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菊千代

高校一年生

一学期

エピソード1/告白

絵美えみ「ねえねえ、山ノ井やまのい君って、誰か好きな女の子って居るの?」


絵美が俊之としゆきに訊いた。


俊之「え!?何だ?急に??」


由佳ゆか「いいじゃん、教えてよー」


由佳も絵美に加勢する。


俊之「教えても何も、何で高校になったら、急にそんな事を訊いてくるんだよ?」


絵美「だって、山ノ井君、中学の時はちょっと、近寄り難い感じだったじゃん」


由佳「高校に入ってから、すごく雰囲気が変わったよね」


絵美「うん。とても優しそうな感じになったよ」


俊之「それと俺が誰を好きかってのは関係があんの?」


絵美「だから、前から訊きたかったんだけど、中学の時は訊き辛かったから~」


俊之「ああ、そういう事ね」


絵美「ねね、誰が好きなの?」


俊之「って、何で俺がそんな事を教えなきゃなんねーの!?」


由佳「いいじゃん、教えてよー」


俊之「んー」


由佳「どうしたの?」


俊之「いや、どうしたもんかと思ってね」


絵美「どうしたもんかって、どういう事?」


俊之「俺は川村かわむらの事が好きなんだけど」


俊之は少し照れ臭そうに、そう答えた。


絵美「えっ!?私!?」


俊之「だって、好きな子に誰が好きかって訊かれて、他の子の名前を言える訳がねーだろ」


絵美は俯いて、黙り込んでしまった。


由佳も俯いてしまう。


絵美は少し照れている様な感じだったが、由佳はちょっと悲しそうだった。


俊之「俺、ずっと、川村の事が好きだったんだよ」


絵美はまだ、俯いたまま黙り込んでいた。


由佳「良かったじゃ~ん。絵美」


由佳は気丈な振る舞いで、絵美に声を掛けた。


俊之「この際だから、俺も腹を括って言うよ。川村、良かったら、俺と付き合ってくれないか?」


絵美はまだ、俯いたまま黙り込んでいる。


俊之「本当はもう少し経ってから、告ろうかと思っていたんだけどね。こうなったら、もう、言うしかねーよな」


絵美「少し、考えさせてくれる?」


絵美は俯いたまま、小さな声で訊いた。


俊之「うん。余り期待をしないで待ってる」


絵美「えっ!?」


絵美は顔を上げて、俊之に目線を移した。


俊之「期待をするとフラれた時、きついからなぁ。それに俺がそうやってダメージを減らす事が出来ると判れば、川村も遠慮無く、結論を出す事が出来るだろ!?」


俊之は絵美に優しい眼差しを向けて言った。


そして少し、間を空けてから続ける。


「それにOKだった場合は喜びが倍増」


俊之はそう言いながら、悪戯な笑顔を作った。


俊之「それじゃ、待ってるから」


そう言うと、俊之は教室に戻って行った。


絵美と由佳は廊下の柱の脇で俊之を見送る。


窓の外では、花を散らしたばかりの桜の葉が、そよ風に揺れていた。

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