第6話 ドキドキコントローラー
ごみ捨て場でそれを見つけた時、
僕の頭の中で、レベルが上がった時の
ファンファーレが鳴った。
コントローラーでした。
これまでは一つしか持っていなかったので、
対戦ができなかったのです。
これで、いちいちコントローラーを持ってくるよう、
友達に言わなくて済みます。
僕はそれを持ち帰り、
早速使ってみました。
ボタンのゴムが切れている様子もなく、
普通に使えました。
僕は神に感謝しました。
そして、そのコントローラーで、
アクションゲームのネット対戦を
やることにしました。
対戦相手が大型の武器を振ってきたので、
僕は盾でパリィしようとしました。
大型の武器は強力だが、
振りが遅いという欠点があり、
そういうことでこのゲームのバランスが
とられているのです。
しかし、僕のキャラは棒立ち。
焦った僕はコントローラーを押しまくり、
必死に操作しようとしました。
しかし、画面上のキャラは、
ウンともスンともいわず、
相手の攻撃をまともに食らい、
その後も何回も攻撃されて、
為す術もなくやられてしまいました。
対戦相手のばかにしたようなジェスチャーを見て、
僕は顔を真っ赤にして怒りました。
コントローラーを見ると、電源が切れていました。
コードを繋いだ状態で使っていたので、
電池がないということはないと思い、
電源スイッチを押してみました。
すると、電源ランプが点滅して、
二秒位で操作を受け付けるようになりました。
気を取り直して、もう一度やってみることにしました。
今度は僕が優勢で、相手の体力はあとわずか。
案の定相手は逃げ出しました。
十中八九、距離を取って回復するつもりです。
僕はドヤ顔で追いかけようとしました。
その時です。
またコントローラーが利かなくなったのです。
僕は即座に電源ボタンを押しました。
電源ランプが点滅し始めました。
しかし、まだ動きません。
操作を受け付けるようになるまで、
数秒かかるのを思い出しました。
僕が歯がゆい思い出動けるようになるのを待っている間に、
相手はまんまと回復してしまいました。
その後、キャラを操作できるようにはなりましたが、
イライラして心が乱れた僕は、逆転負けしてしまいました。
今回の対戦相手も煽ってきました。
僕は顔を真っ赤にして、
メッセージ画面を開きました。
そして、
「コントローラーが動かなくなったんだよ。
ちゃんと動いてたらオレが勝ってた。
わかったかカス」
とメッセージを打ちこみましたが、
そこで我に返り、送るのをやめ、
メッセージ画面を閉じました。
僕はそのコントローラーを捨てませんでした。
友達と対戦する時、ゲームの持ち主に、
そのコントローラーを使わせるようにしました。
持ち主はゲームに慣れていて有利なので、
コントローラーというハンデをつけるわけです。
使わされた本人は不平を言いますが、
急に操作が利かなくなった時の顔や、
リアクションが十人十色でおもしろいと、
総合的にはなかなか好評です。
誰が付けたか、そのコントローラーは
いつの間にか、
ドキドキコントローラーと呼ばれるようになり、
対戦用として、
今でも現役で活躍しています。
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