店と、ひと時
すごい旨い。
まず肉を噛むと肉汁があふれる。
肉は熱々だが、それを和らげる一枚の野菜、そしてパン。
パン自体がやわらかく作ってあり、肉汁をいい感じに吸いおいしさがしみ込む。
たれなどはなく塩こしょうぐらいだろう。食材の優しさがパンで綺麗に包み込まれているようだ。
「これは、まじうまいな。」
「でしょう?このお店をおすすめしたかいがあったわ。」
料理の美味さを感じながら食べ、
そして会計。
一人銀貨1枚。
「…銀貨1枚って高級なやつでも使ってるのか?」
「はい。ここでしか味わえない特別な肉です。」
その言い草は胡散臭いなぁ。店長。
「これでもすごく安いのよ?一般的な半額ぐらいだし。」
へぇ…ということは店長が直で取ってきてたりするのかな。
「いえ、食材調達は店員にいつも取ってきてもらってます。私は調理のほうを担当していますよ。」
店長ェ…。
「それで、食材調達を担ってる店員は今どこに?」
「それならちょうど食材をさっき狩りに出かけましたよ。」
会えたらお礼を言いたかったなぁ。
「そろそろ移動するわよ。」
まだ1時間も居てないけどな。
「そうだな…、ここの料理、おいしかったです。」
「また食べに来ます、ごちそう様でした。」
「またのお越しをお待ちしております」
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「いやぁ…美味しかったなぁ。」
「当たり前でしょ。友人の店だし。」
え、友人の店だったの?なんか失礼なこと喋ってた気が。
まぁ、いっか、さっさと気を取り直して。
「次はどこ行くんだ?」
「そろそろ夕方だから景色のいいところに行こうかと思って。」
おぉ。それはロマンチックな。
「それはどれぐらいで着くんだ?」
「大体トーカの足でぎりぎりかな。ウルマなら行けるでしょ。」
じゃあウルマもとい自分の足では余裕とおっしゃるのかね。
「ウルマなら余裕なんだろうけど。」
「…まぁ、そうだな。」
だって足が早いってのは大体分かったし。
「ひどい。そんな正直に答えなくていいじゃない。」
トーカの自然な涙目の上目遣いはやばい。
というか、ちゃんとちょっと含みをもって喋ったじゃないか。
「そんな顔しても、自分が足が早いってのはこの3日で察したし。」
「確かに足早いけど今から歩いても夜景は見れるし、…夕焼けもいいけど。」
じゃぁこういうときこそ、
「背中、乗ってく?」
「じゃあ…お願いします。」
そう言っておずおずと背中に乗ってきた。
「じゃあ走るぞ?」
「うん、いいよ。」
さて、今回は前みたいに全力では走らず軽く走ることにするか。
今回は走りに慣れたのか話しかけてきた。
「ねぇ、前みたいに全力では走らないの?」
え?走っていいの?
「走っていいよ?私が気絶しない程度なら。」
そうか。じゃあ普通に走ろう。
「気遣いありがとうな。」
「うぇ!?…う、うん。」
トーカの心情は街の中でおんぶで走られるという恥ずかしさがあったせいなのだが。
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