第5話 パワーグローブを使いたきゃ修行しろ

ふと、通信販売の広告を見ると、

ファミコンのコントローラー

「パワーグローブ」が、

百円で売っていました。

定価は二万円位の品です。


僕は広告に記載されている番号に電話しました。

値段の付け間違いではありませんでした。

僕はそれを買うと言いました。

全部で千百円くらいかかりました。

千円は送料と代引手数料です。


手袋のように手に装着して、

ファミコンを操作するコントローラーでした。

分厚い説明書が付いていました。


外見はサイボーグみたいで格好良いのですが、

操作性は最悪でした。

足で純正コントローラーを操作した方がまだましです。


説明書を見ると、操作には慣れが必要なようです。


僕は二時間位練習しました。

しかし、いっこうに上達しないどころか、

意図した操作ができたことが、

一度もありませんでした。

さらに、画面に向かって手をかざして

動かさなければならないので、

腕が疲れ、手袋の部分が蒸れてきました。


そのうち、

なんでコントローラーを操作するのに

練習なんかしなければいけないのか?

こんなものが上手くなっても何の徳もない。

自慢にもならない。

上手くなったら逆に恥ずかしい。

これは練習じゃなくて修行だ。


という考えに至り、練習をやめました。


定価二万円のものが、

どうして百円で投げ売りされているのかを、

考えなければいけなかったようです。


また、純正のコントローラーに不満があった訳でもないのに

どうしてこんなものを買ってしまったのか、

自分ながら不思議で仕方がありませんでした。


そして、こんなものを掴まされたことが

友達にバレたらと思うと、

急に恥ずかしくなって、一人赤面し、

パワーグローブを箱にしまい、

押入に隠した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る