第14話ひと時の安らぎ
黒の砦に帰還したアリスとスレイン、それを出迎えるティラ、シーク、グレンと黒の砦の面々。
それらにまずスレインが話した言葉。
「新しい黒の砦の一員のアリスです。そして僕の妹です。」
その言葉に皆は一様に驚く、そして笑顔を綻ばせる。
「アリスこれからよろしくね」
ティラがまず最初に歓迎の言葉を送る。
「ティラありがとう」
アリスは本当に嬉しそうに笑顔でそれに答える。
それをきっかけに。
「よろしくなアリスの嬢ちゃん」
「これで妹2人ですか、賑やかになりそうです」
グレンとシーク、そして黒の砦の皆がアリスを歓迎する。
「ありがとう皆」
アリスは笑顔でそれに答える。
その数日後、レオンも合流し軽い歓迎会が行われた。
黒の砦始まっての祝いの宴席で大いに盛り上がる。
その場で一番盛り上がったのが、スレイン、シーク、グレン、レオンの飲み比べだった。スレインは断ったが半ば強制的に飲まされ、一番先に地面に突っ伏している。
「もう兄様に無理に飲まさないでください」
「兄さんが急性アルコール中毒になったらどうするの」
2人の妹が男衆を呆れたように責める。
「いや、まさかこんなに弱いとはよ・・・これから盛り上がるところだったんだが」
「ええ、まだ3杯目ですよ」
「大将は力はあるらしいが、酒はダメみてえだな」
男衆は十分に酔が回ってるようで、あっけらかんと笑う。
もう・・・と呆れたように男衆をみてスレインを介護する。
「とりあえず、ここでは風邪ひいちゃう。部屋で寝かせないと」
「そうね」
2人は肩にスレインを掛けて、部屋まで連れて行く。
スレインをベッドに寝かせ部屋の椅子に腰をかける。
ティラはもじもじとしながらアリスを見る。
「どうしたの?」
「うん、トールの山の聞いた事思い出してさ、アリス無茶しすぎ・・・・」
アリスは苦笑する。
「自分でもそう思う」
「兄様が悲しむからこれからは無茶しないでね」
「善処する」
アリスはティラをみて笑う。
「でも、ティラも人の事言えないんじゃない?」
「うっ・・・・」
「私の姿に変えてさ~」
ニヤニヤとアリスは笑う。
「それは悪いと思ってるよ・・・」
「まっ、もういいんだけどね」
アリスはスレインを見て。
「2人の妹に囲まれて、この果報者め」
スレインの顔を指でつつく。
「あっ、ずるい私も」
ティラもそれに混ざる。
そして2人は微笑む。
歓迎会が終わり、次の日の夜作戦会議が始まる。
スレインがトールの山を出発してる間に、シークはサイラス城に赴き。
交渉はすでに終わっていた。シークの報告では、宮廷内はかなり腐っているようだった。王は面会の場には姿を現さず、代表として現れたのが、宰相であり王の従兄弟であるクロノスという人物だった。重臣はシークを嘲笑い、話を真面目に聞いてくれたのがクロノス一人だけという現状にシークは嘆いたそうだ。
「サイラス国はだめかもしれませんね」
シークの言葉が重くのしかかる。
「ですが、クロノス殿は噂どおり優秀な方でした。なんとか、交渉することに成功しました。」
そう言って、親書を机の上に置く。
「契約は成功しました。これでドレッド帝国の宮廷魔術師に面会はできるでしょう。後は、スレインさんの交渉次第でしょうかね」
スレインは神妙に頷く。
「後の問題としては、スレインさんに同行するメンバーですが・・・」
シークは周りを見回して。
「私は砦運営、その他もろもろでサイラスを離れることはできません。グレンも然り、レオン殿も護衛任務があれば行ってもらいたいので。申し訳ありませんが残っていただきます」
レオンはがっかりと肩を落とす、そして隣のグレンも何故か肩を落としている
シークはそれを見て苦笑する。
「各々の役割というものがありますから、それを真剣にやることこそが黒の砦の存続に繋がるのです。前にでることだけが、仕事じゃないんですよ」
「わかってるよ・・・」
グレンは力ない声で答える。
「なので、スレインさんお一人は問題あったとき困るので、あと1人最低同行する方が必要なのですが」
チラッと妹2人を見る。
それに気づいたティラはすぐさま手を挙げる。
「私いきます」
アリスもそれに焦りすぐさま手を挙げる。
「私も行こう」
周囲は苦笑する。やはりかという思いで。
「人員はギリギリです・・・2人行かれると黒の砦で急遽なにかあった場合対処する方が1人ほしいのです。スレインさんは1人同行する方がいれば大丈夫かとおもいますが。私達はスレインさんのように万能の能力がないので、人員は必要なのですよ」
シークは真面目な顔で2人を説得する。
「アリス、今回は留守番お願い」
「いや、ティラは方向音痴だろ、私が行くべきだと思う」
2人は睨み合う、周りが声をかけられないほどの殺気を放って。
シークはため息をつく、一番の問題がやはりこの2人だと認識する。
2人はいまだに睨み合ってる、言葉は冷静ではあるがこれは埓があかないだろうと周囲は知っている。
シークは再度ため息をつき。
「わかりました、仕方ありません・・・。スレインさんアリスさんティラさんの3人でドレッド帝国へ行ってもらいます。よろしいですね?」
それを聞いてにらみ合いをすぐ辞め、手を握って喜び合う2人は周りは呆れるばかりだった。
「では人数配置はそれで決まりとして、スレインさんはドレッド帝国へ行ったことないので、転移できません。なので約1ヶ月近く不在なわけです。なので、無駄な時間を使わないよう地理をしっかり記憶して行くようお願いします。また残る者は黒の砦になにがあるかわかりません。しっかり各々の役目を果たしてください。私からは以上です。スレインさんあとはなにかありますか?」
スレインは頭を横に振る。
「シークありがとう。僕からはなにもないよ。これからもっと大変になるだろう、皆これからもよろしくお願いする。解散しよう」
スレインの解散宣言で一同席を立ちその場を離れる。
レオンだけがその場に残り、スレインは頭を傾げる。
「レオンどうした?」
「ん?いや大将に言っておくことがあってな」
スレインはレオンの横に腰掛ける。
「実はよ、大将の姿を見て思い出したことがあるんだ。アリスがあんな状態だったから、すぐ忘れちまったけどな。」
スレインはそれに頷く。
「昔、師匠に教えてもらったことなんだけどよ、黒の髪、黒の瞳の話をな。大将はその能力を疑問に思ったことないか?」
「疑問に思っていたよ、どうして僕だけこの能力が使えるんだろうって昔は毎日ね」
「ああ、だよな。師匠が言うにはよ、それには理由があったんだわ。師匠自体詳しくは知らなかったけど、というか俺もほとんど忘れてるけど、1つ思い出したことは8武神の1番目は黒髪をしてるって話だったな・・・目はどうだったかな忘れたが・・・」
「つまり僕と同じ能力が使える人が1番目にいるんだね。」
「ああ・・・だから大将、油断はしないほうがいいぜ」
スレインは頷く。
「もちろんだ、僕には守るものがいっぱいできた。油断なんてしない」
レオンはそれを確認して、頭を掻く。
「俺からはそれだけよ、気をつけて言ってくれよ」
「ああ、ありがとうレオン」
スレインは心からお礼をいう。
そして夜が明ける。
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