第7話

ちらちらとかけらが降り注ぐ。菫色の空が割れて、赤と黄色のマーブルが滲んだ後、真っ暗な圧が落ちてくる。僕はその暗さに手を伸ばす。上腕から脇へぬるい感覚がある。じわじわと体が水に浸されるように、向こう側に這われて行く。体の不調はない。そういうものだ、というだけだ。上等なゼリーに突き進んで行くように僕は奥へと手を伸ばし、掴み、引き抜いた。手にはとくとくと動く白い心臓。それを口にすると、さわやかな雨の匂いがした。痙攣するその肉片を耳の穴に詰め込んで行く。それから目に塗り込む。僕の快は造り替えられるべきなんだ。根を張り出した白い神経の束が僕にぬらぬらと埋め絡まって、じゅくじゅくと融けて来る。僕の髪は白く染まって、目も白くなって、爪も白くなって、血が白くなる。裏返された僕の中身が全て白くなる。白、白、白、心の中が白く、ペンキで塗られたようにねとりと厚く、白くなって行く。全身を白くした僕は、空に空いた穴の向こう側に余った心臓を差し返すと、ひび割れた空を指でなぞり、全てをなかったことにした。

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グレートマーシャル転生ビーム @keyaki

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