第8話 南へ

 その夜……。


「そうか。やはり魔精霊ダイモーンだったか……」


「フィオナ殿、何かの間違いということはござらぬか?」


「残念だけど、その可能性はとても低い。だから二人には力を貸して欲しい」


 納得した表情のヘリオスと、それでも信じたくないデメトリオス。

対照的な二人の前で、フィオナは話を続けていた。


「リアムのことはどれくらいの確信があったの?」


「確信は無かった。だが、予兆はあった」


「予兆。でござるか?」


「知っての通り、俺の故郷コリントスは虹の壁のすぐ北側だ。一年半前、その壁にわずか半日だが裂け目ができた」


「それってとんでもない大事じゃない! 虹の壁に嘆きの門以外の裂け目ができるなんて、確実に数年以内に壁が消えるってことよ!」


 人間族ヘレネス魔人族アトラスの領域を隔てる虹の壁。

嘆きの門と呼ばれる帝国側からの一方通行の裂け目を除き、一部の隙も無く海の果てまで続いている。


 その壁が約500年に一度崩れ去る予兆として、虹の壁に裂け目ができるのだ。


「そうだ。だから俺は誓約の勇者を継承し、メディアを紋章官に迎えた」


「ヘリオス様、そういうことだったんですね」


 まだ若いコリントス候がヘリオスに勇者の地位を譲ったのは、自分は大戦に備えて軍事に専念し、魔精霊ダイモーン討伐は自由に動ける息子に任せるということだ。


 いざとなればその先。

 ヘリオスのデルフォイ王への即位も考えているかも知れない。

そのためにコリントス候とは別の紋章官が必要になったのだ。


「その後はメディアの知っての通りだ。一年間、魔精霊ダイモーンに関する情報を集め、そして騎士認証前に失踪した男の存在を知った」


「雪割り谷に来た理由はわかったわ。最初にそのことを話さなかったは、真実を知れば私が協力しないと思ったから?」


 フィオナからすれば当然の疑問。


「そうではない。リアムを助けるためにはどうしても君の協力が必要だ」


「だがヘリオス殿。魔精霊になった人間は元には戻れぬのではござらぬか?」


「デメトリオスさん。それは……試してみなければわかりません。そういうことよね?」


「だからフィオナには自分でその事実を受け入れて欲しかった。まだ完全に魔精霊化していないことは明らかだ。なんとか助けたい」


 フィオナは考える。今まで考えられていたのとは違い魔精霊と人間の意識が別々にあるのだとすれば、魔精霊だけを討伐する手段があるかも知れない。


「先生、あのリックとか言うアトラスは妨害に来るんでしょうか?」


「そこも話しておかなければならないわね。ヘリオス、リアムの山小屋にいたリック・ヴィオラという商人だけど、間違いなくアトラスよ。そして翼人殺しの犯人でもあるわ」


「えっ!? そうなんですか?」


「彼は鷲獅子は斬り殺されたっていっていた。私はあの傷を魔法だと思った。メディアは違和感があるっていってたわよね?」


「そうです。そうです。魔法ならもっと収束した感じになるか完全に斬れるはずです。特に翼人ニケーの魔法なら間違いなく切断できます」


 メディアが鷲獅子の死体を見て感じた違和感。それをあの商人は斬られたと躊躇いも無く答えた。あんな芸当は人間族には普通は不可能だ。


「だがフィオナ。翼人はどうやって殺した?」


「待ち伏せしていたところに鷲獅子をけしかけられたのよ。突然の鷲獅子の襲来を彼は地面に降りてやり過ごそうとした。うっかり縄張りに迷い込んだと感じたのね」


 魔獣とはいえ鷲獅子も既に自然の一部になって久しい。

年若い翼人は、繁殖期の鷲獅子を刺激しないよう、歩いてその場を立ち去ろうとした。


「そこを不意打ちで殺したのか?」


「そうなるわね」


「待たれよフィオナ殿。そのような真似は拙者でもかなり難しいと思われる」


 それが簡単な行為でないと、デメトリオスは疑問を口にする。

問題はそこだ。模擬戦でもわかったがデメトリオスは強力な騎士だ。

その彼が難しいという真似をあの男はやってのけた。

 

 フィオナの推測が当たっていたとしても、そんなことが可能な種族が果たして存在するのか?


「メディ、傀儡族ピグマリオンの魔法道具なら可能か?」


「そうですね。あの軽装なら華学術くらいしか使えないでしょう。でもどういう仕組みなんだろう」


「商人としてこの町に潜伏してたということはミダスさんに聞いてみた方が良さそうね」


疑問は尽きないが、今は出発の準備が先だ。

ミダスへ世話になった礼も述べなければならない。


「そういうわけでリック・ヴィオラという商人にお心当たりはありませんか?」

 

「確かにその男なら知っている。だが、人間族の老人だったはず。そうだな?」


「ここ半年は見ませんね。ミダスのいう通り我々の知るリック・ヴィオラは60もとうに超えた老人だ」


「それでは彼の名前を騙っているということですか?」


「そうなりますが……ですが、そうなると一つ問題がありますね」


「ギルド証は本人以外が触れると色が変わる。正式に譲り受けたか我々の知らない不正を使ったか」


帝国内で商売を行う者は身分保障のための護符を身につけている。

それは魔法で処理されていて、持ち主以外が持てば赤く変色する。

もしも彼が商人としてデルフォイの門を通ったなら普通は正体が露見するだろう。


「名前を騙っているだけなら問題はないが、商人として活動していたのなら話は別だ。テオドリック、明日までに調べられるか?」


「承知しました。しかし皆様が明日出立となるとゾエお嬢様が悲しまれますな」


「それは私から伝えておく。フィオナ殿もまた娘の勉強を見てやって欲しい」


「それはもちろんです。帰ってきたらみんなで雪割り谷に来てください」


 その言葉に岩のような肌を紅潮させミダスは何度もうなずく。

外見こそ恐ろしいが、彼自身は善良な人間だ。


 これを機会にもういちどライアン家、ひいては雪割り谷との商売が再開できるのなら、それが良い。


 その日の午後、日輪宮からミダス商会にとんでもない物が運び込まれた。

商会の高い壁の向こうには一目それを見ようと黒山の人だかりができている。


「急ぎの旅だっていうのはわかるけど、ちょっとこれはやり過ぎなんじゃない?」


「いや、これ以上に速い手段はない。当然の決断でござる」


 腕組みして目の前の物体を見つめているデメトリオス。


「これの許可を帝都に取るのに手間取ったが、何とか間に合ったな」


「それにしても皇帝戦車とか、ちょっと極端すぎるわ。さすがに私でも気が引けるわよ!」


 皇帝戦車、皇帝とそれに準じる者だけが利用することを許される専用馬車。

屈強な騎士で有るケンタウロスが牽く帝国の権威の象徴。


 それは小型の箱形馬車で、黒光りする壁面に装飾品のごとく投げ槍が並べられており、本来御者台が有る場所には騎兵槍が装着されている。


 骨組みや内装には豊富に銀が使われていて、天井には聖印が刻まれている。

つまりは、聖職者さえいれば短時間なら祈念によって籠城することも可能ということだ。


 元々は皇帝が戦場で指揮を執る際に戦車として用いられたことに由来するが、今ではもっぱらパレードなどに用いられることが多い。


 ミダス商会にヘリオスが滞在している噂は市民の間でも広まりつつあり、それだけにお祭り好きのデルフォイ市民が押しかけてきたのだ。

 

 本物の皇帝戦車は二人のケンタウロスが牽くが、これはそれよりも小さい。

しかし誇り高きケンタウロスに馬車を牽かせることは一般人には禁忌感が強いのも事実。


「気になされるな。弟子を助けるのに四の五もござらん」


「フィオナ。デメトリオスはテッサリアの騎士だ。そう遠くない将来これを牽くことになるだろう」


「あああ、やっぱりそうなんですね!」


 さっきまでフィオナの隣で石のように固まっていたメディアが声を上げる。

彼女はヘリオスと皇帝戦車に乗る意味について必要以上に考え込んでしまい思考停止したのだ。


 普通は皇帝とその家族しか乗ることを許されないのだから当然の結果である……。


「そうでござる。我がテッサリアのディアネイラ侯女殿下は、そのうち皇后となられるであろうお方。そのために拙者も武者修行をしておったのでござる」


「ディアネイラ侯女、というか今は執政官か。は皇帝陛下の右腕だったわね。メディアは彼女を知ってるの?」


「知ってるも何も魔法学院時代の同室の先輩です。先輩の推挙がなければわたしがヘリオス様にお仕えするなんて。とてもできませんでした」


 人の縁とは本当にわからない。つい一月前まで他人だったはずなのに、こうして思わぬところで繋がっていたのだ。


「ヘリオス、この前の召喚状を貸してもらえる?」


「それは構わないがどうする気だ?」


「こうするのよ」


 目の前に拡げられた召喚状、デメトリオスの名前の下に一人分の余白を空けて、フィオナは自分の名前を書き込む。


「フィオナ・グレン、騎士としてヘリオス・ジェイソン侯子殿下の召還に応じるわ。何ができるわけでもないけどね」


「そうか……」


 召還状に書かれた名と空白の意味を悟り、ヘリオスは短く応える。彼やデメトリオスの意思にフィオナも懸命に応えようとしている。誓約の勇者としてその空白にリアム・ライアンの名を刻まねばならぬと、強く誓うのだった。


 翌朝、ミダスの館での最後の朝食。


「こうしてフィオナさんの手料理が食べられるのも最後なのか。残念だ」


「お義父様、これが今生の別れというわけでもありませんし、次はリアム様も一緒においでいただければよいのですわ」


 これまでの逗留費用はミダスが負担してくれていたのだが、ゾエに勉強を教えるだけでは忍びないと考えたフィオナは厨房で料理を作るのを手伝っていた。

 この屋敷には専属の調理人もいるのだが、快く手伝うことを了承してくれたので、お互いにレシピを交換などして大いに親交を深めていた。

 

 今日は新鮮な卵が手に入ったので、大きな包み焼きにした。

 トロトロの中身には挽肉と玉葱を詰め込み、南の方で栽培される香辛料をブレンドして味付けにしている。

 元々は温暖な気候のラコニア地方からコリントスの煮込み料理で、スパルタでは刺すような辛さのものが好まれている。

 特に日の子草(唐辛子)や蔓山椒(胡椒に相当)は内陸では育たず、ギルドに所属する隊商や各地の薬売りから購入しなければならない。


他には大麦のパンや腸詰めなどが並んでいる。


 デルフォイは豊富な水を確保できるため農業が盛んであり、酪農や放牧が中心のマケドニアとの貿易で食肉を輸入している。食卓一つにも地域性が出る。


「本当にミダスさんにはお世話になりました。ありがとうございます」


「気にする必要はありません。我々も貴方がたを利用させてもらっているのだ」

 

「それはお互い様だ。今後とも利用させていただくぞ」


「かしこまりました。そのためには殿下にもフィオナさんにも無事に帰ってきてもらわなければなりません。ご武運をお祈りいたします」


「そうですわお義父様。忘れないようにこれをお渡ししておかないと!」


「これは私たち親子が出せる精一杯の気持ちです。どうか受け取ってください」


 ゾエが取り出したのは小さな小瓶。その中には赤い液体が入っていた。


「まさかそれって!」


「わたしの血です。彩眼族イーリスの血なら、リアム様のお身体も良くなるかもしれませんわ」


 ゾエの左手の小指に巻かれた包帯。

彼女なりに真剣に考えた結果であれば、その好意は受け取っておくべきだ。


「ありがとうゾエ。必ずリアムは連れて帰るわ」


「もちろんですわ。その時はわたしもフィオナ先生って呼ばせてもらいます」


「うわぁ、そうなるとゾエさんは妹弟子ですね!」


「承知いたしました。魔法も学びたいと以前から思っておりましたの。これからはメディア先輩ですね」


「先輩……なんて良い響きだろう」


 魔精霊ダイモーンを討伐するという恐るべき難行。

 普通なら絶望するしかない状況だが、屋敷の人間はあえて普段通りに振る舞ってくれている。

 

 いつもと変わらない二人のやりとりを見ていると少し気分が落ち着いてきた。

やらなければいけないことはわかっていても、それを納得できるかは別の問題だ。


「それじゃあ、私はテオドリックさんと話があるから先にいくわね」


 フィオナは手早く食事を済ませると、リックに関する情報ともう一つ大切なことを聞くために、テオドリックの部屋へ向かった。


 食事と情報交換を終えて、いよいよ出発の時間。


 黒光りする皇帝戦車の前には、新調した薄金鎧ラメラーアーマーを装備したデメトリオス。儀礼用の盾には剣を掲げるケンタウロスが描かれたテッサリアの紋章。馬車の後方にはこの馬車が訓練用であることを示す黄色い旗と、流れる翡翠河と小鳥を用いたデルフォイの紋章が掲げられていた。


「ごめんなさい。遅くなってしまったわ」


「いやいや、そんなことは気にするでない。いよいよ出発でござる。ミダス殿に挨拶は済まされたか?」


「うん。デメトリオスさんにもよろしくだそうよ」


「急ぎとはいえ、デメトリオス殿も無理はしないようにな」


「大丈夫、ここからなら二十日で到着して見せましょう」


「多めに見積もって一月にしておきましょう。人間族の足なら旅慣れていても五十日はかかるわ。それに、何があるかわからないのだしね」


 そう、あのリック・ヴィオラが何の意味も無くダフネ大森林を指定するとも思えない。


おそらくそこに帝国内に入り込んだアトラス達の拠点があるのだ。


 間違いなく罠だろうが、リアムの性格であれば少しでも情報を得ようとそこに向かうだろう。


それに人の侵入を拒む大森林であれば、万が一魔精霊化が進行しても最低限の被害で済む。


「それでは出発しよう。ゆくぞ!」


 窓辺から見送るミダスやゾエに一礼し、馬車に乗り込む。

ミダスが用意した花火が打ち上がると、堀の反対側の日輪宮から角笛の音が響く。


 沿道を市民達が見守る中、馬車はあっというまにイアソン記念門を通り抜け、街道に飛び出していく。


 遠く小さくなっていくデルフォイの街を眺めながら、フィオナは婚約者の無事を祈らずにはいられないのだった。


 馬車は進む。

 帝国の誇る街道は1500年もの時間をかけて整備された道で、テーベの首都テバイから五王国全てに張り巡らされている大動脈だ。


 道の両脇には街路樹が植えられ、正法教会の巡察士が定期的に警邏を行う。


 有角族タイタン達の住むエトナや翼人ニケーの住むイリオスも、その辺縁部までは街道が続いていて、帝国の一大事となればすぐにでも駆けつけられるようになっている。


 街道沿いには50スタディオンごとに【祈念石】の石柱が立てられていて、そこには旅人が休養する場所が設けられている。


 祈念石の立てられた場所は精霊力が安定し人の住みやすい環境になるため、街道の続く場所までが帝国領。その先が辺境ということになる。


 側道の整備も進み100年前には雪割り谷まで街道が開通したほどだ。


 もっとも街道の維持と整備はその地域の領主の義務でもあるため、常に最良の状態にあるとも言いがたいのも事実ではあるが……。


「ふぅ。少し急ぎすぎたかもしれぬな」


 あれから一週間、いくら途中の関所でも止められないとはいえ、通常であれば15日かかる道を7日で駆け抜けたのだ。

 都市部を抜けるとき以外は軽装に着替えているとはいえ、このペースは人馬族ケンタウロスにとっても飛ばしすぎだ。


 今日の目的地まではまだ時間があるので、祈念石の下の休憩所に飛び込んだ。


 人馬形態になったケンタウロスは体温が上昇するため、頭上で水桶をひっくり返したデメトリオスからは、霧のようにシュワシュワと湯気が立ち上っている。


「十分に早いです。テーベ領を抜けたら数日休養をとりましょう」


「フィオナ殿、拙者には一つ気になることが有るのでござる」


「気になること?」


「あれから拙者も考えておったが、鷲獅子も翼人も一撃で屠れる種族には、一つだけ心当たりがある」


 その件についてもフィオナは考えていた。デメトリオスがこうも急ぐのは魔精霊ダイモーンと同じく最悪の事態を想定しているに他ならない。


「ありえないと思いたいわ。奴らは壁のこちら側には絶対にいないはずだもの」


「それはそうでござるが、人馬族ケンタウロスより早く動ける種族など一つしかござらぬ」


「つまり人狼族リュカオンということか」


「まさか……そんな。嘘ですよね、先生」


 人狼リュカオン吸血鬼バシレウスと並び最強と目される魔人族アトラスであり、全ての獣人族の祖だ。


 魔法を使うことこそできないが、その身全てが破壊の塊ともいえる存在で、魔法を弾き返す体と首を刎ねられなければ即座に傷を回復させる驚異的な生命力を持っている。


 そして全ての魔人族の王としてアトラスの王国の深奥、つまり大陸の最南端である旧王都アルカディアに君臨しているはずである。


「そのまさかかもしれないということよ」


「でもそういえば、森でわたしのことに気がついていたんですよね。魔法も使わずに」


「うん。それと私もひとつ気になったのは、ギルド証の護符の効果を受けなかったことよ。テオドリックさんがいうには、リックが持っていたのは確かにマケドニア~テーベ間のギルド証だったそうよ」


「つまり魔法は効果を発揮しなかったんですね」


「そういうことになるわね」


 フィオナもメディアも、それが深刻な事態を意味することを悟り眉間にしわを寄せて呟いていた。


「メディ、それはそんなに大事おおごとなのか?」


「そうです。ヘリオス様の鎧も、そこにあるデメトリオス様の槍もそうですが、一度魔法が込められた品は壊れない限りは魔法の効果は消えないんです」


 この旅ためにデメトリオスが急ぎで故郷テッサリアから取り寄せたのは魔法の槍。その効果は土の魔法の増幅。弾き上げた石や土を足場に空中を自在に駆けることができる。翼人族が風を操り、有角族が炎を操るように人馬族は土を操る。もっとも人間族との混血が進んだ彼らは、主に槍術の強化にその力を使う。


人狼リュカオンなら持つだけで護符の魔力を無効化することも可能だけど、それでも信じられないわね」


「念には念をということでござる。まあ例え人狼であろうと拙者とヘリオス殿で何とかするでござるよ」


「俺もやりすぎかとは思ったが、これを用意しておいてよかったな。いざというときはフィオナは皇帝戦車の中に籠城してくれればいい」


 やっぱりやり過ぎ感はあったのかと、疑っていたヘリオスの常識力を少しだけ見直し、思いを巡らせる。


 ハッキリ言って歩くだけで大地が裂け腕を振るうと旋風が起こると伝えられる人狼リュカオン相手ではフィオナは足手まといにしかならない。多少障壁は他人より強いとはいえ、相手は神話に語られるような怪物だ。触れられただけで物言わぬ肉の塊にされてしまうだろう。


 ヘリオスの言葉にはゆっくりとうなずくしかなかった。


「わかったわ。それでも何もできないのは勘にさわるわ。時間はあるのだし少しでも対策は立てておく」


 まだ道のりは半ばほど、今は最悪の予想が外れてくれることを祈るしかない。

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