ラプンツェル追記

ラプンツェルの最後、母親のフリをしてた魔女ゴーテルは、ラプンツェルが飼ってるカメレオンのパスカルが仕掛けた髪の毛に蹴躓いて高い塔から落ちていきました。ラプンツェルは、落ちていくゴーテルに向かって思わず手を差し伸べようとしました。ふーん、と、色々な感覚を覚えました。


パスカルはゴーテルをハッキリ殺そうとしました。昔話にはよくある展開ですが、近年は、残酷云々でそういうとこ、マイルド仕上げが流行りなので、お、久々に王道昔話展開だな、と思いました。でも今風のマイルド処理もしてあります。落ちてく途中でゴーテルの肉体は消滅してしまいました。ラプンツェルの髪の毛の魔力と、その源泉になった魔法の花の魔力とで、反転させてた数百年の時間が、髪の毛の魔力の消滅と共に一気に押し寄せて肉体が朽ちちゃたんでしょうね。だからパスカルが突き落とさなくたってどのみち消えちゃう運命だったんです。そのせいで、パスカルの殺人は、結果的にそれ程後味悪くないです。物語的にはあれをパスカルじゃなくラプンツェルにやらせる手だってあったはずで、それを思えばかなり後味配慮効いてます。


どころか、ラプンツェル、最後、思わず、手を差し伸べてますもんね。あれは現代人的には共感しやすかったですね。だってねぇ、騙されてたってわかったからって、十八年間、母だと思って一緒に暮らしてたんだし。そら、甘っちょろい現代人の感覚ではいきなり「勝手に落ちて死んでろ、ババァ」にはなりませんわねぇ。


ただ、毒親モチーフとして見るとき、あの差し伸べた手は、スッゴく悲しかったですね。虐待する母親を、それでも「ママ、ママ」って慕う幼児みたいで。

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