第3話

 狭いが綺麗に掃除がいき届いている部屋に、様々な音が響き渡る。

 カチャカチャ、もぐもぐ、ガツガツ、ぱくぱく、ズズーッ……。

 音を立てているのは、先ほど村の入り口で倒れていた二人の少年だ。今は、少女に与えられた食事を、必死の形相で掻き込んでいる。

「あーっ! 兄ちゃん、それ僕の大根だよっ!」

「大根一切れくらいでグダグダ言うな! 大きくなれねぇぞ……って! それ、俺のキノコじゃねぇか! 食うな!」

「兄ちゃんこそ、キノコ一切れくらいでグダグダ言ってると大きくなれないよ!」

「んだとっ!?」

 二人は飯粒をまき散らしながら叫び、皿の上で箸の攻防を繰り広げている。その様子に苦笑しながら、少女が口を挟んだ。

「まぁまぁ。まだたくさんあるから、ケンカしないで。……おかわり、いる?」

 問うた瞬間、二人の少年はピッタリ同時に「おかわりっ!」と叫びながら椀を少女の眼前に差し出した。その勢いに半ば気圧され、半ば呆れつつ少女は椀を受け取り、飯を山と盛ってやる。

「……随分、お腹が空いてたみたいね。そんなになってまで、一体どこに行くつもりだったの?」

 少女の何の気なしの問いに、不意に少年達の動きが止まった。その様に戸惑い、少女は二人の顔を不安げに覗き込む。

「え? ……あの、私、何か気に障る事でも……?」

 その声にハッとした小さい方の少年が、慌ててブンブンと両手と首を振る。「ううん!」という声が、妙に明るい。少女が訝しげに首を傾げていると、少年は「それよりもさ、お姉ちゃん!」と言った。まるで、何かを誤魔化すような雰囲気だ。

「? 何?」

 詮索しても仕方の無い事だと気持ちを切り替え少女が問うと、少年は申し訳なさそうに苦笑しながら、視線を大きい方の少年へとやった。釣られて少女も見てみれば、そこには顔を土気色にして卓に突っ伏している少年の姿が見える。

「……お茶か何かくれないかな? 兄ちゃんがさ……食べるの慌て過ぎて、喉につまらせちゃったみたいだから……」

「え!? ちょ……ちょっとーっ!?」

 卓に突っ伏しながら、少年は何とか胸を叩いていた。時折「んがっ……ぐっ……」という苦しげな声まで聞こえてくる。本気でまずそうな状況だ。

 少女は慌てて茶を取りに走る。そしていつの間にか、先ほどの妙な間の事は頭から消え去っていた。

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