第13話結末

暗い真っ暗闇の中に私はいた。


 ここはどこだろ・・・。


 そう思考すると、師匠との戦いが頭に浮かぶ。


 そういえば私は、戦いに勝ったのだろうか、負けたのだろうか。


 暗い闇を見渡す。


 どうやら私は負けてここは死後の世界なのだろう。


 はぁ・・・負けちゃったのか・・・。


 でも兄さんならきっと何とかしてくれる。


 そう私は思える。


 兄さんはもう昔の兄さんじゃない。


 今はティラがいる、グレンがいる、シークもいる。


 皆兄さんを助けてくれる。


 黒の砦の出来事を思い出す。


 皆いい人達だったな・・・・。


 よそ者の私を邪魔者扱いなんてしなかった。


 兄さんを阻害した一人なのに、私を責めなかった。


 でもティラが幻惑の魔法のかかった指輪で私に変装してたなんて、あれには少し文句が言いたい気分だ。


 私の姿で兄さんに近づくなんて少しずるい。


 でもしょうがないか、兄さんを救ってくれた恩人なんだから。


 多少は我慢我慢。


 兄さんの笑顔1度は見たかったな、それだけが心残り。


 はぁ・・・・。


 何もできなかったな・・・。


 役に立てなかったな・・・。


 兄さんごめんなさい・・・。


 ああ・・・・寒い・・・。


 寒いよ・・・・。


 兄さん・・・・。




 スレインがたどり着いた時にはすでに決着が終わっていた。

 スレインが周りを見渡した時に、母屋の方に人がいっぱいいるのを確認する

その中の一人、サラに声を掛け事情を聞く。

 兄ということを話すとサラは詳しく教えてくれた。

 どうやらアリスはレオンとの戦いで、満身創痍で気絶してしまったようだ。

 今は母屋の方で休んでいると教えてもらえた。

 急いで人をかき分け、母屋に入ると剣聖レオンが申し訳なさそうに招き入れてくれた。


 案内され、休んでいるアリスを見てスレインは心底ほっとする。

 しかし、状態はそれほどよくないらしく、下位の回復魔法しか使えるものがいなく危険なものであると知らされた。

 スレインはすぐに自分の能力を使い、アリスに優しく触れ傷を完全に治癒をし、危険は遠ざかった。


 その5時間後・・・。

 アリスは目を開ける。

 おぼつかない目で周囲を確認する。

 周囲にはスレイン、サラ、レオンがなんとか確認できた。

 サラ、レオンは心配そうな顔でアリスを覗き込んでいる。

 スレインは表情はいつもどおりだったが、目が今にも泣き出しそうに感じられた。


「大丈夫か?アリス」


「痛くないアリス?」


「俺が分かるか」


 など次々言葉をかけられアリスは困惑する。

 頭がまだ覚醒してないようで、まだ状況がのみこめなかった。

 頭を整理しようと、考えているとき、スレインと視線が交差した。


「兄さん・・・・」


 そして一気に状況を理解した。

 アリスの目には涙が溢れる。

 腕で涙を隠す、恥ずかしくて、悔しくて。


「兄さん・・・・ごめんなさい・・・負けちゃった」


 スレインは頭を横に振る。


「いいんだ、アリス。いいんだアリス。君が無事でいてくれてよかった」


 その声はとても悲しい声でやっぱり表情を変えずアリスに語りかける。

 アリスは謝罪の言葉を止めれなかった。


「ごめんなさい役に立てなかった・・・・」


 スレインはアリスの空いた手を掴んで。


「気にすることないんだ、お願いだから謝らないでくれ」


 そこにレオンの大きなため息が聞こえる。


「はぁ~」


「なにか勘違いしてるみたいだが、勝負に負けたのは俺だ」


 レオンの衝撃的な言葉に、皆はレオンを見る。

 レオンはその視線を受けても平然と頭をぼりぼり掻いて。


「真剣勝負だったんだ、お互い命を賭けてやったんだ。お前にとどめを刺すのが剣士の礼儀だ。だがな、俺はできなかった、お前の気迫に想いに押されてな。つまりは俺の負けだ、最後の最後で俺に勝ったんだよ」


だけど・・・とアリスが言葉を言おうとしたとき


「確かに剣の勝負では俺の勝ちだ、だが剣士の勝負ってのは剣だけじゃないんだよ。つまりそいうことだ」


 アリスはとても信じられなくて師匠であるレオンを見つめる。


「ま、というわけだ大将あんたのところに俺も行くことになった、よろしく頼むわ」


 レオンは手を差し出す。

 スレインは少しためらったが、手を出して握手を交わす。

 それを見てアリスは号泣する。


 初めて役に立てたことに、自分の想いが無駄じゃなかったことに。


 レオンは門弟を集めて事情を話す。


「というわけだ、俺は黒の砦にいくことになった」


 門弟達はざわめき立つ。


「あの自分達はどうしたら?」


 レオンは頭を掻く。


「付いてくるなら好きにしな、色々やることがあるからまだ俺はここにいるが、その間に考えな」


 ぶっきらぼうにレオンは言った。

 門弟達はざわざわとお互いの進退について話あってるようだ。

 アリスは満身創痍の為、負傷は治癒されていたが、体をまともに動かせない状態だったので、2日ほどスレインと一緒に滞在することになった。

 その2日程で、概ね門弟達は着いてくることになった。

 スレインとアリス出発の時。


「師匠先いってます」


 レオンは頷く。


「俺も片付け終わったらすぐ向かう、それに・・・お前には奥義をまだ伝えてないからな。それ伝えるまではあっちでもビシビシいくぜ」


「はい!よろしくお願いします」


 笑顔でアリスは返事をする。


「では、砦で会いましょう」


「おう、大将あっちでまた会おう。」


 サラが近寄ってきて。


「アリスまたあっちでね」


「うん、冷たくしてごめん」


 サラは頭を振り。


「事情わかったし、アリスのあんな姿見せられたら何も言えないよ」


 アリスはそれに大きく手を振り答えた。

 門弟達も手を振り、スレインとアリスを見送る。


 そして転移して自分達の本拠地へと帰る。

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