大きい城

一通り家の敷地を確認しつつ全ての鍵をきちんと閉め、出掛けた。


あらためて泊めてもらった家を確認すると、家というには意外に広い屋敷みたいにでかい。そして周りは視界を狭める木がうっそうと生えている。どことなく隠れ家みたいな家だ。


だが、この世界はこれぐらいが都市の中心らへんの平均的な家なのだろうと一人納得する。


まぁ、そんなじっくりゆっくり家の周りなどを眺めていたりしていたからトーカは当然いない。


周りを見て木がぽつぽつとありだだっぴろい草原の先に城は見える。


そう。目の前に見える某ガラスの靴の姫と死体キス王子の舞台となった城の大きさぐらいの、まさに城が建っていた。


「この世界に来て初仕事がこの城の警備って…」


城のほうに近づきながらも一向に入り口が見えないことに少しずつ焦りだす。


「なんか城に近づいてる雰囲気すらないんだけど…なにこの馬鹿でかい城。」


「…馬鹿でかい城で悪かったね。」

前のほうからトーカの声がきこえてくる。


だが前をよく見てもトーカの姿はない。


「後ろだよ!」


肩を押され振り返ると脅ろかしが成功した喜びの笑顔のトーカがいた。


「私の家を出てきたと思って来るのを待ってたのに、結構長い時間見えてこないから…。」


「けっこう歩くのとか遅かったりするの?」


いや、安全を確認しつつのんびりと来ただけだ。

…決して遅くはない。昔…1年前だが全力でやったフルマラソンでは2時間半ジャスト、その前競歩でやってみたときは慣れず6時間かかったが遅くはないはずだ…。


「今回はゆっくり歩いてただけだ。いつもは遅くない。」


トーカはへぇ。とひとつ呟くと提案を出してくる。

「いつもってどれくらい?」


難しい質問をするじゃないか。

そう、競技としては早いがいつもがすべて早いとは限らないからな…。


前の世界の一般人の歩きの1,5倍ぐらいと言ったらいいのだろうか。

いや、この世界では全員が早いのかもしれない。

…考えていても埒が明かないな。言ってしまえば何か返ってくるだろう。


「普通の人の歩きの1.5倍ぐらいだ。」


「それはすごいわね!私なんて走ってそれぐらいなのに。私も早くなれるかなぁ。」


知らん。というより、この世界の奴がどれぐらいかは判らない時点でどうしようもないんだが…まぁ、歩き慣れてる、もしくは走り慣れてる奴じゃなきゃこんなに早くはなれんよ。


「じゃあ競争してみない?城まで」


歩きは確かに疲れるからなぁ。走ったほうが早く着くかもなぁ。


「じゃあやるか。」

「やった!じゃあ城まで…よいドン!」


おぅおぅ、早い。100m約15秒でいけそうな速さだな。

50mぐらいハンデをおいてみたが行けるか?この世界ではまだ走ったことがないからちょっと不安になってきた。


「早くこないの?もう着いちゃうよ~?」


そうだ競争なのだから負けたって大丈夫だ。自分のペースで走ればいいか。

よし、…Ready…GO!


結果


5秒で追いついた。


「え?」


そして追い抜いた。

「うそっ!早すぎ…ってか、おいてかないで!まって~!!」


そして…城に着いたのは約10分後。思ったより意外に近かったかもしれない。


5分後、トーカがやってきた。

「はぁ…はぁ…あんな速さどうやって身体強化してきたの?」

身体強化?なんだか魔法が使えそうな言葉がでてきたな。


ちょっとトーカに尋ねてみるか。

「身体強化って…魔法ってやつか?」


「うん、強化魔法だよ?…ん?魔法…知らないの?」


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