「怪物」

無人島


   3


 朝、生徒42人は島の浜辺で気絶していた。 その島の浜辺や海はとても美しく光り輝いていて、とてもそこが「無人島」だとは感じられないほどであった。

「……ん……」 「ここ……どこ……?」 「島……なのか?」

 生徒42人は全員奇跡的に無事だった。

 そして皆は、後に全員目を覚まし、皆は近くの廃墟らしき場所に集まる事にした。

 皆が無事で済んだ。 本当にそれは奇跡だという他ない。

 しかし、それは本当に奇跡だったのかは、後の結末を考えるととても思えないのだけれど。


   4


「さて。何故私達はこんな事になったのでしょうか?」

 まず、クラス委員長の海堂かいどういつきが話を切り出した。 その顔は戸惑いを隠し切れていない顔だった。

 なにか、なにか話さないと駄目だと思ったのだろう。皆の目からは冷静に見えているが、その樹の顔は冷静に見ればとても冷静ではないと感じ取れるほどに、冷静を失い平静を装った、偽りの冷静な顔であった。

「そりゃ……船が漂流したからだ」

 と、生徒の一人、京終きょうばて莉玖りくが力無く返した。

 この状況が未だに理解ができないのか、目が虚ろになっていた。

 目が虚ろになっているのは京終だけではなかったが。

「あーあ……こんな事なら先生の言う事ちゃんと聞けばよかったな……」

「そういえば先生……どこにもいないね……」

「船にもいなかったよ……多分海に……!」

「うわあああああああ!

 せんせ……ごめんなさい……先生……あたしたちのせいで……!」

 生徒達は、先生のいうことを聞いていればこんな事にならなかったのにと後悔した。

 だが、もう遅い。

 船は大破。操縦士も槇村も、どこかへと行方を眩ませてしまった。もう、命が残っているかどうかも怪しい。

 生徒達は、助けを待つしか道は無くなってしまったのだ。

 しかし、その道はもはやほぼ閉ざされてしまっている状況にあるのだが。

 今は全員いるとはいえ、矢張り子供だけでは心細い。 ここは、なんとしてでも助けを呼んで、家に帰ろうと、一人の生徒が声をあげた。

「そうだ、みんなで助けを呼ばないか?」

 黒神くろかみ白夜びゃくやだった。 彼はこのクラスのリーダー的存在で、人一倍の正義感と優しさを持っており、クラスの生徒達から一目置かれていた。

 彼は、このままではいけない。嘆いてるだけでは、何も起こらないし、何も進めない。と思ったのであろう。

「それはみんなわかってる。でも……どうやって?」

「とりあえず、色々やってみよう」

 皆はまず、砂浜に大きく「SOS」と書いた。

 ベターだが、矢張りこれが効果的だと思ったのだろう。 皆協力してとてもとても大きいSOSの文字を書いた。

「まずはこれでよしと。次は食糧の確保だ」

「えー……めんど……」

「行かないと三日と持たずに飢え死ぬぞ! わがままいうなよっ!

 それに元はと言えば俺たちのせいなんだからな!」

「僕も、そう思うよ。みんなで助け合って、みんなで帰るんだ」

「そうだよ。頑張ろうよみんな!」

「リーダーは白夜で決まりだなっ」

「よろしくなリーダー!」

 色々と、会話に紆余曲折があったものの、一つの目標を作る事ができた。

 そして皆は、ノリノリで黒神を囃立てる。こうでもしないとやっていけないと心の中では思っていたのだろうか。いつもよりも高いテンションで声を張り上げていた。

「あ、ああ。それじゃ、出発!」

 そして黒神は照れくさいのを隠して、態と大声で叫んでいた。

 そして皆は、皆の食糧を探してくる係、「食糧調達係」を決めることにした。

 矢張りこの状況で食糧や水なしではとても生きていけない。そう思ったからに他ならない。

 そしてその食糧調達係は、クラス会議の結果出席番号が奇数の男子が担当することになった。

 会議の数時間後、黒神達食糧調達係は、他の皆に一言言い終えた後、森の奥へと出掛けて行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る