第4話 レバーの先の丸いやつ

友達の家がゲームセンターだったので、

僕はたまにそこでゲームをしました。


僕がプレイするのは、

流行ってない格闘ゲームでした。


料金が他のより安くて、

いつも空いているからです。


しかし、その台には欠点があります。

操作レバーの先についている、

プラスチックの丸いやつが、

すぐに外れてしまいます。

波動脚のコマンドを入力すると、

一発で外れます。


そうなると、絶望的に操作しにくくなって、

防戦一方になります。


丸いやつはねじ式になっていて、

回して固定しなければ直りません。

それをやっている間も、

相手はパンチや足蹴りで

攻撃をしかけてきます。


さらに悪いのは、丸いやつが、

床に落ちて転がって行ってしまった時です。


そうなった場合、

もうそのラウンドは

落としたと思わなければいけません。


丸いやつを拾いに行かなければならないからです。


しかし、即座に席を離れると、

こちらのキャラが、ノーガード、

サンドバッグ状態になってしまい、

ボコボコにされ、

五秒位でKOされてしまいます。


だからそのラウンドを丸いやつなしでしのぎ、

次のラウンドが始まるまでの数秒のうちに、

拾って、ねじ込まなければいけません。


転がった丸いやつは大抵他の客が拾ってくれます。


ある時、丸いやつを拾ってくれた不良が、

「そんなゲームやってんのかよ」

と言いました。


僕はハッとしました。


それ以来ゲームセンターに行ってません。

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