第4話スレインとシーク

 シークとスレインの視線が交わる。

 真剣な表情の2人に油断はない。


「少し休んだほうがいいのではないですか?グレンとやったあとでは疲れもあるでしょうから」


 スレインは提案する、シークから見たら余裕の提案とばかりに。


「構いません、それほど疲れていませんよ、それに・・・」


 シークは目を更にほそめ、ほくそ笑む。


「あなたに負けるとは思えないですから」


「そうですか」


「ええ」

 2人の視線が交差する。

 シークにはこの男の表情が読めなかった、グレンが負けた時点で逃げ帰ると思ってた予想が裏切られたせいもあるだろう。


 なぜこの男は余裕な態度を崩さないのか、まるで負けることなんてありえないような表情だ、それはあの少女にも言えることだが。あの少女はあのグレンほどの男でも軽くみる節がある、しかし、この目の前の男には純然たる信頼が伺える。


「気を引き締めなければいきませんね、油断して負けるほど愚かなことはありませんから」


 シークはそう呟く、油断も侮りも感じない表情で。

 アリスの声が響く。


「はじめ!」


 声がかかると同時にシークは前進する、圧倒的な速さでそれはさきほど見せたグレンよりも速いと思われるほどの神速の速さ。

 数秒もかからずに距離をつめる。

 目前のスレインは微動だにせず、ただ立っている、そこにシークの剣の一撃が貫く。


カアアアアアン


 音が響く。

 まるで硬いものにぶつかったように。

 シークは少し動揺する、すぐに距離をとり今起きたことをわずかな時間で考える。

 なるほど、魔法障壁ですか・・・となるとスレインという男は魔法使い

つまり、今魔法障壁を張っている彼は他の魔法が使えない。

 それで相手が疲れるのを待ち、疲れたところを別の魔法で攻撃というところでしょうか。

 シークの顔が冷酷な笑顔で包まれる。


「しかしそれは甘い考えですね」


 シークはさきほどと同じ速さで距離をつめる。

 瞬く前にスレインの眼前まで行き、再度剣を振る。

 しかしその速さはグレンと戦ったときの速さの比ではなかった。

 私の最高の剣技、5連擊防げるのなら防いでみなさい。

 それは一瞬の出来事だった。

 5つの剣筋が見えた瞬間、魔法障壁が壊れた様な音がしたと同時にスレインの右腕がどさりと地に落ちた。

 シークは余裕の表情をする、もう勝負がついたかのような笑みを浮かべて。


「勝負は着きました、それともその状態でまだやりますか?フフ」


 グレンは呆れた表情をする。

 もう勝ったと喜ぶ男の姿に、それと同時に理解したシークの攻撃の意味が。

 シークは魔法障壁を1箇所を重点にダメージを与えて破壊したのだろう。

 8武神と呼ぶ彼の攻撃力は相当なものだろう、それを1箇所に何度もぶつけられれば壊れるのは道理、そして4連で壊し5連めでスレインの腕を切り落とした。

 グレンはなるほどなと感心する、さすが8武神という尊敬をこめて。

 しかし、その喜びようは自分を思い出し呆れた顔をさせる。


「シーク!勝利宣言は早いぞ、うちのボスに時間を与えずに攻撃しないと倒せないぞ」


 グレンの怒声ともとれる叫びにシークはうろたえる。

 片腕を失ってもなお、目の前の男は戦えるという衝撃に。

 シークは目の前の男を見る。

 スレインは落ちた右腕を拾い、元の場所に戻すかのようにくっつける。

 まるで、右腕が斬られたばかりとは思えない、否、斬られた腕ではありえない、普通の動きをスレインの腕はしている。


「ばかな・・・高位回復魔法か・・・」


 シークは瞠目する、高位魔法を使えるのはわずかな数しかいない。

 それが目の前に存在することに。


「くっつけたほうが楽でいいんです。0から治そうとすると体力がわずかに削られるので」


 目の前の男はまるで何事もなかったように平然と告げる。

 詠唱をいつした。

 魔力を感じたか。

 そもそもいつ魔法障壁を張っていたんだ・・・・。

 シークの動揺は激しくなる。


「次は僕の番ですね」


 目の前の男は小さな声で話す。

 魔力は感じられなかった。

 詠唱もなかった。

 しかし、彼の頭上には中位魔法アイスランスが1つできあがっていた。

 その瞬間シークの動揺は極地に達する。

 1つではない・・・・。

 彼の頭上には次々とアイスランスができあがる。


「ばかな・・・」


 魔法を身につけているシークにはわかる。

 目の前のことは現実ではできないことだと。

 魔法は熟練者でも1つ。

 2つ唱えられるのは2連の魔法を扱える特別者だけ。

 その特別者でも最高で2つ、両腕だけの数に限られる。

 しかし目の前の男は2連どころではなく、次々と氷の氷柱を作り上げていく。

 それも1つ唱え発射しなければ、次の詠唱は普通ならばできない。

 だが目の前の男はいまや300近くはあるだろう数のアイスランスを作り上げている。

 シークは目の前の光景に動揺が収まらなかった、だがここで思考はさすが戦士というべきか避けなければ死ぬという結果を導きだしていた。


「行きます」


 スレインの言葉にシークは心臓がはねる。

 その瞬間、アイスランスは次々とシークに向かっていく。

 シークは己の限界を持って速さを持って避ける。

 次々とアイスランスは地面に大きな音をだし突き刺さる。

 シークは避ける時には高速な速さで、時には剣で氷柱を斬る

 そんなシークの行動にアリスは感心もないように。


「兄様の勝ちね」


 その言葉にグレンは首を傾げ疑問をぶつける。


「まだ終わってないぜ、確かにあれほどの魔法を避けるのは至難だが、しかしあいつは避けてるぜ」


 アリスはグレンを一瞥する。


「シークはアイスランスばかりに気を取られている、あれではライトボールをぶつけられたら避けきれないわ」


「ライトボールってなんだ?」


「あんたの体を貫いた攻撃よ、私はそう名前を付けたの、兄様のよく使う攻撃方法よ。あの攻撃はアイスランスに比べて速い、そして貫いた相手を体内から焼く、高熱を発する球体よ。あんたも身を持ってわかったんじゃないの?」


 グレンは痛みを思い出したかのように顔をしかめつける。


「ありゃ・・・痛いってもんじゃないぜ、体内から焼かれるとはあんなにいてえもんとはな」


「そう、大抵の人はあれで戦意喪失するわ誘導性能もあいまってね。まああんたはよくこらえたほうだと思うけど。そして殺傷能力が極めて高い攻撃よ」


グレンは驚く


「確かにありゃ痛えがよ、殺すには結構時間かかるんじゃねえか?」


 アリスは馬鹿をみるようにグレンをみる。


「本当馬鹿ね、あんたにやったときは兄様はわざと手の平の範囲だけに作り出して殺さないように打ったのよ、本来は今、兄様がアイスランスを作ったように無数の数を作りあげて打つものよ。その数はアイスランスの数の比じゃないわ、そしてアイスランスより速い、誘導性能もある。大きさはすごく小さいけど凶悪な技よ」


 グレンは納得したと同時に恐怖を感じた。


「手加減されてたのか、あれで・・・・」


「当たり前じゃない」


 アリスはフフンとさも自分かのように偉そうにする。


 シークは避けるいまだ終わらない攻撃に避けるそして斬る。

 避けきれずかすり、無数の傷を作ってはいるが、致命傷の傷はいまだひとつもできていない。

 スレインは手のひらをあげる、そこには数個の光の玉ができあがる。

 行けと呟くと、光の玉は猛スピードでシークに向かう。

 シークがそれに気がついたときには、シークの体を無数の玉が貫く。


「グハァアア」


 そこにアイスランスが襲う。

 シークはかろうじてそれを斬り伏せ、次の攻撃を避ける。

 光の玉が反転して戻る、アイスランスが向かう。

 それと同時にシークは手を前にだし。


「参りました」


 彼の言葉と同時にアイスランスは消え光の玉も霧散する。

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