第3話 日々
少年Dはいつもこう言っていた。
「お前、こんなんじゃ生きていけないぞ」
隣ではぐすぐす泣いている少女、若干髪が乱れているのは無論、いじめられていたからである。同じく衣服が汚れているのもだ。
そして、言わずもがな、いじめられていたところをいつものように少年に助けられたところだった。
やはりここでも泣いているので、きっと、いや絶対この事は後に忘れてしまうのだろう。
その頭が羨ましい限りだ。いや、羨ましいか…。
その質問に対し少女はこう返した。
「Dが居るから大丈夫だもん」
嗚咽を漏らしながらDの手を繋ぎ言い返した。
不意に自分の事を言われた少年は顔を赤らめながら更に言い返した。
心臓がバクバクする。
手が地味に震える。
声も震えてしまいそうだ。
「…俺が居なくなったらどうするんだ」
こんな事言いたくはないが。と付け加えて。
「私がDのそばにずっと居るもん」
「…」
どうやら墓穴を掘ったらしい。
なんとか声は震えなかったが。
耳まで赤くした彼はもう何も言い返す気力も根性も無かった。
たった一言、そうか。と呟いた後、少し少女の手を強く握り返した。
「うん」
小さな「恋」物語
小さな「夢」物語
小さな小さな「日常」
小さな小さな「世界」
小さな少女が流した「涙」
桜が散り、新緑の色漂う初夏の頃のお話であった。
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