第2話 少年D

少女Aは幸福な「頭」の持ち主だった。

周りからも幸せな子と思われていた。

一人の『少年』を除いて。


少女Aには幼馴染が居た。

少年Dという。

少年Dと少女Aはいつも一緒だったという。

一緒に遊び、一緒に学び、少年Dは少女Aを守り続けたという。

いじめられた時、からかわれた時、物を隠された時、少女Aに対して敵意や反抗をする者全てを狩りつくしたという。

少女Aはどのみちその後泣いているので、その出来事どころか関与した人間の事も忘れているので覚えてはいないが。

少年Dは誰よりも少女Aの幸福な「頭」について知っていた。

少女Aの家族よりも知っていた。

消えるのは嫌な記憶、人にされて心に傷をつけた記憶、泣くと記憶をなくしてしまう、そして―


【その記憶が戻る事はない事を】


少女Aや周りの人間は少なくとも幸せな子だと思っていた。

だがしかし、この少年だけはそうは思っていなかったという。

少年Dは少女Aの事をいつも考えていた。

少年Dは少女Aの「頭」を治そうとした。

だがしかし、子供。

当然、病院には連れて行けないわ、勝手に何かしようものなら親にどやされるわで

結局終止符を打つ事は叶わなかったという。




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