第11話2人の妹
作戦会議の翌日の早朝、アリスは砦を出る。師匠レオンを倒すために。
作戦会議の時にアリスはスレインを除く皆にこの事は内緒にするよう、釘を刺していた。スレインに内緒にすることは、反対されたが、それを無理を言って納得させた。そうしなければ兄さんは私を止めるだろうと容易に想像できたからだ
兄さんには、目標がある私のせいで狂わせてはならない、そう決意しての出発だった。
部下達に進退の発表がなされ、300余人の人数が残り、次の段階に移す為に主要メンバーが円卓の会議場に再度集まる。
今回の議題は、武神タレル打倒の確認だった。
8武神の一人タレルは7番目に位置する武神だった。
下調べをせずに行くのは、得策ではないだろうと入念にシークが人を使い調べた情報を開示する。
「サイラス国の北に位置する国を2つまたいだ場所、ドレッド帝国にいるという情報です。」
シークの言葉を皆は神妙に聞く。
「タレルが武神になれたのは土の魔術が極めて秀でいたことに起因します。タレルは帝国魔術師の主席魔道士でもあります。容易な接触はできないでしょう。」
グレンは首を傾げる。
「それじゃ、どうやって戦うんだ?」
「そこが問題ですね。のこのこいっても門前払いが落ちでしょう。なので、ここはサイラス国の力を使いたいと思います」
それにティラは疑問を口にする。
「でも、サイラス国に住んで入るけど、だからといって重臣や王家と繋がりがいる人いないよね?」
シークは頷く。
「そうです、繋がりはありません。なので繋がりを作るところから始めないといけませんね。繋がりについては私に考えがあります。まず、私達黒の砦は、サイラスでは知らないものがいない人ほど有名です。その有名を使い、サイラス国と傭兵契約を結ぶのです。サイラス国の宰相は優秀な方です、この利点にすぐ気が付くでしょう、そのかわり、ドレッド帝国への親書を書いてもらいます」
シークの発言に感嘆の息を洩らす。
「なるほどな、それならいけるかもしれねえな。しかしよう、人が減った今傭兵契約なんて荷が重いんじゃねえか」
「ええ、そうです。しかし目的の為なら多少の犠牲は仕方ありません。これについては傭兵の仕事はグレンさんあなたにお任せしようと思ってます。」
グレンは驚く。
「お、俺か、しかし・・・・」
シークは苦笑する。
「大丈夫です、交渉等は私がやりますので、グレンさんは仕事を果たすだけで構いません」
なるほどなと頷く。
「スレインさんそれで構いませんね?多少目的が遅れますが・・・」
スレインはティラの顔を見る、ティラもそれに頷く。
「構わない、しかしグレンの負担が大きそうだが?」
シークはそれに困った顔をする。
「そうですね、人が足りません村の護衛、砦の警備、そこに傭兵仕事となると、グレンさんには申し訳ないのですが。せめてあと一人、グレンさん並に人を使える人がいるといいんですがね。それと人員拡充も並行してすすめたほうがいいでしょう」
「申し訳ない、僕があんなこと言ったから人が足りなくなってしまった」
シークは頭を横に振る。
「いえ、覚悟がないものはいつかは去る者です。今必要なのは覚悟があるものです、そこはしっかり選別しないといけません」
シークの言葉で静寂が流れる。
皆が考え込む中。
グレンが思い出したかのように口を開ける。
「そういえばよ、人を扱える奴、アリスの嬢ちゃんが連れてくるかもしれねえんじゃねえか、ほら昨日言ってたじゃねえか、レオンと・・・」
グレンが話し終わる前に、ティラの足がグレンの足を踏みつける。
「いてええ」
叫び声をあげ、ティラを見る。ティラは悲しい表情で頭を横に振る。
「あっ・・・・」
グレンは昨日のことを細部までやっと思い出した。
慌てて手で口を塞ぐ。
「どいうことだ・・・・」
だが、スレインの言葉が何の意味もなさない行為だと実感させる。
「グレンどいうことだ、詳しく言ってくれ」
グレンは慌てる。
「い、いや・・・、レオンのところにアリスは戦いに行ってないぜ、本当だ」
シークは手を顔で隠す、ティラは深いため息をつく。
全てを話しやがったよ、このやろうという絶望感のあまり。
「シーク、ティラ、全て知っていたのか?」
スレインの鬼気迫る迫力に観念したかのように、深いため息をついて、シークは昨夜のことを話す。
「なんで隠していた!どうして言ってくれなかったんだ!」
スレインは動揺する。
顔には出さないが、その姿は動揺しているとわかるほどだ。
「スレインさん、アリスさんはあなたのことを思って隠すよう言ったのです。少し気持ちを組んでもらって・・・・」
シークの説得の声はスレインには届かなかった。
「場所はどこだ、教えてくれ!」
「兄様が行ってもアリスが悲しむだけだよ・・・」
「それでも構わない、僕達のために犠牲になる必要なんてないんだ」
ティラは悲しそうな顔でスレインを見る。
スレインは一瞬戸惑うが、その決意は変わらないようだった。
「はぁ・・・・仕方ありませんね」
シークは諦めたかのような声で言う。
「一つだけその前に、この計画は勧めておきますよろしいですね」
スレインは頷く。
「では、場所はロンデブルクのトーラの山です、その麓で剣を習ったと言っていました。」
そう言って、地図をシークは持ってくる。そしてある場所を指差す。
「地図ではここです。」
それを確認したスレインは急いでかつて住んでいたロンデブルクに転移をしようとする、それを見てティラが口を開ける。
「兄様、私もいきます」
しかし、ティラの肩を掴んで、シークが頭を横に振る。
「行かない方がいいでしょう」
「でも・・・・」
スレインはそれを見て。
「すぐ帰ってくる、ティラ待っててくれるね」
ティラは薄ら涙を滲ませて頷く。
スレインは転移する。かつての住んでいた場所へ。
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