絵美「この間の返事なんだけど、」


俊之「うん」


絵美「これから、よろしくお願いします」


そう言うと、絵美は深々とお辞儀をした。


俊之も絵美に合わせる様に深々とお辞儀をする。


「こちらこそ、よろしくお願いします」


そして安堵の笑顔で絵美を見つめながら言う。


「良かった」


「えへへ」


絵美は照れ笑いを浮かべた。


俊之「なぁ、今日、一緒に帰らない?」


絵美「え!?」


俊之「俺、今日、バイトがねーから」


絵美「山ノ井君、アルバイトをしているの?」


俊之「うん。でも、今日は休みなんだ」


絵美「そうなんだ。だから、山ノ井君、いつも急いで帰っているんだ」


俊之「そそ。バイトがある時は早くバイトへ行って、早くバイトを終わらせないと、それだけ家に帰るのも遅くなっちゃうからね」


絵美「山ノ井君、偉いなー」


俊之「偉くなんかないよ。ウチ、貧乏だからさ、自分の小遣いはバイトをして稼がなきゃならないだけ」


絵美「偉いよー」


俊之「んで、どうなの!?」


絵美「分かった。いいよ」


俊之「それで、ちょっとウチで話をしよう」


絵美「え!?山ノ井君チに行くの!?」


俊之「別に変な事はしねーから」


絵美「えー!?変な事ってなーに?」


俊之「その内、判るよ」


絵美「えーーー!?」


俊之「とにかく、色々と話をしたい事があるんだ」


絵美「うーん。分かった」


俊之「んじゃ、放課後に川村かわむらの教室に行くね」


絵美「うん」


そう言うと、絵美は自分の教室へ戻って行く。


俊之は教室に戻ると、祝福と冷やかしの洪水に呑まれた。

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