テーマ「散る」いっぽ

「ずっと好きだった。友達としてじゃないわ」

 知っていた。けれどこんなところで口にされても困ってしまう。ここは恋愛禁止の女子校でなおかつ私は優等生。

「困ったなあ」

 はぐらかすと泣き出しそうなあなた。

「伝えたかっただけなの」

 可愛いあなた。

「私のこと覚えていて」

 桜と共に散り散りになる私たち。定められたさよならに感傷的になれるその愚かさが愛おしい。

 校門から一歩外へ。私は深呼吸をした。これでもう私を縛るものはない。

「好き」

 唐突にその腕を掴んだものだからコサージュが揺れた。あなたと私、お揃いの。

「優等生はもうおしまい」

 散り散りに舞う花びらの中には二枚一緒のものだってあるでしょう。

 手を繋いで。春はもうきている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る