倶楽部が狙われてる?
第5話 あるビルの一室で
新宿区のとあるビルの一室で二人の男がモニターの画面をじっと見ていた。
その部屋はとても殺風景でモニターの他にはノートパソコンが2台、そのパソコンが乗っているデスクが2台あるだけである。二人の男のずっと後方に壁にもたれて一人の男がいる。その男は室内だというのにサングラスを掛けており、透き通るような色白の男である。一見して冷たさを感じる男だ。
「どう思う?」
二人の男のうち背の高い年配風の男が、もう一人の男に尋ねる。年配風の男はグレーの背広に淡いブルーのネクタイ姿で、役人風である。
「そうですね。まだ、ひよこですが興味深い素材ですね」
若い男が答えた。若い男のいでたちは薄いグリーンの高級そうなスーツ姿で、自然に切りそろえられた短めの髪でインテリジェンスの匂いがする男だ。
「ふむ、というと?」
年配風の男がどの様に興味深いか聞いた。
「はい、このVTRだけではなんとも言えませんが、こういう咄嗟の状況で瞬時に力を発揮できるというところに興味があります。また、先ほど見た警察署での調書の様子からも彼は一人ではない気がします」
「そうか。では動くかね?」
「はい、彼の身辺にそれとなく力のある者を監視につけましょう」
「わかった。何か進展があったら知らせてくれたまえ」
これで今日は終わりだとでも言うように年配の男は部屋の出口のドアに向かう。その時、壁にもたれているサングラスの男を一瞥し、苦虫を噛み潰したような表情をしながらつぶやいた。
「相変わらず愛想のない男だな」
言葉を投げかけられたサングラスの男は壁から離れようともせずに、ほんの少し首を前に傾けた。お辞儀のつもりらしい。
二人の男はやはり役人であった。一人、年配の男は内閣府人材能力向上室の室長であった。
そして、もう一人の若い男は文部科学省の非科学研究チームのリーダー……省内の役職でいえば係長ということになっている。
二人がモニターで見ていたのは優太が万引き犯の鍵を曲げたシーンであった。防犯カメラに映っていたのを画像処理して鮮明に映し出されていた。
どうやら優太は役人たちの目にとまったらしい。理由はまだ分からないのであるが……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます