五
わたしはシーツのないベッド──シーツは昨日、レゲエのおじさんの次に洗って干したまま、まだ乾いていない──の端に座り、昨日、彼のポケットから見つけた煙草に火をつけて深々と吸い込み、そして咽せる。
どうやら記憶をなくす以前のわたしには、喫煙の習慣がなかったらしいことがそのことでわかった。
それでももっと煙を吸い込んで、咳こんで涙を流したい気分だ。
背中にいる小さな息をしていない体のことを、極力意識したくなかった。
そうしているうちにやたら悲しくなってきて、気づいたらわたしは小さな鳴き声を漏らしていて、その鳴き声はどうにも止めようがなく次第に大きくなり、わたしは枕に顔を埋め、思いっきり大声を出して泣いた。
女の子の体のいたるところに土がついていた。
女の子の顔には、涙の痕があった。
女の子の服は、強引に引き裂かれていた。
女の子の顔は、恐怖と苦痛に歪んでいた。
女の子の小さな裂け目は、血と精液とで汚されていた。
女の子はまだ小さかった。
本当に、幼かった。
女の子の首は潰され、大きな掌の痕が残っていた。
女の子は目を見開いたまま事切れていた。
わたしは悔しくて、悲しくて、自分の無力さがどうにもたまらなくなって、どこにもぶつけようがない怒りのために頭が真っ暗になって。
他にそうすることもできずに、枕に顔を押しつけてわんわん泣いた。
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