その2 「ゆで卵?」
「臭っ!? 何この臭い!?」
ドアを開けた途端、異臭が私の鼻に突き刺さった。
「入ってきての第一声がそれって酷いよ」
部屋のある自である彼女が頬を膨らませるが、実際臭いんだから仕方ない。アンモニアみたいな刺激臭で、下手したら嗅覚異常を起こしそうだ。
「今度は一体何を作ったの?」
私はハンカチで鼻と口を押さえがら彼女に尋ねた。以前は味噌汁を作ろうとして何か別の何かを錬金術で作り出した彼女だ。何が作られてもおかしくない
「……ゆで卵?」
「ちょっと待ちなさい」
ゆで卵は料理と呼べるほどの手順があるわけではない。単純に火にかけたお湯の中で生卵を熱するだけだ。どうやったらこんな臭いを発するものに仕上げられるんだ。
「腐った卵でも使ったの?」
「いや、さっき買ってきたばかりの卵だよ。お鍋に水を張って卵を入れて火にかけただけなのに、何故か変な臭いがするようになったの」
もはや錬金術ではない。彼女は食べ物を扱うと何かしら変質させる才能があるのだ。残念ながらその才能を活かせる場がこの現代社会になさそうだが。
「それで……食べる? このゆで卵……いたっ、痛いっ」
私はすかさず彼女にデコピンをくらわせた。二連続で。
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