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今日はある村の双子の話をしましょう。
この双子は普通の家庭に生まれました。一卵性双生児の双子です。男女の一卵性双生児はとても珍しく、両親に大切に育てられました。二人はすくすくと成長し、毎日のように森に遊びに行くような元気な子になりました。
姉は好奇心旺盛で弟を引っ張っていくように、弟はそんな姉を止めるようになりました。正反対の二人でしたがとても仲のよい姉弟でした。
ある日、双子が森に遊びに出掛けたときに青い色をした鳥を見かけました。二人はその珍しい鳥を捕まえようと考えました。ですが、鳥は木に止まったかと思えばすぐに飛んでいってしまいました。
「飛んでいっちゃったよ」
「そうね、でもまた見つけれるはずよ」
双子は次の日も森に探しに行きましたが、見つかりませんでした。この日から毎日、森に行きました。川があるほうや低木が多いほう、鳥がよく集まる木など様々なところを探しましたが、見つけることが出来ませんでした。
そう過ごしていると、とうとう待ちに待った年に一度の鳥祭りがやってきました。この村では、年に一度の決まった日にしか鶏肉を食べることが出来なかったので、双子も大いに喜びました。母親に「鶏肉を持ってきて」と頼まれた二人は早速森に行きました。日ごろ行っていたおかげで何処に赤いトサカを持った鳥がいるかを知っていたので、走って向かいます。そこで出会ったのです。この前とは違って真っ赤に輝いている鳥を。「これは捕まえて今日の夕飯にしなくては」と思った二人は、近くにある木に仕掛けを付けることにしました。
十分に放置した後、二人が仕掛けに近づくとなんと赤い鳥が掛かっているのです。よく見ると、先程のものとは少し違うようですが、そんなことはこの双子には関係ありません。
「早く持って帰ろう」
家に帰ってきた二人は気を失っている鳥をまな板に載せました。しばらく見ていると、鳥が目を覚ましました。弟のほうが鳥の体を押さえます。
「これでいい?」
「大丈夫じゃない? ちょっと待ってて取りに行ってくる。大事なもの忘れてきちゃった」
姉は忘れ物をバタバタと取りに行きました。ほんの少し経ったところで戻ってきた姉は、忘れていた物である包丁を構えました。
「お待たせー。これでバッチリ」
このとき鳥が人間のように思えたのです。こんな話をしたら笑われてしまうと姉は思ったのですが、怯えているような様子や何かを言いたげなところをおかしいと感じたのです。そう思ってもやはり鳥は鳥。食べたい気持ちでいっぱいだったので、調理に入ることにしました。
「それじゃあ、やるからしっかり押さえておいてよね。いい?」
「うん、押さえておくよ」
包丁を下ろすとき、鳥が目を瞑りました。それを見て姉はこんなことを言ったのです。「捕まえられてよかったよね」これがどういう意味なのかは本人にも分かりませんでしたが、とくに気にも留めませんでした。
調理し終わって、鳥はおいしそうな料理に姿を変えテーブルに並びました。二人は黙々と食べ始めます。久しぶりの鶏肉は満足のいく物だったようです。
ある日、姉のほうが「森に行ってくる」と言って出掛けていきました。一人になった弟は、いつも一緒なのにどうしてだろう。不思議だな。そう思いました。
夕飯時になっても帰ってこない姉。普段なら、料理がテーブルに並ぶ前から自分の席に座って待っているような人なのにこれはおかしい。それでも彼にはどうしようも出来ません。母親も「そのうち帰ってくるわよ」と言って探しに行きません。少々不満でしたが何も出来ないので、ただ待つことにしました。先に夕飯を食べてしまおう、姉の分も少し食べてしまえと思いながら席について驚きました。いつもとは料理の雰囲気が違うのです。いつもが質素というわけではなく、なんだか少し違うなという感じでした。
「お母さん、今日のご飯はいつもと違うよね?」
そう弟が言うと母親は、笑みを浮かべて言いました。
「今日はいつもと違うのを使っているから、そう感じるんじゃないかな?」
弟は「そっかぁ」と返事をして食べ始めました。見た目どおり食感や味までも初めて食べるものでした。姉も早く帰ってきて食べるべきだと思いました。そしてまた食べたいと思い、母親に聞きました。
「またこれ食べたいな。今度はいつ食べられるの?」
「もう同じものは食べられないわよ。だって一つしかないもの」
そのあと、姉が帰ってくることはなかったのです。
これがある村の双子の話です。青い鳥と赤い鳥に出会った双子。どうでしたか? これが私の知っている村のすべてです。また会えるときがくれば、次は他の話をしましょうか。ではまた会うときまでさようなら。
青い鳥と赤い鳥 福蘭縁寿 @kaname54
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