テーマ「人形」《移り気な瞳》《人形姫》

第40回 #Twitter300字ss テーマ「人形」


《移り気な瞳》

躊躇いもなく変えてきた。

流行に合わせて。好みに合わせて。

少年にグラマラスなお嬢さん。時には人ではない子もいた。

手に入れては捨てまた手に入れる。

壊れてもいないのにとっかえひっかえすることに、罪悪感がまるでなかったわけじゃない。けれど魅力的なものが次々と目の前に現われるのだ。

捨てるたび供養もしてきたけれど、恨まれるのも呪われるのも元より覚悟の上。

欲しいのはいつかの不幸よりいまの幸せ。退屈よりも新しい世界なのだから。

硝子ケースの向こう側、こちらを見詰める美しい少女を見つけた。

目と目が合えば、それがはじまりの合図。


はじめまして、私の愛しきオーナー様。

あなたはこの硝子の瞳にどんな世界を写すのかしら?



《人形姫》

お姫さんはなんにも出来ないお人形さんだ。

そんな城下の噂を真に受けたのがいけなかった。

「勝手に俺の口調を真似して語るのやめてもらえます?」

「いいじゃない」

だって私は面白くて仕方ないのだ。

男は私をさらいに来た。私は男に銃を突きつけた。

さらわれるのは本位だけれど、自由を奪われたくはない。

「さあ、私をさらいなさい」

噂を流したのは私。人形のような、なんて言ったら美人みたいでおこがましいけど何もできないのは本当。継母に命を狙われているのに城をひとりで抜け出す勇気もない。

「まあ、最初からそのつもりですし」

男は私を抱き寄せ窓から飛んだ。

はじめの一歩。高鳴る鼓動。

このときはじめて命の在処を知った気がした。

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