6.4 すまんことをしたな

 フォジフォスが息を呑む音が震えていた。今や、その様子は痛いほどにプリズマティカの胸を突いた。フォジフォスは、五十年前にパスカルの命そのものが失われて行く様を見届けた。彼女を想い続けてきた。その悲しみと悔しさの中で過ごしてきた五十年に対してプリズマティカはかける言葉が見つからない。

 しかし、どれほどフォジフォスに同情しても、プリズマティカは自分の思う通りの答えを返すしかなかった。

「あたしはパスカルじゃないの。こんな機械で未来を予測するなんて、できない」

「嘘を言うな」

「嘘を言う理由がない。あたしはこの都市も、組合の人達も好き。もちろんフォジフォス、貴方のことも大好きよ。そのためにあたしができることがあるなら、何だってする。でも」

 プリズマティカは、椅子から立ち上がり、フォジフォスを振り向いた。予想と違い、フォジフォスは取り乱した様子もなく、ただ、プリズマティカを見つめていた。

「覚えていない。あたしは、パスカル・アルファでもなんでもない、屍体置き場に紛れ込んだ、記憶喪失の浮浪者だった。それをあなたは勘違いしただけ。そうでしょう?」

「お前はパスカルだ。その証拠に」

「この場所に辿り着けたのも、あたしじゃなくてトルウのせい。だってこの一年間、ロジェやあなたからいくら話を聞いても何も思い出せなかったのよ。トルウからパスカルの話を聞いたって」そこでプリズマティカは、一度唇を噛みしめ、自分に言い聞かせように続けた。「何も感じなかったし、何も思い出せなかった。そう、貴方が信じるなら、そもそも私がパスカルだと信じる根拠はどこにあるの? パスカルの屍体を探すように命じられた誰かが、本当にただの浮浪者の娘を見つけて連れてきたんじゃないって、どうして言えるの?」

「他の者が間違っても、私がお前を見間違うはずがない。五〇年が過ぎ、たとえお前の姿が変わっていたとしても、お前を見間違うはずがない!」

 フォジフォスはプリズマティカに、おぼつかない足取りで、数歩、歩み寄った。

「お前は分かっているはずだ。自分がパスカルであることを。たとえ明白な記憶がなくとも、パスカルの書いたものを読み、故郷を訪れ、その生前の事績に触れる度に、感じるものがあったのではないか?」

 そう言われてプリズマティカは嫌でも思い出さざるを得ない。プリズマティカの生家を訪れたときの切ない気持ち、トルウについて語る文書を読んだときの胸がきゅんとなるような痛み、初めて出会ったニコルと会話したときの不思議に懐かしいような思い。

 それを感じたのは、プリズマティカがパスカルだからだと思い込んだこともあった。

 だが、今になって考えれば、プリズマティカが触れたのは、パスカル本人の名残ではなく、出会った人々のパスカルに対する強い想い、それはトルウの想いであり、ニコルの想いであり、フォジフォスの想いだった。そして、その想いに触れてしまったプリズマティカ自身が、パスカルという少女に対する憧憬を抱き、彼らに幻を見せてしまったのだ。

 そして、憧れはプリズマティカを変えた。プリズマティカは、恋人の出世だけを夢見てまどろんでいた少女では、もはや、ない。

「フォジフォス、ごめんなさい。あたしはパスカルじゃない」

 プリズマティカは、穏やかな口調でフォジフォスに言い聞かせるように言った。

「パスカルはここにはいないのよ」

 突然、フォジフォスは声を荒げた。

「そんなはずはない! ではパスカルはどこに行ったのだ? パスカルの屍体はどこにあるというのだ?」

 そのとき、弱々しいトルウの声がプリズマティカの耳朶を打った。

「最初から、そんなものはないんです。フォジフォス師」

 プリズマティカはトルウが何を言っているのか、すぐには理解することができない。トルウは、同じように困ったような口調でもう一度言った。

「パスカル・アルファという名の科学者は実在しなかったんですよ」

「なにを馬鹿なことをいう」

 フォジフォスは嗤った。その声には愚かな若者を諭すような響きが混じっていた。

「妄想にとりつかれた歴史学者ではあるまいし、たった五〇年前にあれだけの事績を遺した科学者を、実在しなかったというのか」

「写真もない。事象学組合に入るまでの足取りも不明。生家という場所が出来たのもせいぜい十年前。会ったことのある人は極端に少なく、聞けば皆、判で押したような、いや、申し合わせたような一律の答え。不自然すぎます」

「それは我々がそうしたからだ。五〇年前、我々はパスカルの存在を隠そうとした。そしてその後、パスカルの事績をなんとか復元し、遺そうとした。その企みが成功したということだよ。そもそも、実在しない者が、どうやって研究をする? 論文を書く? この電気算盤を誰が作ったというのだ?」

 トルウは、すぐには答えなかった。フォジフォスの顔を挑むように見つめながら、答えをためらっているように見えた。その理由はプリズマティカにも分かった。そして、その答えも。

「それはあなたです。フォジフォス師」

 ついにトルウは言った。

 フォジフォスの答えはなかった。

「あなたは独力で電気算盤の理論をつくりあげ、当時の組合の仲間と一緒に試作し、遠い未来を予測する技術を編み出した。そして当時の人々が最も不安に感じていた欧州諸国の先行きについて、明確な洞察ビジョネールを得た。しかし、あなた、いや、あなた達はそれを発表することを怖れた。当然です。神聖ローマ帝国もフランス諸国連合も強大で、その狭間に位置するアルジェンティナ政府にその両方を敵にまわすような選択はありえなかった。そこで、作り出したんです。パスカル・アルファという架空の天才科学者を。

 すべての功績と名誉とそして叛乱示唆の罪をその少女に負わせることで、あなた方は生き残り、組合も生き残った。お見事だったと思います。少ない者達の間で完全に口裏を合わせ、秘密を守りきった。パスカルの生まれた家を作り、あるいは新たにパスカルの事績を『発見』し、彼女の伝説を強固なものにしていった。当時の事情を知る人達はどんどん減り、おそらく永久にその秘密は漏れることはないでしょう。

 しかし、それだけでは済まなかった。本来得られる名声を捨てるだけ、他には何も失うものはないはずだったのに、貴方がたは、とくにフォジフォス師、あなたはそのことによって心に大きな傷を負ってしまった。実在しない少女に対する罪悪感です。本当はパスカルこそがあなたの業績を騙っていたのに、まるで自分がパスカルの研究を盗んでいるかのうように思い込むようになってしまった。あたなが見せてくれた電気算盤は、これよりも遥かに優れている。当然ですよね。同じ人間が五〇年もかけて改良したものだ。だが、あなたはそれすら認めようとしない。あなたは、無意識のうちにこれらを封印してしまった。その封印を解くことができるのは、パスカルだけ。でも、パスカルは存在しない。そこで、あなたは、いないはずのパスカルを作りあげようとした。封印を解く者として」

「そうではないそうではない!」

 フォジフォスが、握りしめた両手を震わせながら、次第に声を大きくしていった。「パスカルはここにいるではないか!」

「プリズマティカがパスカルであるという説は、ええ、私も考えました。プリズマティカ本人も思いついたようです。でも、それはありえない。もし、プリズマティカが本当にパスカルなら、フォジフォス師、あなたは彼女を他の男に預けたりするでしょうか」

 フォジフォスは息をのみ、言葉を失った。その一瞬の沈黙が、雄弁にフォジフォスの本心を物語っていた。トルウは優しくなだめるような口調で言った。

「パスカルはまだ、あなたの心の中にいます。でも、プリズマティカはここにいる。封印を解くのはあなた自身なんです、フォジフォス師。どうか」

 トルウは、一旦言葉を切り、そして静かに言った。

「どうか、二人を解放してあげてください。プリズマティカと、そしてパスカルを」

 フォジフォスは立ち尽くしていた。『騎士』も全く動く気配を見せなかった。やがて、静かな、そして乾いた笑い声がどこからか聞こえ始めた。

 最初、プリズマティカはそれがフォジフォスのものだと思ったが、そうではなかった。

 笑っていたのは、壁際でそれまで黙って話を聞いていたニコロだった。ニコロの笑いはやがて哄笑にかわり、部屋中に響き渡った。

「やめて!」 

 プリズマティカが叫んだ。「どうしたの、ニック、笑うのをやめて」

「そういうことか。はなからおらんのやったら、みつかるはずないもんな。嘘をついていたわけやなかったんか。すまんことをしたな」

 笑いを必死に耐えながら、ニコロはそう言った。

「ではフォジフォス先生。この異端の思想の根元にいるのはパスカル・アルファやなく、あんた自身だったということやな」

「そなたは誰だ。ティカにつきまとっていた下水掃除人か」

「いかにもわしは下水掃除人のニコロ・デルピエロや、あんたの質問はそういう意味ではなかろ。検邪聖省異端審問官ヨハネ・ドミニクスと言えば納得してもらえるやろか」

 プリズマティカはその名を聞いて、体中にしびれが走るように感じた。なぜ、ニコロがその名を、五〇年間の異端審問官の名を知っているのか。

「ニック、わけのわからないことを言うのはやめてっ」

「わからんのやったら、教えまひょ。わしは五〇年前、教皇の命を受けてパスカルを殺害するためにこの街にきた。けど、その任務は果たせんと、手塩にかけて育てた従者まで失ってもうた。わしは最初からおかしいと睨んどったんや。学寮に潜入させた従者はパスカルを見つけることすらできんかった。挙げ句の果てにわしの従者は捕らえられ、パスカル・アルファとして年政府に突き出され、処刑された。誰もがパスカルは死んだ思ったやろな。わしを除いてはな」

 気持ちが悪い。めまいがする。プリズマティカは、自分を取り囲んでいた人々が変貌し、世界が崩壊してゆくのを感じた。思わずトルウの方に手を伸ばした。たった五日前に会ったばかりの頼りない若者、だが、もはや彼くらいしか、プリズマティカのことをプリズマティカと認めてくれる人間はいないのではないか。そんな必死の思いがトルウの手を求める。トルウはそんなプリズマティカの手をしっかりと握ってくれる。

「これを飲め」その手の中に小さな錠剤がある。

 え、なにを言ってるの、こんな時に!

「フォジフォス先生。あんたの五〇年とわしの五〇年、どちらが楽しかったやろかね。わしは一度立てた誓いを破るわけにはいかんかった。パスカルは死んでない。であればかならず生きとる。生きているからには必ずや審問にかけなならん。下水掃除人に身をやつし、パスカルの手がかりを探し続けたわけや」

「プリズマティカっ」

 トルウがプリズマティカの顎を掴む。その大きな黒い瞳が彼女を射すくめる。え。一瞬、身体から力が抜ける。口の中にするりと押し込められたそれを思わずのみこんでしまう。

「ごめん」

「え」

「お前があのとき、我々の周囲を嗅ぎ回っていた犬共の一人か」

 フォジフォスの声は、威厳をとりもどしていた。

「神はお前達が生きていようが死んでいようが、なんの興味もお持ちでないぞ、異端審問官め。それにいまさら私を殺してどうする。仮に私にパスカルの天才が備わっていたとして、老いさらばえた身の寿命のいくばくかを縮めるだけのこと」

「それは二つの意味で間違っとる、フォジフォス先生」

 ニコロはゆっくりとフォジフォスに近づきながら口の端を引き上げた。その目はまっすぐフォジフォスを捉えているが、『騎士』の方にも注意を払っているのは間違いない。

「電気算盤など関係ない。一つ、あんたは神と話した。それは罰せられなくてはならん」

 ニコロの右手、肘よりも先が、素早く振られた。すると袖口から一本の長いスピアナイフが飛び出した。

「もう一つ。あんたは神と話し、世界を一度、審判の日から遠ざけよった。パスカルの封印が破られれば、あんたはもう一度そうするやろ。それは今度こそ防がにゃならん」

 その場にいるニコロ以外の三人で、ニコロの動きが少しでも読めたのはプリズマティカだけだったろう。だが、プリズマティカは叫ばなかった。ニコロの目標がフォジフォス本人ではなく、まずは『騎士』に定められたと思ったからだ。だが、それをプリズマティカは後悔することになる。電気銃を構えた『騎士』の左腕はニコロを狙っていたが、電気銃の射程には遠く、最初の放電のあとでニコロは易々とその懐に飛び込む、そう思えた。

 次の瞬間、ほの暗い部屋にすさまじい閃光がひらめいた。全員がその光を予想していたにもかかわらず、全員が一瞬視力を失った。やがて、目を開いた彼らが見たものは、直径一メートルに渡って白熱している床と、一方の壁際まではじき飛ばされたニコロの姿だった。プリズマティカはその姿を正視できない。全身が焼けただれ、足の先などは、形を保っていないようにさえ見える。

「これは電気銃じゃない……」

 トルウが呟くのが遠く聞こえる。

「ニック、大丈夫……」 

 プリズマティカは震える足で、ニコロに近づこうとする。何度も命を救ってくれた、下水での戦い方を教えてくれた老人。仮にそれが五〇年前の怨念を晴らそうとする異端審問官であっても、彼女はニコロを恨む理由はなかった。

 そのはずだった。

「プリズマティカ待て!」

 そのとき、トルウが叫んだ。プリズマティカは思わずトルウの方をにらみつける。

「あいつの言うことを聴くな!」

「……あんたの忠告は正しい、地理院のマイスタ」

 息も絶え絶えなニコロの声が響いた。「けど、最後の言葉くらい、聴いてくれてもよろしいやろ、我が弟子、フロリーヌ」

 フロリーヌ。

 そうか、そうだったのか。プリズマティカの中、遠い遠い過去に埋もれたままだった記憶に光が射した。自分は、プリズマティカではない。ましてパスカル・アルファでもない。フロリーヌ、それが自分の本当の名前。

「フロリーヌ、イプシロンイプシロンヌイヌイスィススィス」

 瀕死のニコロの口から漏れた一連の暗号を耳にした途端、全てを理解した。もちろん、そうだ、それこそが自分の仕事だ。ああ、やっと終わる。ついに成し遂げることができる。体中にみなぎる力、張り詰める神経。武器など要らない。あんな機械人形など素手で十分。

『騎士』に近づき、その右手の棍棒が振り上げられるのも待たずに跳躍する。『騎士』の動きなどは喜劇役者のように遅い。『騎士』の肩に飛び乗り、その首筋に手を突っ込む。何かのケーブルのようなものを掴む手応え。それを引きちぎると、火花が飛び散り、指先にはいくつもやけどを作った。しかし、今のプリズマティカは痛覚すら遮断できる。

 『騎士』は右手の棍棒を取り落とすが、動きは止まらない。プリズマティカを振り落とそうと、電気銃を上に構える。さっきよりはいくばくか小さい音響とともに火球を天井にぶつけたときにはプリズマティカは床に飛び降り、『騎士』の落とした棍棒を拾っていた。間髪をいれず、『騎士』に突進する。プリズマティカの棍棒が一閃し、金属のひしゃげる音とともに、騎士の左腕から電気銃がもぎ取られる。プリズマティカはそれを拾いあげると、『騎士』の身体と電気銃を繋ぐ線が伸びるだけ下がって、『騎士』に向けて放った。大音響とともに白い光芒が消えた後には,上半身を消滅させた『騎士』が、その場に溶接されたように立っていた。

 プリズマティカは、灼熱した銃を放りだした。

 ただの人間を殺すために、武器はいらない。

 壁にもたれて倒れているニコロを見る。光を失った目はすでにプリズマティカの姿を捉えてはいない。『師』であるニコロがプリズマティカの戦いを最後まで見届けてくれなかったのは残念だが、だからと言ってここで終わるわけにはいかない。視点をフォジフォスに移す。その表情に怯えはない。プリズマティカを慈しみ、育て、そして利用してきたニコロは死んだ。同じように気をくばり、世話をし、そして利用しようとしていた男も、もうすぐ死ぬ。

 幼いころに戦乱で家族を失い、いつからか人殺しとしての訓練を受けさせられていた。同い年の少女を殺すために、数象学寮に送り込まれ、しかしその標的すら見つけることができなかった『刺客』。殺すべき娘はどこにもいない。いないの。どうすればいいの。『師』からの助けはなく、逆に捕まって一度は冷たい土の下へと埋められた。しかし、屈辱をはらす日が来た。

 本当の標的は、目の前にいる。神に感謝を。

「プリズマティカ、やめろ!」

 その名前は自分のものではない。本当の名前は知らない。でも最も長い間呼ばれていた名前はフロリーヌ。いや、それも本当の名前ではなく、ただの符丁だったような気もする。

「プリズマティカ、目をさませ!」

 偽の名前をよぶ若者の声が部屋に響く。そう、それは戯れにもらった偽の名前。だが、どうしてだろう、無視することができない。若者がその名を呼ぶたびに、どん、と胸の鼓動が大きく打つ。

「プリズマティカ、やめろ、プリズマティカ」

 ついに少女は立ち止まった。「プリズマティカ」という名を自分でささやくように言ってみる。すると、どういうことだろう、頭から全身に弱い電気のような波が広がり、身体が温かくなる。

 それは、あの日、少年がくれた名前。

 失意の中、いつしか少女は、あの奇妙な機械を知り、そして使い方すら知ってしまった。その機械の本当の意味を少女は知らなかった。だが、それは少女にとっては見知らぬ世界の少年と会話をすることできる機械だった。機械の中の少年は話すことはしない。ただ、赤くぼんやりした文字で、遠くの、豊かな、平和な世界のことを話してくれた。そして、ただ一つ、声を聴くことも触れることもできなかった少年のくれたもの。少女にとって五〇年前の最期の日に少年がくれた名前。その名が記された紙切れを握りしめ、死んでも手放さなかった。

 ああ、何を考えているんだ。スィススィススィス! あの男を殺せ、フロリーヌ!

 我にかえったプリズマティカは右手を年老いた男の喉もとに伸ばす。骨と筋が浮き出した細い首は一瞬で折れてしまうだろう。だが、そのとき、プリズマティカは羽交い締めにされる。ふん、その程度の力で、このあたしを捕まえられると思うの? しかし、振り切れない。そんな、馬鹿な。

「強力な痛み止めだって言ったろう?」耳元で少年の声がする。「飲み慣れていないと、とりわけよく効くんだ。とくに副作用が」

 いつそんなものを飲まされたたのだろう。頭の中で暴れていた歯車がゆっくりと回転を落としてゆく。弛緩した身体を自然にトルウに預けるように。そして、心も。

「あたし、あなたと話したことがあるの。ずっと昔」

「ああ、僕もだ。その、たぶん、そのとき、きみに名前をねだられた」

「そうだったんだ。確かに、あんな偽手紙一つでおびき出されるわけないよね」

 時間通信の実現可能性は否定されたわけじゃなさそうだよ、パスカル・アルファ。

 フォジフォスは、まだ焦点の定まらない目をどこかに向けたまま、立ち尽くしている。

 だが、プリズマティカには、その口もとが一瞬だけほころんだように見えた。

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