フォローのすゝめ

いちてる

実際の人物・団体とは一切関係ありません



「あかん、読者がおらん」



 ワイの名は赤福宗吾あかふくそうご。趣味はネット小説、書くのも読むのも大好きな大学生や。

 今まで誰にも見せた事はないが自分でも書いとる。ワイが書いてるのはハードなSFや。


 ただ異世界転生が主流の大手の掲載サイトでは、評価されないのは目に見えとる。

 諦めて細々と書こうかと思っちょったら、出版社主催の小説投稿サイトが出来るって聞いた。天啓やと思ったね。


 急いで書いていた小説を完成させ投稿した。

 コンテストには参加せんかった。なぜならまだ文章力が参加するレベルやないって判断したからや。


 全50話のサイエンスフィクション。笑いあり涙ありの総文字数30万文字の大長編や! きっとそこそこ人気出るに違いないって夢想しとった。


 ただ現実は甘くない。

 そもそも読者がいなかった。



 1時間たってもPV0



 ワイには才能がないんか……そう思っとったらどうも違うらしい。

 作者と読者の均衡が大幅にずれとる。つまりは読者がおらん。


 ワイだけが読まれてないわけやないとホッとしたが、同時にチャンスやと思った。


 読者がいないんなら作りゃいいんや。


 考えて、考えて……多くのユーザーをフォローすることに決めた。


 その前に一度読者の視点で考える。ワイの小説を見たいと思うかって……?

 正直言って思えんかった。

 まずこんなに小説が多いのに長編を読もうなんて思わへん。精々10話程度が限界や。

 とはいえ、一度掲載した話を削除して再び投稿するのはよくないな。せや!  一回全部消して別タイトルで投稿したろ! 誰も読んでないんやからばれへんばれへん。


 キャッチコピーも目を引くのに変えなあかんな。


『☆かみさまはざんこく☆』


 これにしたら少しは読者増えるやろ。


 ここでようやくユーザーのフォローに入る。その中で1時間しか経過していないのにフォロー数が100を超えたユーザーがいた。

 ワイと同じことを考えるなんてさすがやな、有能!!


 せっせとフォローをしていると何やら目を引くタイトルが。



 なんや! 『チート戦線、~~~~。』って小説、めっちゃ面白そうやないか! これは読まなきゃ人生損するな----ってあかん。今は心を鬼にしてフォローフォローandフォローや!



 ただフォローだけじゃ足らん。もっと別の手段を使わなあかんな。


「あんた姉妹に土下座して恥ずかしくないの」

「星は土下座より重い・・・・!」

「そうなんか、しゃーない。登録してやる」


 姉と妹に頼んで登録してもらった。姉は特に活字嫌いの無能やったんやが、頼んでみるものやな。


 こうして開始初日ワイのフォロー数は1000を超え、星の数は30を超えた。


 もちろん小説の方をフォローしてくださった読者には相応のお返しをせなあかん。

流し読みだが読ませてもらうで。

 だって感想も書かれなければその返信も出来んのや。ワイからできるお礼なんてそれくらいしかないやろ?


 面白いやんけ、星3つ。あんまあわんな。星3つ。つまらん、星3つ。

 ふぁ~⁉ 『チート戦線、~~~~。』くっそ面白いやんけ。星300……すまんな、3つしかあげられへん。


 もちろん打算的に星を投げ売ったユーザーもたくさんいる。星を貰ったら自分がやった星を消されたときは腹が立った。


 だがしゃーない。その一時でも星を貰ったという事実が重要なんや。熱心に読むだけの読者より適当に評価を入れる作者の方が価値がある。

 一時的とはいえ星をいただき、どうもありがとうございました、の精神や。


 ここは修羅や。心じゃ何も救われへん。



 3日もたてば情勢は決まる。ワイは無事フォロー数が5000を超え、フォロワー四天王の最弱という称号を某掲示板で得た。

 ここがどういうサイトか先見性の無い奴が「営業がうまい奴が評価を得る」とワイらを罵っとったが阿呆やなあと思うで。


 どんな職場にだって営業職はあるやろ。 営業職があるってことは、それだけ重要ってことや。人付き合い出来ず便所の落書きしか話相手のおらん輩はそんなことも分からんのか。

 そんなことゆとり世代のワイだって知っとる。


 もはや哀れみすら感じるで。


 運営が読んでいない評価は無効だと、あまりにひどい場合は処分を検討すると掲示した。


 掲示板ではワイのアカウントが消されると勘違いしとる。ワイがしとるのはユーザーのフォロー。その後ワイの小説を読んでくださった読者を重点的に読むんや。ちゃんと読んどる。


 覚えてないだけや。


 文章力の足らんワイからすれば、タイトル・キャッチコピー・あらすじだけで星3つの価値がある。星を入れてから読んでも問題ない。評価は別に作品の内容だけやないんやからな。

 そもそも読んでから入れてほしいのなら、最初から最新話に評価できるようするべきなんや。対応が悪い。


 ワイの行動すべてに文句を言われる筋合いはあらへん。




 1週間たてば星の数は100を超え、有志によるサイトではコンテストに参加していない作品の中ではトップ10の中に入っていた。


「フハハハ。笑いが止まらんで!!」


 更新すれば星が増える。これほど楽しいものはないな。

 ほ~れ108、ほ~れ111、ほ~れ……?


「ファッ!?」


 ワイの小説が消えとる⁉

 アカウントも消されとる?!


「なんでや?!」


 何も悪いことはしとらんのに。

 なんで消されとるんや⁉


 急いでメールを確認すると運営からメールが来とった。


 書かれてあったのはなぜアカウント停止になったかってこと…………


 ワイは愕然とした。


 運営かみさま残酷ざんこく…………や。





禁止事項

27.その他当社が不適当と認める行為




















「お前の態度が気に食わない」







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